【プレスリリース】

気温上昇を加速させる新規石炭火力「武豊5号」の運開に抗議する

2022年8月7日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

2022年8月5日、東京電力HDと中部電力が出資するJERAが、石炭を燃料とする武豊火力発電所5号機の商業運転開始を発表した[1]。この夏、連日猛暑が続いて熱中症で多くの命が奪われており、8月になってからは、東北・北陸などで経験したことのない豪雨被害が次々と明らかになっているさなかである。その原因が人為的なCO2排出であることは、最新の科学でも示されている。地球の平均気温の上昇を1.5℃に抑え、気候危機を回避していくためには、石炭火力の新設を厳に戒め、既設の発電所の2030年までに廃止することが求められているなか、武豊火力発電所の運転を開始したことに対して気候ネットワークは厳重に抗議する。

武豊火力発電所5号機は、1972年に運転開始した重油・原油を燃料とする2~4号機(計112.5万kW、2016年3月に廃止)の老朽化に伴うリプレースとして2015年2月に計画が公表された。2~4号機に比べ環境への影響が改善するとして、「改善リプレース簡略アセス」が適用されたが、これは、同じくJERAが建設を進めている横須賀火力発電所と共通する重大な手続き的瑕疵を有するものである。

武豊火力発電所5号機は、全国最大規模(107万kW)の超々臨界圧(USC)石炭火力発電所であり、年間設備利用率を80%とした場合、1基で約569万トンのCO2を排出すると予測されている。木質バイオマス燃料を混焼(発熱量比で約17%)させても、従来の石炭専焼と比較して二酸化炭素排出量を年間で年間で約 90 万トン削減 することが可能というに過ぎず、その排出量は従来の石油火力よりも年間200万トン程度増加することになる。

本事業の運転開始が「電力需給の安定化に向けた供給力として貢献できる」としているが、2030年のエネルギーミックスおよび2050年実質排出ゼロ(ネットゼロ)の目標に向け、排出量の削減が急務であることを踏まえれば、排出係数の大きな石炭火力発電所の新規運転開始は許容できるものではない。日本は、今年6月のG7サミットの共同声明で石炭火力の「段階的な廃止」に合意しており、武豊火力5号の運転開始はこの合意に逆行するものである。また、武豊町は「ゼロカーボンシティ宣言」[3]を発表しているが、これとも整合しない。

気候ネットワークは、JERAの持株会社である東京電力HDと中部電力に対し、2050 年炭素排出実質ゼロへの移行における資産の耐性の評価報告の開示を求める株主提案を提出[4]し、両社との対話の中でネットゼロに向けた動きを加速するように求めてきたが、JERAに対しても石炭火力発電事業からの早期撤退および再生可能エネルギーによる電力供給の早期確保を求めていく。

参考

[1] JERAプレスリリース https://www.jera.co.jp/information/20220805_955

[2] 武豊火力発電所 リプレース工事概要 https://jera-taketoyo.com/pdf/TTG_pamphlet.pdf

[3] https://www.town.taketoyo.lg.jp/category_list.php?frmCd=7-9-8-4-0

[4] 【プレスリリース】国内外の環境NGOが国内4企業に株主提案(2022年4月13日)https://www.kikonet.org/info/press-release/2022-04-13/Shareholder-proposals-2022

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【プレスリリース気温上昇を加速させる新規石炭火力「武豊5号」の運開に抗議する(2022月8月7日)

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