日本の温室効果ガス排出量の減少傾向続く
-1.5℃目標の達成にはまだ不十分、抜本的な削減政策が不可欠-
2020年4月16日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵
4月14日、環境省は2018年の温室効果ガス排出量の確定値を公表した。これによれば日本の2018年度の温室効果ガスの総排出量は12億4,000万トンであり、前年度比で3.9%(5,100万トン)減少、2005年度比で10.2%(1億4,200万トン)減少した。2014年に減少に転じた日本の温室効果ガスは、以降5年連続で減少し続けたこととなり、政府が2020年度の目標としていた「2005年度比3.8%以上削減」も超過達成している。しかし、翻って京都議定書の基準年であった1990年比で見てみると、2.9%の削減に留まる。これは京都議定書第一約束期間における目標であった6%削減にも届かないものだ。未だ日本の排出構造は、根本から変わることができていない証左である。
温室効果ガス排出量が前年度・2013年度と比べて減少した要因として、電力の低炭素化に伴う電力由来のCO2排出量の減少や、エネルギー消費量の減少(省エネ、暖冬等)により、エネルギー起源のCO2排出量が減少したことが挙げられている。しかし、これらは気候変動政策の効果ではなく、省エネ対策を除けば外的要因による効果が表れているにすぎない。
また、電気・熱配分前のCO2排出量を見ると、エネルギー転換部門(製油所・発電所等)の排出量は相変わらず多く、全体の40.1%を占めており、火力発電所の稼働やとりわけ石炭火力発電所の稼働がCO2の排出量を押し上げた。発電電力量ベースでは、石炭火力発電が1990年比で約4.6倍も増えていることに起因する。エネルギーシフトを伴う抜本的な構造転換となっていないことが改めて浮き彫りになった。さらに、「パリ協定」において求められる1.5℃未満の目標達成には十分な削減とは言えず、2030年までの大幅削減に向けた道筋が描けているとは言えない。
このほか、温室効果ガスごとの排出状況をみると、CO2、メタン、一酸化二窒素、六フッ化硫黄、パーフルオロカーボン類は減少傾向にあるが、ハイドロフルオロカーボン類のみが前年度と比べて210万トン(4.7%)増加、2005年度と比べると3,420万トン(267.5%)と顕著な増加傾向がみられる。
現在、新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大により緊急事態宣言が出され、経済活動が制約されていることから温室効果ガスの排出もさらに減少傾向が続くとみられる。かつてリーマンショックに伴って2009年度には温室効果ガス排出量が大幅に減少し、過去最低を記録したものの、その後の景気回復でCO2排出量が再び増えた経過がある。この経験を繰り返すのではなく、ポスト-コロナで持続可能な脱炭素社会を描く道筋をつくるべく、エネルギー政策と気候変動政策の抜本的見直しが不可欠である。
プレスリリース(PDF)
日本の温室効果ガス排出量の減少傾向続く~1.5℃目標の達成にはまだ不十分、抜本的な削減政策が不可欠~
参考
環境省「2018年度(平成30年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について」(2020年4月14日)
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