<プレスリリース>
仙台パワーステーション差止訴訟判決について
気候変動問題への対応と脱石炭の緊急性はさらに高まっていく
2020年11月11日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵
仙台パワーステーションは、11.2万kWという、国の環境影響評価法の環境アセスメント基準(11.25万kW)をわずかに下回る規模で環境アセスの手続きを潜脱して建設された、亜臨界圧という低い発電効率の石炭火力発電所である。石炭火力からの脱却は気候危機に早期に取り組むべき必須の課題であり、世界的潮流ともなっているが、我が国では石炭火力発電所推進の政策がパリ協定採択後も維持されてきた。時代錯誤の石炭火力発電所新設が進められるなか、仙台パワーステーションについて地域住民が立ち上がり、稼働停止を求める数万筆の署名を提出し、気候ネットワークをはじめとする環境NGOが仙台パワーステーションおよびその親会社である関電エネルギーソリューションと伊藤忠エネクスに対して再三稼働中止を要請してきたが、事業者らは2017年7月に稼働を強行してしまった。そこで、住民らが2017年9月27日、仙台パワーステーションに対し、①健康被害、②気候変動の被害、③蒲生干潟等周辺環境への悪影響を訴えて発電所の運転の差止を求める訴訟を仙台地方裁判所に提訴したのが本件訴訟である。原告らの脱石炭に向けた先駆的行動と訴訟の提起によって警鐘を鳴らしてきたことは高く評価される。
残念ながら、仙台地方裁判所は10月28日、被告が地域住民に対する環境コミュニケーションを怠り、公害防止協定に違反していることは認めたものの、脱石炭への世界からの要請を軽視し、住民らの訴えを棄却した。とりわけ、同裁判所が気候変動への影響を判断の対象から除外し、大気汚染の影響評価の方法を限定し、これらの長期にわたる影響に真摯に向き合わなかったことは遺憾というほかない。
11月9日、原告ら弁護団は、本判決については、これを早期に確定させ、行政にも働きかけて、仙台パワーステーション側に情報公開と環境汚染の改善を迫る活動に転換することとしたと伝えられる。石炭火力発電所については、ようやく政府でも今年7月に、非効率な石炭火力発電所を2030年までにフェードアウトすることを表明し、総合資源エネルギー調査会で審議を開始したところであるが、この「非効率な石炭火力発電所」には仙台パワーステーションが含まれる。さらに、我が国の2030年までの温室効果ガス排出削減目標の強化とパリ協定と整合する気候変動対策が求められているなか、菅首相が2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとすることを宣言し、石炭火力政策を抜本的に転換する方針を示した。そして、米国でもトランプ政権から2035年発電部門での脱化石を掲げたバイデン政権に移行する。世界の脱石炭への流れは不可避であり、今後、より加速するであろう。こうしたなか、本判決に先例としての意義はないものの、原告ら及び国内外の市民の脱石炭への取組によって気候危機の課題は乗り越えられていくものと確信している。私たちも、2050年ゼロに向けて、仙台パワーステーションを含めたすべての石炭火力発電所の早期フェーズアウトを求め、引き続き活動していく。
以上
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