2011年5月11日

菅首相の、エネルギー基本計画見直しの方向性を歓迎

気候ネットワーク 代表 浅岡美恵

10日、菅首相は記者会見(注1)で、エネルギー基本計画について、いったん白紙に戻して議論をする必要性を示し、省エネルギーと再生可能エネルギーを柱に据えて議論を進めたいという意向を発表した。また、地球温暖化問題も踏まえ、CO2の削減をしっかり進めていくことと同時に、見直しを図る方向性も明確にした。

気候変動問題の解決を図りつつ、原子力のリスクを低減し、持続可能な社会を築くために、エネルギー政策の見直しが必須であることにもはや議論の余地はない。菅首相による先日の浜岡原発の停止要請の判断および、今回のエネルギー政策の見直しの方針発表は、これから取るべき方向性として、歓迎したい。

 これまでエネルギー基本計画は、原発の新増設と稼働率の向上を中心に、化石燃料の継続的利用を前提として形作られてきた。原発依存の危うさ、気候変動のリスク、資源枯渇などの観点から根本的な問題が指摘されてきたにもかかわらず、経済産業省・資源エネルギー庁主導で決められるエネルギー政策は、国民的議論のないまま、原発と化石燃料依存の道へ突き進むものであった。そして、温暖化政策は、先行して決められたエネルギー政策を前提に議論され、縦割りのプロセスのために、温暖化防止の観点からエネルギー政策に切り込めない弊害もあった。

本来は遅きに失すると言わざるを得ないが、これを機にした抜本見直しは不可避である。そして、エネルギー消費の少ない仕組みを作り、必要なエネルギーは再生可能エネルギーでまかなうという、安全で安心な、持続可能なエネルギー社会を築かなければならない。9日にIPCCが公表した再生可能エネルギーに関する特別報告書(注2)も、再生可能エネルギーの大幅普及が可能であり、現実的であることを裏付けている。

気候ネットワークでは、4月18日に、ペーパー「“3つの25”は達成可能だ」を発表し(注3)、原子力へ依存せずに、CO2を減らしていくことが、震災復興と両立する中で可能であることを示した。その柱に、省エネを大胆に推進することと、再生可能エネルギーを大幅に増やすことを位置づけている。また、化石燃料利用は、石炭から天然ガスへシフトしながら、将来に向かって大幅に減らす方向性を示している。これからのエネルギー政策は、こうした方向性で、温暖化政策と一体的に、透明性を確保した開かれた場で公正に議論し、将来に禍根を残さない方向性を定めて行く必要がある。

菅首相が、昨日示した方向性を軸に、その具体化と実現へさらなるリーダーシップを図っていくことを望みたい。

(注1) 菅首相記者会見2011年5月10日
(注2) IPCC, Special report on renewable energy sources and climate change mitigation
(注3) 気候ネットワーク「“3つの25”は達成可能だ」

 

発表資料