<プレスリリース>
環境アセスメントで環境大臣、再検討を要請
これを受け、千葉県千葉市「蘇我火力発電所」事業は中止とすべき
2017年3月10日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美惠
本日3月10日、中国電力株式会社及びJFEスチール株式会社が設立する特別目的会社により、千葉県千葉市のJFEスチール株式会社東日本製鉄所(千葉地区)構内において計画する、「(仮称)蘇我火力発電所(出力約107万kW)」の環境配慮書に対する環境大臣意見が公表された。今回の意見書は、山本公一環境大臣が就任してはじめて、かつ、パリ協定が発効し、日本が締結してはじめての石炭火力発電所建設計画に対する環境大臣の意見書として注目されていた。昨年2月に前丸川大臣が経済産業省との合意によって「是認できない」としていたそれまでの意見を取り下げてしまったが、今回の意見書では、前回までの環境大臣意見書からは大きく踏み込み、「事業の再検討」を事業者に要請する方向性を打ち出した。
意見書においては、現状の石炭火力発電の発電電力量が2030年のエネルギーミックスで示された見通しよりも上回っている上に、石炭火力発電所の新設・増設計画が急増していることを背景に、2030年度の二酸化炭素排出削減目標を約7000万トン超過するとの懸念を表明している。また、「パリ協定」をふまえて、「諸外国では石炭火力発電及びそれからの二酸化炭素排出を抑制する流れがある」ことを紹介するとともに、「石炭を始めとする化石燃料の開発や活用へ投資をしても、「座礁資産」になるリスクがあり、一部の金融機関や機関投資家等が投融資を引き揚げる(ダイベストメント)活動や、保有株式等に付随する権利を行使するなどにより投融資先企業の取組に影響を及ぼす(エンゲージメント)活動を行っていることにも触れた。
事業者はこの環境大臣の意見を真摯に受け止め、あらゆる選択肢を考慮し事業を再検討するべきである。本事業が排出する二酸化炭素やPMなどの2.5大気汚染物質、また社会的にまた経済的なリスクを考慮すれば、事業は中止するしかないという結論はすぐに出るはずだ。実際、節電・省エネによって国内の電力需要が減少傾向にあることを受けて、今年の1月には、関西電力の赤穂発電所(60万kW×2基)の石炭への燃料転換計画が事実上の中止になった。このことは、脱石炭火力の潮流が日本にも起こり始め、また石炭火力事業リスクが現実になっていることを示している。経済産業大臣及び事業者は、環境大臣の「再検討」の要請を重く受け止め、本事業の計画を見直し、中止すべきである。
また、本日の環境大臣の意見は、日本の過剰なまでの石炭火力発電所の新設計画は、パリ協定における時代の要請にそぐわないことを改めて知らしめている。その他の計画を進める事業者においても、事業の再検討を求める。
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環境アセスメントで環境大臣、再検討を要請これを受け、千葉県千葉市「蘇我火力発電所」事業は中止とすべき(2017年3月10日)