「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
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メコン・ウォッチ

タイで計画されているヒンコンガス火力発電事業への融資契約が3月31日に締結されたと報道され(※1)、融資団には邦銀4行(みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行(※2)、三井住友信託銀行)が参画しています。私たち環境NGOは、かねてよりこの事業の問題を訴え(※3)、4行に対し同事業への融資契約を行なわないよう要請してきました(※4)。このたび邦銀4行が融資契約を結んだことに強く抗議し、契約の撤回を求めます。

融資枠は約7億7000万米ドルの23年間で、ドル建てが Bank of China、ICBC、みずほ銀行、 三井住友信託銀行(シンガポール)、Natixis、Societe Generale、Standard Chartered、OCBC。バーツ建てが Bank of Ayudhya、Bangkok Bank、Government Savings Bank、Siam Commercial Bank、三井住友銀行、三井住友信託銀行 (タイ)、と報じられています。

ヒンコンガス火力発電事業は、ラチャブリ県ムアン郡ヒンコンに、1,400MW(700MWx2基)の天然ガス焚きガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電設備および33㎞のガスパイプラインを建設するものです。LNG(液化天然ガス)を燃料として用います。事業会社はヒンコン・パワー社(Hin Kong Power Company Limited)で、タイの電力事業者であるラチャブリ・グループ社(RATCH Group PCL)(51%)とガルフ・エナジー・デベロップメント社(Gulf Energy Development PCL)(49%)が共同出資する特別目的会社です。

気候変動を悪化させないためには、石炭火力のみならず、ガス火力発電も減らしていく必要があります。 国際エネルギー機関(IEA)は、2050年までに温室効果ガス排出のネットゼロを達成するには、2040年には全世界の電力セクターからの排出をネットゼロにしなければならないと示しました(※5)。昨年11月の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、エネルギーセクターにおける化石燃料利用について、削減を加速化する必要性が認識されています(※6)。ヒンコンガス火力発電事業に融資することは、こうした国際的に必要であるとされている取り組みに矛盾します。

タイではすでに発電設備に余剰の状況が見られ、高い供給予備率の問題があります。IEAは2020年12月に、タイは近年の需要の伸びが予想を下回る中(年率3%以下)、電力セクターは発電能力の過剰と40%台という高い予備率の問題に直面し、この状況はCovid-19の影響により今後さらに顕著になると予想される、と概説しています(※7)。

事業の透明性にも疑問があります。ガルフ・エナジー・デベロップメント社か?同事業の普通株式49%をラチャブリ・グループ社から購入した際、2020年1月3日に2百万バーツ(約700万円)ほと?しか支払っておらす?(※8)、ラチャブリ・グループ社か?なせ?このような低価格で譲渡に合意したのかが不明です。

ラチャブリ・グループ社は、2018年7月の補助ダム決壊事故で多数の死者や行方不明者を出したラオスのセピヤン・セナムノイ水力発電ダム事業において、建設アドバイザー及び投資企業として関与していますが、事故から3年以上が経過しても、被害を受けた住民への補償は完了していません。この事故では、下流カンボジアの住民を含む8千名も被害を受けていますが、関連企業はその責任をとっていません(※9)。先月には別に設けた補助ダムから緊急放水を行い、住民が一時避難を強いられるなど問題が続いています(※10)。

社会、環境、人権に関する実績が乏しいことから、ラチャブリ・グループ社は、ロベコ(※11)(2021年12月)、ストアブランド(※12)など責任あるグローバル資産運用会社の投資対象から除外されています。また、ガルフ・エナジー・デベロップメント社株も石炭火力発電への関与が理由で、ストアブランドや他の国際的な投資家の除外リストに載っています。私たちは、このような対外的評価についても邦銀4行に懸念を伝えていました。

邦銀4行はヒンコンガス火力発電事業への融資契約を撤回すべきです。

脚注※
  1. Project Finance International、2022年3月31日、「Thailand ? Hin Kong IPP PF signed」
  2. 三菱UFJ銀行はBank of Ayudhya(現地呼称Krungsriクルンシィ)の76.88%を保有。
  3. 2021年4月27日【共同声明】国際協力機構(JICA)及びアジア開発銀行(ADB)の融資検討案件 タイ国ムアンラチャブリ(ヒンコン)ガス火力発電事業に反対します
    https://sekitan.jp/jbic/wp-content/uploads/2021/04/20210427_Hin-Kong-Statement_-JPN.pdf
    2022年1月24日 AIIB総裁および取締役会宛要請書(和訳)
    「AIIBはタイの1.4GWガス発電およびパイプラインへの融資計画から撤退してください」
    https://sekitan.jp/jbic/wp-content/uploads/2022/01/1.4GW-gas-pipeline-in-Thailand_20220128.pdf
  4. 2022年1月28日【共同声明】 タイ国ヒンコンガス火力発電事業に融資しないよう邦銀4行に要請 https://sekitan.jp/jbic/2022/01/28/5420
  5. 国際エネルギー機関(IEA)、2021年5月、「Net Zero by 2050 A Roadmap for the Global Energy Sector」
    https://iea.blob.core.windows.net/assets/deebef5d-0c34-4539-9d0c-10b13d840027/NetZeroby2050-ARoadmapfortheGlobalEnergySector_CORR.pdf
  6. COP26 THE GLASGOW CLIMATE PACT
    https://ukcop26.org/wp-content/uploads/2021/11/COP26-Presidency-Outcomes-The-Climate-Pact.pdf
  7. https://www.iea.org/reports/electricity-market-report-december-2020/2020-regional-focus-southeast-asia
  8. http://gulf.listedcompany.com/newsroom/030120201230190657E.pdf
  9. "Factsheet: The Xe Pian-Xe Namnoy Dam Disaster: Situation Update Two Years On" http://www.mekongwatch.org/PDF/FS-XPXNN_2year_small.pdf
  10. https://www.rfa.org/english/news/laos/dam-03282022175556.html
  11. https://www.robeco.com/docm/docu-exclusion-list.pdf
  12. https://www.storebrand.no/asset-management/barekraftige-investeringer/dokumentbibliotek-rapporter/_/attachment/inline/57ac3972-d9dd-49e2-aa54-6ad61b88bade:f7a976c7d6c679a292a7005f14f1832dd72678a4/Storebrand_Extended_Excluded_companies_Q3_2021.pdf

本件に関する問い合わせ先

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝 tanabe@jacses.org