中国電力株式会社が進める、柳井発電所2号系列リプレース計画。環境影響評価準備書の手続きに対し、以下の意見を提出しました。

1.本計画は「リプレース」であっても、新たなLNG火力の長期固定化であり、1.5℃目標との整合性が厳しく問われる

本計画は既設設備の更新を伴う「リプレース」とされているが、実質的には、2030年以降も長期に稼働しうる新たなLNG火力設備を導入するものである。したがって、「既設より高効率である」「発電所全体で一定量のCO2削減となる」といった説明だけでは不十分であり、1.5℃目標や2050年カーボンニュートラルとの整合性が厳しく問われるべき事業である。

準備書では、新2号機の排出原単位は約0.321kg-CO2/kWh、年間排出量は約111万t-CO2、リプレース後の柳井発電所全体では年間約360万t-CO2の排出が見込まれている。発電所全体では既設設備より年間約20万t-CO2削減されるとされるが、なお大量排出源であることに変わりはない。問題とすべきは「既設より低いか」だけではなく、今後の脱炭素化が求められる中で、この規模のLNG火力を新たに導入し、長期稼働させることの妥当性である。

2.方法書段階で指摘された重要論点に、準備書は十分に応答していない長期固定化であり、1.5℃目標との整合性が厳しく問われる

第6章によれば、方法書段階において、住民等からすでに以下のような意見が提出されていた。

  • LNG火力であっても大量のCO2を排出する以上、排出量や排出係数を早期に示すべきこと
  • 本計画が1.5℃目標と整合するのかを示すべきこと
  • 累積排出量や長期的な気候影響を評価すべきこと
  • 将来の水素混焼・専焼を掲げるなら、その具体的内容を示すべきこと
  • 経済産業大臣意見も踏まえ、本計画については、稼働抑制・休廃止を含む「あらゆる選択肢」の検討の必要性

しかし、事業者見解は、中国電力グループ全体の方針や将来目標への言及が中心であり、柳井新2号機という個別設備の排出や削減の見通しについて、十分な説明になっているとは言い難い。

3.「既設より改善」では足りず、絶対排出量・累積排出量の評価が必要である

準備書によれば、新2号機の排出原単位の改善や、発電所全体で年間約20万t-CO2削減されることを強調している。しかし、気候変動対策において重要なのは、この事業が将来にわたりどれだけの温室効果ガスを排出するのかである。

新2号機単体で約111万t-CO2/年、発電所全体で約360万t-CO2/年という排出規模が続く以上、本計画は依然として大規模排出源である。準備書では年間排出量は示されたものの、新2号機の想定運転年数、2030年、2035年、2040年、2050年時点の排出量見通し、新2号機及び発電所全体の累積排出量、燃料転換を含む長期排出削減シナリオなどは示されていない。気候変動への影響を考える上では、単年度の排出量だけでなく、長期にわたる排出の見通しも重要であり、長期的な排出経路の提示が必要である。

4.排出係数は示されたが、それが1.5℃整合水準かの検討が欠けている

準備書では、新2号機の排出原単位として約0.321kg-CO2/kWhが示されているが、その数値が1.5℃目標に整合する将来の電力部門の姿と比べてどのような水準なのかについて、十分な説明がない。少なくとも、既設より高効率であることだけで、本計画の気候変動対策上の妥当性が説明されるものではない。したがって事業者は、本件設備の排出源単位が2030年以降の脱炭素化の中でどのような位置付けにあるのかを、より具体的に示すべきである。

国際エネルギー機関(IEA)の1.5℃シナリオでは、2030年の電力部門平均排出係数は0.186kg-CO2/kWhとされている。柳井新2号機の0.321kg-CO2/kWhはこれを大きく上回っており、「既設より高効率」であることだけで、1.5℃整合性を説明することはできない。

したがって、事業者は、本件設備の排出原単位が2030年代以降の脱炭素化の中でどのような位置づけにあるのかを明らかにすべきである。

5.LNGのライフサイクル排出やメタン漏えいの評価が欠けている

準備書の温室効果ガス評価は、主として発電所での燃焼由来CO2に限られている。しかし、LNG火力の気候影響は、燃焼時CO2だけでは評価できない。天然ガスの採掘、液化、輸送、再ガス化の過程でも温室効果ガスが排出され、とりわけメタンは、大きな温暖化影響を持つため、国際的にも漏洩を阻止すべきとの声が高まっている。

にもかかわらず、準備書では、LNGのライフサイクル排出量や、調達段階を含めたメタン漏洩の影響が評価されていない。LNG火力を相対的に「低炭素」と位置付けるのであれば、少なくともこれらを含めた評価が必要である。

6.将来の水素混焼等への言及は抽象的で、現時点の排出の正当化に使われている

事業者は、将来的に水素混焼・専焼を導入する可能性に言及しているが、導入時期、混焼率、削減量、燃料調達、コストなどの具体的説明は示されていない。方法書段階でも、混焼開始後の推定排出量を示すべきとの意見があったが、十分な応答はなされていない。

将来技術への期待を示すだけでは、現時点でLNG火力設備を導入することの妥当性を十分に説明したことにはならない。水素混焼等を本件の脱炭素化可能性として掲げるのであれば、その実現可能性と削減効果を具体的に示すべきである。

7.「あらゆる選択肢」の検討が尽くされていない

経済産業大臣意見は、CO2削減の道筋が1.5℃目標と整合する形で描けない場合には、稼働抑制や休廃止も含め、あらゆる選択肢を勘案して検討することを求めている。

しかし準備書では、LNG火力の導入が事実上の前提とされており、再エネ、蓄電池、需要側調整、系統対策、設備規模の縮小、ゼロオプション等との比較検討は十分に示されていない。

長期の化石燃料依存を固定化するおそれのある事業については、「LNG火力ありき」ではなく、ゼロオプションや稼働抑制・早期停止も含めた代替案の比較検討が必要である。

8.結論

本計画は「リプレース」であっても、今後長期にわたり大量のCO2を排出しうる新たなLNG火力設備を導入するものであり、気候変動対策の観点から厳格な検討が必要である。

準備書は、既設設備との比較による効率改善を強調する一方で、絶対排出量、累積排出量、1.5℃目標との整合性、LNGのライフサイクル排出、将来技術への依存、代替案との比較といった重要な論点について十分な説明を欠いている。

したがって、事業者は、これらの点を補充・再検討し、本計画の温暖化対策上の妥当性を改めて具体的かつ定量的に示すべきである。

参考

柳井発電所2号系列リプレース計画(中国電力

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