<プレスリリース>
秋田港石炭火力発電所計画の環境アセスメント準備書に対して環境大臣が「再検討」を要請
~事業者は計画を中止せよ~
2018年10月1日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美惠
9月28日、丸紅株式会社と株式会社関電エネルギーソリューションが秋田県秋田市で計画している「秋田港火力発電所(仮称)建設計画」の環境影響評価準備書に対する環境大臣意見が公表された。本計画においては、2015年11月13日に配慮書に対する環境大臣意見において「是認できない」としている。その後、大幅な見直しもなく、石炭を燃料とする大規模な新規火力発電所の計画として環境アセスメントの手続きが進められてきた。今回の大臣意見書においては、「本事業により新たに排出されるCO2排出量が年間866万トン程度にも及ぶこと」から、「環境保全面から極めて高い事業リスクを伴うもの」であるとし、事業者に対しては、「2030年度及びそれ以降に向けた本事業に係る二酸化炭素排出削減の取組への対応の道筋が描けない場合には事業実施を再検討することを含め、あらゆる選択肢を勘案して検討することが重要」だと指摘された。両大臣合意以降も、2030年目標の達成が危ぶまれている状況にあり、達成の「道筋」が描けているとは言い難い状況にある。環境大臣も業界の枠組みの実効性に疑問を呈している。長期の環境リスクを回避するには、事業開始前の「今」、中止を決断することが極めて重要である。
本計画は、出力が130万kW(65万kW×2基)で石炭を燃料とする大規模火力発電所の建設計画である。事業者の一つである丸紅株式会社は、今月18日、サステナビリティ経営推進の一環として、石炭火力発電事業及び再生可能エネルギー発電事業に関する取組み方針として脱石炭火力の方向性を示した。環境NGOなどでは、これを脱石炭に向けた前向きに受け止めて、この方針発表に対して歓迎の意を表明した。同時に、方針の中で、「BAT(Best Available Technology, 現時点では超々臨界圧発電方式)を採用し、かつ日本国政府並びに案件実施国の国家政策(電力安定供給、貧困・雇用対策、経済成長策)に合致した案件については取組みを検討する場合もある」との例外規定を設けていたことから、抜け穴になる可能性を指摘していた。まさに本事業案件は、その抜け穴に該当する。「脱石炭」の方針に沿って、本事業の推進姿勢を改め、計画を中止する必要がある。
本事業は、2024年からの運転開始予定とされており、2050年を超えて大量のCO2排出を固定化させかねない。本計画は、パリ協定の要請と整合せず、社会的説明責任も果たされていない。また、様々な金融機関や機関投資家等が投融資を引き揚げるダイベストメントの動きが広がっており、丸紅は現状でもダイベストメントの対象としてリスト化されている。石炭火力発電所に対する投資リスク、経済的リスクを考慮すれば、本事業は中止するしかない。
事業者は、環境大臣の意見を真摯に受け止め、あらゆる選択肢を考慮して事業を再検討し、計画を中止すべきである。また、経産大臣にあっては、事業者に対して環境大臣意見を勘案し、具体的な道筋が描けていない状況に鑑み、「再検討」を行い、計画を中止するよう勧告すべきである。
プレスリリース
プレスリリース 秋田港石炭火力発電所計画の環境アセスメント準備書に対して環境大臣が「再検討」を要請 ~事業者は計画を中止せよ~
参考
気候ネットワークプレスリリース「丸川環境大臣も石炭火力発電所建設計画を是認せず~環境大臣の意見を受け、事業者は計画を中止すべき~」(2015年11月13日)
環境NGO緊急声明「丸紅の脱石炭火力への方針発表を歓迎 ~ただしパリ協定目標達成には抜け穴も。方針の更なる強化を要請~」(2018年9月18日)
丸紅ニュースリリース「サステナビリティへの取組み方針に関するお知らせ(石炭火力発電事業及び再生可能エネルギー発電事業について)」(2018年9月18日)
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