国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22マラケシュ会議)が2016年11月7日から18日(19日未明)にかけて、北アフリカのモロッコの都市マラケシュにて開催されました。
COP22マラケシュ会議の概要
パリ協定の早期発効と「ルールブック」交渉
マラケシュ会議に先立ち、11月4日には、「パリ協定」が発効しました。パリ協定は、昨年2015年のCOP21パリ会議で採択された、世界の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることをめざす国際条約であり、現在はこれを実施に移すための詳細ルール(ルールブック)をめぐる交渉が行われています。マラケシュ会議では今後の作業の進め方に合意することがめざされていました。
マラケシュ会議の結果と今後
パリ協定が採択から1年足らずという異例のスピードで発効した祝賀ムードの中、交渉は比較的順調に進められました。パリ協定のルールブックをめぐっては、6つの議題にわかれて議論が行われ、2018年のCOP24を期限に合意することと、それまでの作業スケジュール(工程表)について合意されました。また、COP議長を務めたモロッコ政府より、各国に気候変動対策を呼びかける「マラケシュ行動宣言」が発出されました。今後は、工程表に沿って、パリ協定の実効性を高め、各国の目標や対策強化を促すことのできるルールブックを作成し、2018年までに合意することが課題です。
パリ協定への揺るぎない支持と加速するイニシアティブ
会期中、気候変動に懐疑的とされるトランプ氏が次期米国大統領に決まりましたが、会議の進行に悪影響はありませんでした。むしろ、「すでに発効したパリ協定の意義は揺らぐことはない」、「我が国はパリ協定のもと取り組みを続ける」との決意表明が多くの政府代表から聞かれました。また、マラケシュ会議では、パリ協定の採択と発効を受け、各国政府、地方自治体、ビジネスセクター、市民社会による気候変動対策や再生可能エネルギーのイニシアティブも数多く発表されました。
日本の課題
会議期間中の11月8日にパリ協定に締結した日本は、その出遅れを取り戻し、以下を通じてパリ協定の目標の達成に貢献し、国際的役割を果たしていく必要があります。
- 日本の長期低排出発展戦略の策定
- 国内の2030年までの排出削減目標の引き上げと政策措置の実施
- 原子力と石炭火力発電を推進する方針の抜本見直しと、実効的な政策措置の実施
ペーパー「COP22マラケシュ会議の結果と評価」全文(A4版・10ページ)
ペーパー「COP22マラケシュ会議の結果と評価」全文(A4版・10ページ)(2016/11/21)
COP22閉幕プレスリリース「COP22 歩みを始めたパリ協定 急がれる日本の中長期ビジョン、目標引き上げ」
【プレスリリース】COP22 歩みを始めたパリ協定 急がれる日本の中長期ビジョン、目標引き上げ(2016/11/18)
COP22マラケシュ会議の関連トピック
日本、世界で103番目に世界の排出をゼロにすることをめざすパリ協定を締結(11月8日)
米国と中国の締結から約2ヶ月が過ぎた11月8日、日本政府は国会でパリ協定の締結を承認し、受諾書を国連に提出。パリ協定を正式に締結しました。発効要件の達成、発効、COP22の開幕のいずれにも間に合わなかったことは残念ですが、パリ協定に参加し、排出ゼロをめざして温暖化対策を強化し続けることを約束したことは重要なステップです。パリ協定の内容に沿って、日本は今後、国内の排出削減目標や対策を見直し、さらに強化することが求められることになります。
日本、本日の化石賞を受賞(11月17日)
11月17日、マラケシュ会議において、気候変動交渉・対策の足を最も引っ張った国に送られる不名誉な賞「本日の化石賞」が日本に贈られました。その理由は、CO2やその他の大気汚染物質を大量に排出する石炭火力発電を国内外で強力に推進していること。世界有数の石炭推進国になってしまった日本に、国際社会の厳しい目が注がれています。
会議場通信Kiko COP22 CMP12 CMA1
温暖化問題の国際交渉の状況を伝えるための会期内、会場からの通信を発表しています。
会議場通信 Kiko COP22 CMP12 CMA1 No.4(2016年11月17日発行)
- マラケシュから、新しい脱炭素時代への確かな歩みが始まる
- 高いモメンタム
- 強いコミットメント
- 確かな歩みの始まり
- 山本環境大臣、パリ協定発効を歓迎 問われる国内対策の見直し
- 現実的な目標になりつつある「再生可能エネルギー100%」
- 日本政府とJBICの石炭支援に異議あり!
- ドイツ、米国などがパリ協定のゴールに向けた長期戦略を発表。さあ、日本は?
会議場通信 Kiko COP22 CMP12 CMA1 No.3(2016年11月15日発行)
- パリ協定の詳細ルールの交渉の進め方に合意、会議は閣僚級へ
- パリ協定特別作業部会(APA)、結論を採択
- 第1回パリ協定締約国会合(CMA1)、開幕。お祝いムードに
- 山本環境大臣、ようこそCOP22マラケシュ会議へ
- やっぱり石炭は大問題!~3つの新しいレポートが警告
- 日本政府とJBICの石炭支援に異議あり!
会議場通信 Kiko COP22 CMP12 CMA1 No.2(2016年11月12日発行)
- パリ協定は発効済み!脱炭素化の流れは止まらない
- 米国大統領選挙のショックをよそに淡々と進む議論
- 2020年までの対策強化!促進的対話
- COP23:議長国フィジー、ドイツのボンで開催予定
- 炭鉱にいる人たちへ:石炭を掘るのはやめよう(11/8eco抄訳)
- アメリカ(11/10 eco抄訳)
- トランプ氏勝利で日本はどうなる?
- 新パンフレット「パリ協定で世界が変わる!」発行!
会議場通信 Kiko COP22 CMP12 CMA1 No.1(2016年11月9日発行)
- COP22マラケシュ会議、開幕-パリ協定の時代がはじまった
- - パリ協定の祝賀ムードの中、スムーズに始まった交渉
- 新しい事務局長・エスピノーサ氏の横顔
- モロッコ・マラケシュの会議場
- パリ協定発効!「日本を含めて」103の国・地域が締結済み
- 「2018年促進的対話」は各国の対策を促進できる?(11
/7 eco抄訳) - 気候資金なくしてパリ協定の目標達成はあり得ない
*Kikoに関するお問合せは、メール:iyoda@kikonet.org、現地携帯:+212-6-5367-4385(伊与田)までお願い致します。
参考ガイド
【パンフレット】温暖化対策の新ルール「パリ協定」で世界が変わる!パリ協定が本当にすごい5つのポイント
世界の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることをめざすパリ協定。あまり日本では語られることのない「本当にすごい」ポイントをわかりやすく、最新のデータをもとに紹介しています。また、日本がパリ協定を実施するにあたっての課題や、市民や自治体、企業が求められるアクションについても簡単に紹介しています。
パンフレット「パリ協定が世界を変える。パリ協定が本当にすごい5つのポイント」