2012年7月11日

エネルギー・環境に関する選択肢についてのパブリックコメント意見提出
~原発ゼロと温暖化対策の両立を目指す第4のシナリオが必要~

気候ネットワーク

7月11日、政府が発表した「エネルギー・環境に関する選択肢」を受けて、気候ネットワークは下記をパブリックコメント意見として提出しました。

◆意見概要◆

原発について選ぶならゼロシナリオしかない。しかし環境面からはいずれの選択肢も不適切。原発ゼロの上に、省エネの深掘り、再生可能エネルギーの強化、脱石炭で温暖化対策の両立を目指す第4のシナリオが必要。

◆意見および理由◆

1.3つの選択肢について

(1)原発については、「ゼロシナリオ」しかない

原発増設も可能とする「15シナリオ」や、原発を推進する「20~25シナリオ」はいずれも非現実的である。そのため、原発選択に関しては、唯一原発依存をゼロにする「ゼロシナリオ」であるべきである。しかし、「ゼロシナリオ」にも以下の問題があり、そのままでは支持できない。

(1)電力システム改革や産業構造を転換など具体的な道筋が示されていない、(2)省エネを、他の選択肢と同様、わずかにしか見込んでいない(2030年に発電電力量を1割削減、最終エネルギー消費を約2割削減)、(3)現状よりも化石燃料の依存度が高くなる、(4)再生可能エネルギーの導入見込みが不十分。

(2)いずれも温暖化対策を後回しにする選択肢でしかない

3つの選択肢はいずれも温暖化対策後回しが明白だ。前述の通り、省エネをわずかしか見込まず、再生可能エネルギー導入も控えめで、CO2排出量の多い石炭をはじめとする化石燃料への強い依存体制を続けるという前提では、温室効果ガスが減らないのも当然だ。なかでも「ゼロシナリオ」は、温室効果ガス排出量は1990年比で2020年に0~7%削減、2030年に23%削減と、京都議定書第一約束期間(2008~12年)の削減義務である6%削減のレベル並みかそれよりも増えることが想定されており、原発をゼロにするかわりに地球温暖化対策を大きく犠牲にするシナリオである。これは、私たちが望む未来の姿でも、持続可能な社会への道筋をつくるものでもない。しかし、本来、原発依存を下げると温暖化問題はあきらめざるを得ないようなトレードオフの関係にはならないようなシナリオもさまざまに考えられる。それらが示されていないのは問題である。

2.第4のシナリオの必要性

今回示された3択は、このパッケージのままでは、いずれもこれからの社会の選択としてふさわしくない。福島原発事故を踏まえ、気候変動問題もないがしろにしない、持続可能な社会を実現できるシナリオが新たに必要である。

気候ネットワークでは、持続可能な社会を作るために必要な第4のシナリオ「原発ゼロ+省エネ+再生可能エネルギー+電力システム改革+脱石炭」を提案する。

(1)原発ゼロ

原発は2020年より前にすみやかにゼロにする。東日本大震災で被災した福島第二原発、女川原発に加え、活断層が直下にあることが確認されている浜岡原発、敦賀原発は即廃炉を決定し、その他の原発についても早期にゼロとする。

(2)さらなる省エネの推進

原発をゼロに向かって大きく減らすために、より大きな省エネを実施する。実際に省エネの余地は、政府が固定するシナリオでは不十分である。たとえば、発電部門における電気のロスをなくし、無駄に捨てている熱を有効に利用していくこと、産業構造の転換も視野に入れ、効率の悪い工場や事業所などの省エネを大幅に進めることで、電力の30%削減、一次エネルギーの40%削減を目指す。

(3)再生可能エネルギー最大限の導入

再生可能エネルギーの電力消費量に対する導入目標を、2020 年までに30%程度、2030 年には電力の50%程度(約3850億kWh)、2050 年頃までには最終的に電力の100%を目指す。

また、再生可能エネルギーは電気だけではなく、バイオマス熱エネルギーや太陽熱を有効活用する再生可能エネルギー熱の利用を増やす。

(4)脱石炭政策

気候変動問題を解決する視点から、将来的に脱化石燃料を目指す方針を持ち、そこに向けて、化石燃料依存を可能な限り減らしていく。2030年時点では石炭・石油依存は限りなく少なくする。また石炭火力発電の新規建設はせず、短期的な火力発電所の見通しとしては、より高効率な天然ガスへのシフトに重点を置く。

(5)気候変動を防ぐ視点から大幅な温室効果ガスの削減

人類にとっての危険な気候を回避するため、先進国は2020年に25%~40%、2050年には80%の削減が求められている。「キャップ&トレード型の排出量取引制度」を導入し、大口の工場などでのトップランナー化を実現するとともに、省エネや再生可能エネルギー、脱石炭政策を組み合わせることで、2020年25%削減、2030年には40~50%削減を実現する。

(6)電力システム改革で電力自由化と発送電分離を実現

原発や石炭火力発電などによる大規模集中型発電システムから、日本全国の地域特性にあわせた再生可能エネルギーを有効に活用する地域分散型エネルギーシステムに転換し、再生可能エネルギーの活用による地域活性化につなげる。送電線へ再生可能エネルギーを優先的に接続すること、電力自由化・発送電分離、スマートグリッド体制やデマンドレスポンス体制の構築など「電力システム改革」を推進し、再生可能エネルギーの大幅導入を実現させていく。

(7)省エネ・再生可能エネルギーで新しい経済の発展

省エネや再生可能エネルギー推進によって、社会全体で新しい産業や雇用を生み出すポジティブな効果を引き出していく基本方針を持ち、世界に率先して、新しいグリーン経済を推進していく。

東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故での経験を教訓に、このような脱原発と気候変動対策を両立させた持続可能な社会を目指していくことが必要である。

今回の3つの選択肢に狭めることなく、明確なビジョンの下に第4のシナリオを掲げ、その実現に向けて、政府・国民が一体となって取り組んでいくべきである。

以上

問合せ

気候ネットワーク東京事務所
〒102-0082千代田区一番町9-7一番町村上ビル6F
TEL: 03-3263-9210 FAX: 03-3263-9463