秋田港の石炭火力発電所、月内の着工見送り
~世界の潮流に背く石炭火力は計画中止を決断すべき~
2019年8月9日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵
8月7日、関電エネルギーソリューションと丸紅が月内に予定していた「秋田港火力発電所(仮称)」(秋田県秋田市)の着工を見送ったと、複数の報道機関が報じた。気候ネットワークは、これまで秋田港の計画に対して環境アセスメント等を通じて中止の要請を再三に渡って行ってきた立場から、今回の着工見送りは「脱石炭」へ市民の勝利の一歩ととらえるとともに、事業者に対しては「中止」の決断を改めて求めるものである。
秋田港火力発電所(仮称)は、関電エネルギーソリューションと丸紅が共同で計画している130万kW(65万kW×2基)の石炭火力発電所であり、2024年に稼働開始予定だった。2018年12月に環境影響評価書に対する確定通知が出され、環境アセスメントの手続きは完了したが、同年9月には丸紅が脱石炭火力に向けた方針を発表していたことから、計画の動向が注目されていた。
石炭火力は化石燃料の中で最も多くCO2を排出するほか、NOxやSOxなどの大気汚染物質による環境や健康への影響の懸念が大きい。こうした問題から、石炭火力からの脱却を目標に掲げる国や地域は増え続け、世界の大手銀行や保険会社などの金融機関が石炭火力発電への融資をしない方針を決定している。さらに再生可能エネルギーの普及拡大価格低下などと相まって、「脱石炭」はもはや世界の常識となりつつある。
近年は国内においても石炭火力に対する問題意識が広まり、2012年以降に明らかになっていた国内50基の新設計画のうち、13基が計画中止(燃料転換を含む)に至っている。2018年末からだけでも、約100万kWの設備容量を予定していた大規模石炭火力発電所計画が3基中止となっている。
この度の報道によれば、両社とも発電所の新設計画は「検討段階」とし、秋田県に対して「事業化の判断に時間を要する可能性がある」と説明したことが明らかになった。さらに、着工延期に伴って送電線や鉄塔の新設工事の申し込みを取り下げたことも報じられている。
過去には、東北電力の能代火力発電所3号機のように、環境アセスを完了してから未着工のまま数十年を経た後に、建設がすすみ今月1日に稼働を開始した事例もある。しかし、将来的には石炭火力の優位性は現在よりも低下していることが見込まれるので、事業者はいたずらに計画を塩漬けにするべきではない。
気候ネットワークは、関電エネルギソリューションと丸紅が、秋田港火力発電所(仮称)計画を早期に中止の決断をすることを求めるとともに。石炭火力発電所計画を抱える他の事業者においても、石炭火力発電の問題を真摯に受け止め、建設段階にある計画も含め、中止することを求める。
プレスリリース(全文)
【プレスリリース】秋田港の石炭火力発電所、月内の着工見送り ~世界の潮流に背く石炭火力は計画中止を決断すべき~(2019/8/9)
参考
【意見書】「秋田港火力発電所(仮称)建設計画に係る環境影響評価方法書」に対する意見(2016/4/28)
【意見書】(仮称)秋田港火力発電所建設計画 環境影響評価準備書に対する意見書(2018/3/20)
【プレスリリース】秋田港石炭火力発電所計画の環境アセスメント準備書に対して環境大臣が「再検討」を要請 ~事業者は計画を中止せよ~(2018/10/1)
【環境NGO緊急声明】丸紅の脱石炭火力への方針発表を歓迎 ただしパリ協定目標達成には抜け穴も。方針の更なる強化を要請(2018/9/18)
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