2005年11月15日
ブッシュ大統領の京都訪問にあたって(声明)
気候ネットワーク 代表 浅岡 美恵
京都は日本の千年の都であるとともに、今や、京都議定書の誕生の地として世界に記憶される地である。その京都に、本日、ブッシュ米国大統領を迎える。この訪問がブッシュ政権の気候政策の転換点となってこそ、歓迎される。日本政府もその役割を負っている。
今日、人為的起源による二酸化炭素の排出は自然界の吸収量の2倍を超えており、気候を安定化させるためには、少なくとも現状から排出を半減させることが必要である。しかも、人類に危険な干渉を及ぼさない水準と速度で気候を安定化させなければならないことを、私たちは京都会議以降の、とりわけ近年の異常気象の頻発やこの夏にニューオリンズなどを襲ったハリケーンによる被害等の経験からも学んできた。
私たち日本の市民は2005年2月16日に、生態系が適応できる水準で気候を安定化させるという気候変動枠組条約の目的の達成に向けて、人類社会の取り組みの具体的な第一歩として踏み出した京都議定書の発効を祝い、京都での約束を果たしていくための決意を新たにした。京都府・市など地方自治体、府市民も、今、京都議定書の名に恥じることなく自らの果たすべき役割に取り組みつつある。米国においても州などでは刮目すべき取組みがあり、国際社会は、間もなくモントリオールで、京都議定書の第2ステージについての協議を開始する。
しかしながら米国は、気候変動枠組条約を批准し、京都議定書において90年の水準から7%削減するとの約束を受け入れたものの、ブッシュ政権において京都議定書からの離脱を宣言し、未だ批准を了していない。このことは、その余の世界にとって誠に深い憂慮となっている。世界の二酸化炭素の排出量の4分の1、先進国の排出量の36%を占め、一人当たり排出量において日本の2倍、中国の9倍にも及ぶ米国が、京都議定書の目標を率先して達成すべきことはいうまでもない。地球温暖化に国境はない。すべての国はすべての国の国民のために、気候変動枠組条約と京都議定書を遵守し、国際信義のもとに温暖化の抑制に確実に歩をすすめなければならない。人類社会の発展も希望も、その方向にのみ見出すことができる。
ブッシュ大統領を迎える迎賓館は日本文化の粋を極めた空間であり、そのすべてが千年来の京都の四季と気候に由来する。しかし、今年6、9及び10月の世界の平均地上気温は最高記録を更新し、既に四季の姿も変容している。ブッシュ大統領は世界の気候の危機をくい止めるべき責務を、ここ京都で思い起こし、実行に移すべきである。日本を含むその余の世界は、排出削減の先導者であるべき米国がその責務を果たすまで、座して無為に時を過ごすことがあってはならない。
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