常陸那珂共同火力発電所1号機の営業運転開始に対する抗議声明
NPO法人気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵
1月8日、株式会社JERAの子会社である株式会社常陸那珂ジェネレーションが常陸那珂共同火力発電所1号機(以下、「常陸那珂共同1」)の営業運転を開始したと発表1しました。この新規運転開始に対し、気候ネットワークは以下の点から厳重に抗議します。
1)2050年温室効果ガス排出実質ゼロ宣言に逆行
常陸那珂共同1は、設備容量が65万kWの超々臨界圧発電方式(USC)を採用した石炭火力発電所で、環境影響評価準備書に係る審査書2の記載によれば、年間約368万トンのCO2を排出します。昨年10月、菅首相は2050年温室効果ガス排出実質ゼロ宣言を行い、石炭政策を抜本的に転換するとしましたが、新たな石炭火力の運転開始は、こうした国の方針に逆行するだけでなく、国際社会において日本の政策の本気度を問われかねません。パリ協定の1.5℃目標達成には、2020年以降いかなる石炭火力発電所の新規稼働も認められず、日本での新規石炭火力が稼働を開始する事態は到底看過できません。
2)「JERAゼロエミッション2050」への疑問
親会社JERAも昨年10月に2050年時点で国内外の同社事業から排出されるCO2を実質ゼロとすることを目指す「JERAゼロエミッション2050」を表明しています。しかし、同社の常陸那珂共同1の営業運転開始のプレスリリースには、「JERAゼロエミッション2050」への言及もなく、“高効率”を謳っており、ゼロエミッションをどう実現させるのか疑問です。同社は、数十年にわたり排出を固定化させる新規の発電所は一基たりとも稼働すべきではありません。排出量の具体的な削減計画がないロードマップを掲げた「JERAゼロエミッション2050」の説得力は低いと言わざるを得ません。
3)地元・東海村のゼロカーボンシティ表明とも不整合
発電所のある茨城県那珂郡東海村は、関東甲地域団体(市町村)と民間事業者で構成される「廃棄物と環境を考える協議会」に加盟しており、2050年二酸化炭素排出実質ゼロ(ゼロカーボンシティ宣言)を共同で表明しています(2020年7月3)。東海村には既にJERAが運営する大規模火力発電所4(常陸那珂1号機と同2号機、各100万kW)があり、常陸那珂共同1の追加は、地域のゼロカーボン目標への達成を確実に困難なものにします。
脚注
- 常陸那珂ジェネレーションプレスリリース http://hitagene.co.jp/unkai.html
- 株式会社常陸那珂ジェネレーション 常陸那珂共同火力発電所1号機建設計画環境影響評価準備書に係る審査書
- 東海村 2050年二酸化炭素排出実質ゼロ(ゼロカーボンシティ)の表明について
https://www.vill.tokai.ibaraki.jp/kurashi_tetsuzuki/kankyo_gomi_recycle/tokaimuranotorikumi/5127.html - https://www.jera.co.jp/business/thermal-power/list/hitachinaka
参考情報
【提言レポート】2020年改訂版 「石炭火力2030フェーズアウトの道筋」
https://www.kikonet.org/info/publication/coal-phase-out-2030_reviced-edition
ダウンロードファイル
【声明】常陸那珂共同火力発電所1号機の営業運転開始に対する抗議声明(PDF)
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