COP24閉幕 パリ協定の運用ルールを採択
~脱炭素に向け、目標の引き上げと政策転換・実行を~
2018年12月15日 カトヴィツェ・ポーランド
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡美恵
現地時間12月15日午後10時、ポーランド・カトヴィツェで開かれていた国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)で、タラノア対話やIPCCの1.5℃特別報告を歓迎する決定文書とともに、パリ協定の詳細な実施指針(ルールブック)がパッケージで採択された。
パリ協定は、1.5~2℃未満に気温上昇を抑制するために、21世紀の後半に世界での実質排出ゼロを目指し、各国が、行動に取り組み、それを強化していくための要素をバランスよく盛り込んだ歴史的合意である。パリ協定の採択から3年で仕上げられたルールブックは、その基本となる枠組みを具体化し、各国の目標や取り組みを検証しつつ機能させていくための指針となりうるものと評価できる。この合意により、全ての国が、緩和(排出削減)や適応、資金、技術移転、能力構築などに関し、目標を持ち、様々な政策や行動を実施し、関連する詳細な情報を提出し、世界全体の取り組みがパリ協定の目標に照らして十分かどうかの議論を行い、その結果を受けて目標や行動を引き上げるという一連のサイクルの仕組みが整った。求められていたほどには明確には規定されなかったが、行動引き上げや途上国支援の要請は合意全体から読み取ることができ、また、明らかである。
ここで仕上がったパリ協定のルールを基礎に、気候変動の危機に立ち向かえるかどうかは、これからの各国政府の意思と市民社会を含むすべてのセクターの関与にかかっている。日本を含む先進国は削減を加速させ、途上国へ資金や技術を支援し、ともに脱炭素の公正な経済社会への転換を加速させることが求められる。
合意を後押ししたのは、今年10月に公表されたIPCC1.5℃特別報告である。産業革命前からの1℃の上昇ですら、小島嶼国はもとより、どの国も気候変動の悪影響の現実に晒されている。COP24でも、産業革命前から1.5℃の気温上昇でも十分に危険な気候変化であり、2050年に実質排出ゼロを目指すべきことが共有された。他方で、日本では2℃目標も共有されているとはいえず、2030年目標は低きに過ぎる。エネルギー基本計画は世界の脱炭素の流れを前提にしておらず、石炭火力発電を筆頭に、排出削減を困難にするインフラのロックイン(大規模排出源の固定化)を回避する政策措置もない。
今や、脱炭素は世界の競争の基本ルールでもある。日本は来年6月にG20大阪サミットの議長国を務める。世界の後塵を拝さないために、現在検討中の長期戦略で明確に2050年までの実質排出ゼロを掲げ、これに向け、2030年目標の引き上げを打ち出し、大胆に政策措置を見直さなければならない。
ここカトヴィツェは、かつて採炭で栄え、近年、石炭依存からの脱却に挑戦中のまちである。COPでは、産業構造の転換に伴う労働者などへの連帯と公正な移行(Just Transition)の重要性を指摘したシレジア宣言が採択された。脱化石時代に向けて、企業や地域社会が主体的に持続可能で将来の発展に向けた転換への挑戦が急がれる。日本においても、本気で脱炭素に向けた消費者、労働界との連携、対話による取り組みが求められる。
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プレスリリース(PDF)
【プレスリリース】COP24閉幕 パリ協定の運用ルールを採択~脱炭素に向け、目標の引き上げと政策転換・実行を~(2018/12/15)
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