2007年07月20日
「京都議定書目標達成計画」の評価、見直しに関連しまして、このたび、わたし たち気候変動NGOは、合同で、添付の要請文を、中央環境審議会地球環境部会、および産業構造審議会環境部会地球環境小委員会の委員の方々に送付させていただきました。
以下に要請文の本文を掲載します。
中央環境審議会地球環境部会・産業構造審議会環境部会地球環境小委員会
合同会合委員 各位
6%削減を担保する京都議定書目標達成計画の見直しを!
2007年07月20日
環境エネルギー政策研究所(ISEP)
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
グリーンピース・ジャパン
地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
CAN JAPAN
FoE Japan
WWFジャパン
私たちは、気候変動問題に取り組んでいる環境NGOです。委員各位の環境問題へのご努力とご苦労、また、京都議定書目標達成計画の見直し作業への精力的な取り組みに対し心から敬意を表します。
私たちは、ドイツのハイリゲンダムG8サミットの「排出削減の地球規模の目標を定めるにあたり、2050年までに地球規模での排出を少なくとも半減させることを含む、EU、カナダ、及び日本による決定を真剣に検討する」との合意を評価していますが、「共通だが差違ある責任」の原則からすれば、日本などの先進工業国は、これをはるかに上回る削減が必要だと考えています。また、そのためには、将来的に大幅な削減に向かう社会経済システムをいまから構築することが必要であり、もとより、京都議定書の第1約束期間の目標を確実に達成していかなければなりません。
しかしながら、私たちは、これまでの合同会合での議論を傍聴し、公表されている「排出量及び取組の状況等に関する論点整理」などを拝見する限りでは、このままでは国内の対策を中心に日本の6%削減を達成することは極めて困難で、膨大なクレジットを税金で購入することにより数字合わせしなくてはならないと考えています。
日本のCO2排出量は、エネルギー転換、産業、工業プロセス部門と運輸部門のトラックや商用自家用車、民生業務部門などの産業関連部門が約8割を占めています。欧米に比して、産業関連部門の排出量の割合が大きく、このことは産業関連部門における削減が決定的に重要であることを示しています。
日本のエネルギー効率は世界のトップレベルで、日本の産業部門は「乾いた雑巾」で削減の余地は少なく、削減にはコストがかかるとの主張もありますが、エネルギー効率は日本の高い物価を補正した購買力平価ではすでにEUなどと同一水準です。また、見かけ上の日本のエネルギー効率の良さには、家庭と運輸の良さが寄与しています。90年以降の産業部門のエネルギー効率は停滞ないしむしろ悪化傾向です。
さらに、事業所別に見れば、同業種内でもエネルギー効率の分布に大きなバラツキがあり、効率改善の余地が充分ある事業所も多く存在しています。
また、産業部門における石炭利用の割合が先進国の中でも突出して多く、発電部門では90年から石炭を使用した発電量が約3.4倍にも増加しています。
日本の最大排出部門であるエネルギー転換・産業部門や大口業務事業所は、その対策が日本経団連の環境自主行動計画に全面的にゆだねられていますが、自主行動計画のフォローアップでも電力や鉄鋼などの大量排出源で、自主目標を達成できていないことが明らかになっています。
しかし、上述の状況を踏まえ、事業所(工場)のエネルギー効率をトップランナー化することや石炭からの燃料転換をより積極的に取り入れることによって、日本の産業関連部門でのCO2を大きく削減していくことができると考えます。そこで、少なくとも、自主行動計画を以下のように抜本的に改革・強化することが必要と考えます。
- (1)自主行動計画を政府との協定とし、不達成の場合は直接規制の受け入れなどのペナルティを課すこと。
- (2)全ての業界に対して、エネルギー消費量とCO2排出総量についての総量削減の数値目標を義務づけ、少なくともそれらの目標に目標達成計画の産業部門の目標(目安)である8.6%と整合性を持たせること。原単位目標などは補完的な目標として位置づけること。
- (3)(業種全体だけでなく)個別事業所ごとの削減目標と削減対策、その実施状況についての情報公開をすること。
- (4)公正・中立な第三者機関によるモニタリングと結果の公表すること。
そのうえで、私たちは、「論点整理」で「検討事項」とされている国内排出量取引や環境税(炭素税)などについては、直ちに導入を決定し、早急に制度設計にとりかかるべきだと考えます。キャップ&トレード型の国内排出量取引は、EU域内で2005年から試行的に実施されており、2008年1月から本格実施されることになっています。また、アメリカの東部・西部諸州や連邦レベルでの10本におよぶ法案の提出や、オーストラリアでも一部州での実施や連邦レベルでも議論が始まっていることなど、世界的に見てもすでに検討課題などではなく実践の段階に入っています。環境税(炭素税)についても、欧州諸国では1990年頃から実施されており、これも検討課題ではなく実践の段階です。
キャップ&トレード型の国内排出量取引制度や環境税(炭素税)などの経済的手法は、短期的には京都議定書の目標達成、長期的には日本を低炭素社会へと構造変革を促す制度として、直ちに導入を決定し、制度設計にとりかかるべきであると考えます。また、電源特別会計や道路特定財源の廃止を含めたエネルギー税制全体のグリーン化も直ちに実施すべきです。
自然エネルギーについても、現在のRPS法が、日本における自然エネルギー普及の障害となっていることは明らかです。私たちは、自然エネルギーの普及のためには、ドイツ型固定価格買取制度を導入すべきだと考えます。ドイツやスペインなどの国々は、この制度の導入により、風力・太陽光発電などの自然エネルギーの普及が急速に進んでおり、制度次第で自然エネルギーの需給が大きく拡大する、ということを証明しています。ドイツでは、すでに自然エネルギー産業の雇用が225,000人に育っています。日本でも、北海道電力や九州電力管内で風力発電の応募を募ると、応募枠の数十倍の応募がありました。国内における自然エネルギー普及ポテンシャルが、現在は制度の不備により抑制されている状況です。また、民生・運輸の対策としては、建築物の省エネ性能基準の義務化、高効率機器や小型機器の普及のための経済的措置が必要です。
今年8月上旬には、「中間報告」が出されるとお聞きしています。私たちは、「中間報告」で、こうした制度の導入や改革・強化が記載されることを強く要請します。
以上
問合せ
環境エネルギー政策研究所(ISEP):大林ミカ TEL: 03-5318-3331 FAX:03- 3319-0330
「環境・持続社会」研究センター(JACSES):足立治郎 TEL:03-3556-7323 FAX:03-3556-7328
気候ネットワーク:浅岡美恵 TEL: 075-254-1011 FAX: 075-254-1012
グリーンピース・ジャパン:鈴木真奈美 TEL: 03-5338-9800 FAX.03-5338-9817
地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA):早川光俊 TEL:06-6910- 6301 FAX:06-6910-6302
FoE Japan /CAN JAPAN:小野寺ゆうり 携帯: 090-6504-9494 FAX 03-3263-9463 (c/o 気候ネットワーク)
WWFジャパン:山岸尚之 TEL: 03-3769-3509 FAX:03-3769-1717
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