<プレスリリース>

福島のエイブル、石炭火力発電所計画をバイオマス専焼に変更
~石炭計画の中止を歓迎。国内石炭火力発電所新設計画1基中止に~

2019年1月24日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

株式会社エイブルが、福島県いわき市好間工業団地で計画していた石炭火力発電所新設計画「いわきエネルギーパーク新設計画」について、石炭混焼(バイオマス30%混焼)からバイオマス専焼発電事業に切り替えたことがわかった。これにより、2012年以降に把握された日本国内の石炭火力発電所建設計画50基のうち、9基が中止・燃料変更となった(50基中、10基が稼働、31基は建設中もしくは計画中:2019年1月24日現在)。気候ネットワークは、石炭燃料を使用する火力発電所がさらに1基中止に至ったことを歓迎する。

本事業計画は、環境アセスメント法の対象11.25万kWよりも規模が下回る11.2万kWの計画で、国のアセスメントは実施されていないが、福島県環境影響評価条例の対象である。この福島県条例基づき、2014年5月に環境アセスメントの方法書、2015年12月に評価書が公表され、すべての環境アセスメントの手続きを終えた形となっていた。しかし、石炭火力発電所建設計画に対しては、地元住民などから強い反対の声が上がっていたほか、いわき市議会でも反対の立場から追求する質疑が繰り返されていた。また、環境アセスメントの福島県知事意見では、強く異議を唱える意見ではないものの、バイオマスの混焼率を高めるよう指摘されていた。今回の燃料転換については、2018年11月5日、株式会社エイブルが福島県に対して環境アセスメントの手続きにおいて「事業内容修正」を提出し、主燃料を石炭から木質バイオマスに変更する旨を通知し、計画の変更が明らかになったものである。

しかし、計画そのものが中止になったわけではなく、木質バイオマス燃料を用いた火力発電に切り替えるとのことで、これに対しては強い懸念を持っている。木質バイオマス火力発電については、森林資源のマテリアル利用や、生物多様性の保全等の観点から、適正な利用を行わなければ、持続可能性の観点から大きな問題となる。さらに、外国産のバイオマスを調達することについては、提供国の食料供給との競合や持続可能性の問題に加え、CO2排出削減に対する寄与などの問題もある。今回の計画については、バイオマス利用の詳細は明らかにされておらず、また今回の燃料転換については、環境影響評価条例の「環境影響の低減」を図ったものとして手続きが行われ、環境アセスメントを再度行う方針がとられていないという。バイオマス発電であっても甚大な環境負荷を発生させる恐れがあること、バイオマス火力発電としては大規模なこと、CO2排出量の情報が石炭混焼計画時から更新されていないこと、大気汚染物質の排出も少なくないことなどの懸念点が残る。さらに、運用時において、バイオマス調達に困難が生じた場合に、石炭混焼に戻ってしまう懸念も払拭できない。今後、事業者のさらなる対応として環境影響評価の情報を積極的に開示し、地元住民や環境NGOを含む市民との環境コミュニケーションを図り、持続可能性を十分に評価することを要請する。

プレスリリース本文

福島のエイブル、石炭火力発電所計画をバイオマス専焼に変更

参考

株式会社エイブルウェブサイト 
福島県環境影響評価実施案件

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