NGO共同声明:
JBIC融資・JERA出資の豪ガス開発事業で先住民族が勝訴
~JBICは直ちに融資契約の破棄を~
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
国際協力銀行(JBIC)が支援中の豪州バロッサ・ガス田開発事業において、先住民族の代表者が住民協議や海洋生物への影響緩和策が不十分であるとして豪州の環境当局を訴えていた裁判で、12月2日、連邦裁判所は政府側の控訴を棄却した[1]。私たち環境NGOは、この住民勝訴判決を歓迎するとともに、JBICに対して当事業の融資契約の破棄を強く要請する。
JBICは、2021年12月24日にバロッサ・ガス田開発事業の出資企業のひとつであるJERAの豪州法人と3億4600万米ドルの貸付契約を締結した[2]。オーストラリア及び日本の環境NGOは、当事業において影響を受ける先住民族のティウィ族との協議や合意形成、情報公開等が不十分で、現地法や『環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン』に違反していることから、融資を行わないよう繰り返し求めていた。しかし、JBICは、事業者及び現地の政府環境当局がティウィ族に影響が及ぶことはないと認めているとして融資決定に踏み切った経緯がある。
その後、2022年6月にティウィ族の代表者が、豪州の環境当局を連邦裁判所に提訴し、2022年9月には連邦裁判所より、工事の差し止めと2週間以内の撤去命令が発せられた[3]。本判決に政府側が控訴したため、控訴審が開かれていたが、12月2日、連邦裁判所は控訴を棄却した。
ティウィ族の代表者で原告のDennis Murphy Tipakalippa氏は、「私たちは全世界に私たちの声を届け、この成果を見てもらいたい。私たちの海を徹底的に守り抜くために闘ってきたし、これからも闘い続ける。母なる海は私たちの一部であり、事業者のサントス社(豪採掘大手でバロッサ事業の最大出資者)や他のすべての採掘企業は、これが私たちの領域であり、開発にあたって私たちの意見に耳を傾けなければならないことを肝に銘じるべきだ」と述べている。
ティウィ族の活動を支援している豪州NGOのEnvironmental Defenders Office(EDO)の弁護士、Jordina Rus氏は、「政府側は高等裁判所(豪州における最上級の裁判所)への上告は可能であるが、審議を開始するにあたって特別な理由が求められ、多くの訴えは棄却されている」と述べている。
JBICは当事業の融資契約の破棄を直ちに行うべきである。また、このような事態が二度と生じないよう、融資検討においてNGOや専門家等の第三者を含めた助言委員会を設置すること等、審査能力及び説明責任の強化策を講じるべきである。
注釈
- https://www.abc.net.au/news/2022-12-02/nt-santos-loses-appeal-barossa-tiwi-island/101726772
- https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2021/1227-015708.html
- https://www.theguardian.com/environment/2022/sep/21/tiwi-islanders-win-court-battle-with-santos-over-drilling-in-traditional-waters
本件に関するお問い合わせ先
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、担当:田辺
tanabe@jacses.org