2002年2月15日

米国の排出増加案、温暖化対策にあらず
~アメリカのブッシュ大統領の独自案へのコメント~

 

気候ネットワーク 代表 浅岡 美恵

14日(日本時間15日午前4時頃)、ブッシュ大統領は、アメリカの地球温暖化対策の国内計画を発表した。昨年3月に、京都議定書から事実上の離脱を表明して以降、遅れ馳せながら発表された独自案は、削減どころか、現在と同様のハイペースで排出を増加させることを許容する案であり、温暖化対策とは到底呼べない。これでは、京都議定書を支持するいかなる国・市民にとっても受け入れることができないことは明白である。

1.これは京都議定書の代替案ではない

京都議定書は、法的拘束力のある義務として、アメリカは90年比で7%削減することとなっている。一方今回の提案は、努力目標でGDP当たりの温室効果ガスの排出量を今後10年間で減らすというもので、一見削減を試みているように見えるかもしれないが、実際は、GDPが1990~2000年と同じだけ成長すれば、過去10年で10%以上の排出増をしている米国が、今後10年でさらに10%以上排出増加が出来、これまでのトレンドをただ延長することができるというような提案である。世界最大の排出国であるアメリカが、ヨハネスブルグ・サミットに向けて京都議定書を発効させようという世界の流れの中で、気候変動枠組条約にも京都議定書にも反する内容を示して再び背を向けることは、断じて許せない。
 ブッシュ大統領は、地球温暖化防止を求める世界の大多数の市民が強い失望と怒りの声をあげていることに耳を傾け、すぐに提案を取り下げ、京都議定書に参加すべきである。

2.小泉首相は日本の京都議定書批准を改めて確認し、米国の参加説得を

小泉首相は、国会施政方針演説において京都議定書の批准方針を示したところである。17日の日米首脳会談においては、ブッシュ大統領に対して、日本の議定書批准の意思を明確に伝え、アメリカの独自案は京都議定書の代替としては受け入れられないことを毅然と告げ、世界唯一の温暖化防止の枠組みである京都議定書への参加を強く促すべきである。また、仮にブッシュ大統領の提案を好意的に受け止めるようなことをすれば、日本もアメリカ同様の大きな批判を浴びることになることを知るべきである。

 

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