2012年6月29日

エネルギー・環境会議の選択肢
脱原発と温暖化対策を両立する「選択肢」は示されず
~いずれも気候変動対策を犠牲にするもので、選択不可能~

気候ネットワーク代表浅岡美恵

 

 6月29日、政府はエネルギー・環境会議において、「エネルギー・環境に関する選択肢」をまとめた。選択肢では、エネルギー政策の3つの選択肢(2030年時点の発電電力量における原発の割合を基準とし、①ゼロシナリオ、②15シナリオ、③20~25シナリオ)が示された。再生可能エネルギー比率はそれぞれのシナリオで①30%もしくは35%、②30%、③30~25%、化石燃料依存度は①65~70%、②55%、③50%と見込んでいる(下表参照)。政府は、これらの選択肢についての国民的議論を7月から8月にかけて行い、8月に政府として政策を決める方針だ。

 

 しかし、示された選択肢は、原発依存を下げれば化石燃料依存は増え、温暖化対策は犠牲にするよう断じるようなものとなっており、極めて問題である。省エネルギーは最も重要な対策だが、いずれのシナリオでも、猛暑だった2010年比で、2030年までに発電電力量を1割しか減らせない想定である。化石燃料の構成比においても、石炭の割合は18~21%といずれのシナリオでも高く、石炭に大きく依存することになっている。その結果、温室効果ガス排出量については、1990年比で2020年までに①0~7%、②9%、③10~11%削減とされており、従来の日本の削減目標である「2020年25%削減」を大きく下回り、京都議定書6%削減目標をほぼそのまま推移するかわずかに削減を積み増すだけであり、2030年まで10年対策を先送りするものだ。国連交渉の場では、現在各国が示している温室効果ガスの排出削減目標をいかに引き上げていくのかが議論されており、今回政府が示した選択肢は世界の流れと逆行する。いずれのシナリオも、気候変動問題を犠牲にするものでしかなく、このような選択肢に絞って国民に選択を迫ることは、問題である。

 この選択肢を作成する過程で、「脱原発と地球温暖化対策の両方が重要であり、両立は可能である」との提案は反映されていない。これから行う「国民的議論」では、更に多様な提案を含めて議論をした上で、8月には、脱原発の方針を立てるのと同時に、温暖化対策を見直し・強化をし、2020年25%削減を基本とした「脱原発と温暖化対策の両立」を実現するような決定をする必要がある。

 

プレスリリース本文

プレスリリース「エネルギー・環境会議の選択肢 脱原発と温暖化対策を両立する「選択肢」は示されず~いずれも気候変動対策を犠牲にするもので、選択不可能~」

関連リンク

エネルギー・環境会議ウェブサイト(こちらで「エネルギー・環境に関する選択肢」本文がダウンロードできます)

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