2012年9月14日
温暖化対策を強化した原発ゼロシナリオで再考を
~政府が示した「革新的エネルギー・環境戦略」の脱原発時期と温暖化対策は不十分~
気候ネットワーク代表 浅岡美恵
本日9月14日、政府はエネルギー・環境会議第14回会議を開催し、「革新的エネルギー・環境戦略」をまとめた。原発の割合について「2030年代に原発稼働ゼロが可能となるよう、あらゆる政策資源を投入する」とされ、原発ゼロに向けた方向性が示されたことは歓迎されるが、2030年代の努力目標に止まっている。これまでの世論調査等の結果は、国民の多くがより早い時期に、確実にゼロにしていくことを求めていることを示しており、より早い脱原発を確実に実現すべきである。
さらに、エネルギー政策として非常に重要なテーマである温室効果ガス排出量については、1990年比で2020年までに5~9%の削減とされており、従来の日本の削減目標である「2020年25%削減」を大きく下回ったばかりか、京都議定書の2012年までの6%削減という目標からも後退する内容である。
脱原子力とともに、気候変動の深刻な悪影響を防止していくことも、極めて重要な課題である。そのためには、原子力に依存しないことを明確にしたうえで、温室効果ガスの排出削減のための政策資源を総動員する必要がある。しかし、今回の検討では、温暖化問題を完全に置き去りにし、そのための策を十分検討することなく、完全に軽視してしまった。省エネという切り札について、発電量は2030年までにわずか10%削減、最終エネルギー消費では19%削減という小幅な削減を固定するところからもそれは明らかだ。
私たちは、更なる省エネの深掘り、そのための産業・発電部門を中心にした削減可能性の精査と政策導入、天然ガスへの燃料転換、そして再生可能エネルギーの加速度的な大幅導入によって、脱原発と温暖化対策の両立が可能であることを提示してきた。それも選択肢に入れて検討を行うべきであった。
こうした対策は、脱原子力をより早期に、かつ確実に実現していく道でもある。しかしながら、温室効果ガスの低い削減目標に止まった今回の戦略は、地球温暖化対策を置き去りにしたというだけでなく、原子力依存からの脱却にもあいまいさを残すこととなったといわざるをえない。
現在、国連交渉では温室効果ガスの排出削減目標をいかに引き上げるかの議論が進められており、政府の提示した削減案は世界の流れに大きく逆行するものである。国民からも世界からも、そして将来世代からも容認されないであろう。
政府は、地球温暖化問題に真摯に向き合い、原子力依存の退路を断ち、温暖化問題の解決に向けて、あらゆる削減可能性を精査するプロセスを立ち上げ、その実現のための政策手段を導入し、野心的な2020年、2030年削減目標を設定するべきである。そして、国際的には、2020年25%削減目標を据え置き、その目標に向け引き続き最大限の努力する姿勢を国際社会にも示すべきである。
プレスリリース本文
温暖化対策を強化した原発ゼロシナリオで再考を ~政府が示した「革新的エネルギー・環境戦略」の脱原発時期と温暖化対策は不十分~
関連リンク
革新的エネルギー・環境戦略(平成24年9月14日エネルギー・環境会議決定)
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