【NGO共同声明】

三菱UFJが原則として新たな石炭火力発電融資を行わない方針を検討 
脱石炭への取組み強化に期待

2019年4月12日

国際環境NGO350.org
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
認定NPO法人 気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

本日12日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が、石炭火力発電所への融資残高を2030年度までに最大半減する方向で検討を行っていると報道された。MUFGは、昨年5月15日に融資及び引受に適用される「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」の制定を発表したが、私たちは化石燃料ファイナンスに関しては十分な配慮が見られないと指摘していた。今回、新設の石炭火力発電への融資を原則実行せず、石炭火力発電所への融資残高を2030年までに3~5割減らすとする、3大金融グループの中で最も前向きな方針を検討していることを歓迎する。

しかし、原則として融資を実行しないとしても、原則外でどのような条件が設定されるかは明確ではない。また、建設前であっても既に融資契約を締結した案件や交渉中の案件は新方針の対象外となり得るため、実質的には今後数年間は石炭火力発電への融資が続く可能性がある。融資残高を2030年までに3~5割減らすとの目標は、既存の融資の段階的な償還を考慮すれば、まだまだ新規融資が可能な水準であり、パリ協定と整合的な目標であるとは言えない。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク他が最近発表した報告書「化石燃料ファイナンス成績表」(注1)では、MUFGが日本の銀行の中で2016年から2018年の化石燃料全般への融資・引受額が最も大きい銀行であると指摘されており、世界の主要33銀行の順位でも7位に入っている。石炭火力部門に対する融資・引受額は世界で6位となった。同レポートにおけるMUFGの方針評価は、化石燃料拡大への段階的停止で明確な融資制限がなかったことから最低の格付けとなった。さらに3月28日には、環境省が特に二酸化炭素(CO2)の排出が多い石炭火力発電所の新設と増設の抑制を図る方針を公表したことからも、石炭火力への融資額が突出している日本の銀行、特にメガバンクにはより積極的な石炭への融資削減が求められる。

パリ協定の目標達成のためには、新規の石炭火力発電所を建設する余地はない。2018年10月に発表されたIPCCの特別報告書『1.5℃の地球温暖化』でも、さらに迅速な脱炭素化が急務であることが明確に示されている。

MUFGは、株式会社JERAが神奈川県横須賀市で建設を計画する「(仮称)横須賀火力発電所新1・2号機計画(計130万kW、運転開始予定:1号機2023年/2号機2024年)」(注2)やベトナムで建設計画中のバンフォン1石炭火力発電所事業をはじめ、国内外で多数の新規石炭火力発電事業計画に融資を行うとしている。これらの計画も「新規」に含めた数値目標を掲げ、より踏み込んだ対策を取るべきである。さらに、石炭火力発電事業へのプロジェクトファイナンス以外に、新設の石炭火力発電事業に関わる会社への企業融資や投資も抑制しなければならない。世界で石炭および化石燃料関連企業からのダイベストメント(投資撤退)が進む中、石炭火力発電事業向けの投融資残高の大きな銀行は、投資家からマイナス評価を受けることになる。石炭に巨額融資を行っているMUFGが5月に決定するとしている方針において、現時点で融資契約が締結していないものも含めあらゆる石炭火力発電事業及び関連企業への投融資を禁止とし、実質的な石炭火力への投融資額を削減する方向に検討を進め、さらに厳しい姿勢を示すことを期待する。

注1) RAN、バンクトラック、シエラクラブ、オイル・チェンジ・インターナショナル、先住民族環境ネットワーク、オナー・ジ・アース、「化石燃料ファイナンス成績表」(日本語要約版、2019年4月8日)
報告書全文("Banking on Climate Change 2019 " 英語)は3月20日に発表

注2)2019年3月26日、「(仮称)横須賀火力発電所新1・2号機計画」に対し市民団体は融資撤回を求める申し入れを行った。

報道

朝日新聞「石炭火力の融資、最大半減へ 環境に配慮 三菱UFJ」2019年4月12日
日本経済新聞「石炭火力、狭まる包囲網 三菱UFJが新規融資中止へ 」2019年4月12日

参考情報

2018/5/25「小さな前進、しかし具体的な取り組み内容の向上が必要」
三菱UFJの環境・社会ポリシーフレームワークの制定について環境NGOが評価を公表(リンク

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