2007年1月30日
大阪地裁、本日、温暖化防止情報開示訴訟で、?
住友金属工業、神戸製鋼、カネカ、花王の情報開示を命じる!
本日午前10時、大阪地裁は国に対し、省エネ法による住友金属工業和歌山製鉄所など4事業所の経済産業省への電力及び燃料別のエネルギー使用量の定期報告書(2003年度)についての非開示処分を取り消し、開示を命じた。昨年10月5日の名古屋地裁に続いて開示を命じたものであり、わが国の温暖化政策の強化を情報面から大きく後押しするものとして、歓迎する。 地球温暖化は加速的に進行し、世界中で異常気象が頻発している。京都議定書第1約束期間(2008年~2012年)を目前に、わが国の排出量は90年比で8.1%(2005年度)も増加している。今、審議会で、京都議定書目標達成計画の評価・見直し中であるが、わが国の排出量の6割を占める大規模CO2排出事業所の省エネ法に基づくこれらの情報を活用したプロセスとなっていない。国は控訴することなく開示し、これらの情報を基礎に温暖化政策を見直し、国内排出量取引など実効性のある排出削減の政策措置を速やかに導入すべきである。
情報開示請求と本訴の提起
(1)エネルギー消費量の情報開示請求
気候ネットワークでは、2004年6月、情報公開法に基づき、省エネ法第1種事業所の2003年度エネルギー消費(熱と電気)に関する定期報告における燃料別使用量の開示を求めた。対象事業所の85%(4280事業所)が開示されたが、残り15%(753事業所)は情報公開法5条2号イに該当するとして、開示されなかった。
(2)東京・名古屋・大阪地裁において訴訟を提起
大規模エネルギー消費事業所の定期報告情報は、実効性ある温暖化対策に不可欠である。そこで、気候ネットワークでは、これら不開示決定に対して審査請求を行うとともに、モデル訴訟として、2005年7月に近畿経済産業局管内の7の代表的大口排出事業所について大阪地裁に、また、中部経済産業局管内の9事業所についての名古屋地裁に、さらに2005年8月にその余の経済産業局管内の12事業所について東京地裁に、不開示決定処分の取消と開示を求める訴訟を提起した(わが国初の地球温暖化防止訴訟)。
訴訟中に92%まで開示
本件提訴後の2006年5月~7月にかけて、経済産業省は、340事業所について追加「開示」した。よって、2003年度定期報告対象事業所(5033事業所)の約92%の事業所(4620事業所)について開示されたが、なお8%が不開示である。当該事業所が開示を承諾しなかったためである。特に、高炉による製鉄所(17製鉄所)は全事業所について非開示であり、苛性ソーダ工場など一部の化学品工場も、非開示が今も多い。
事業所の燃料別消費量情報は温暖化防止政策の強化に不可欠!
経済産業省の不開示処分の理由は、定期報告にかかる燃料別のエネルギー消費量が開示されると、当該事業所は、①製品当たりのエネルギーコストの推計ができ、製造コストの推計も可能となり、②当該事業所のエネルギー効率化水準を知られ、③燃料等の価格交渉等において支障を来すおそれがあり、④製造技術が推知されるおそれがある等、競争上不利な立場に置かれることになるというものである。事業所で製造する製品は多種にわたり、同一業種の事業者の多数が開示に応じていることからも、その理由がないことは明らかである。名古屋地裁は、昨年10月5日に国の証人尋問請求を採用せず、開示に応じない事業者の正当な利益が害される蓋然性はないとして開示を命じた(現在、控訴中)。大阪地裁は、国の申請による証人尋問を行った上で、本日、情報公開法5条2号イの非開示情報にあたらないことを確認したもので、その意義は大きい。?
地球温暖化の進行は加速的となっている。気温の上昇を2℃未満に抑制し、気候を安定化させていくためには、CO2などの温室効果ガス排出を早期に半減しなければならない。第1約束期間(2008年~2012年)の先進国の削減目標数値を合意した京都議定書(1997年採択、2005年発効)はその第1歩である。日本の数値目標は90年比で6%削減であるが、2005年において8.1%も増加している。現在、中央環境審議会及び産業構造審議会の合同部会で経団連自主行動計画を含む京都議定書目標達成計画の評価・見直し中であるが、わが国の上位約200の大規模エネルギー消費事業所からのCO2排出量は、CO2総排出量の2分の1を占める。うち、高炉による17製鉄所だけで13%にも及ぶ。こうした事業所での確実な省エネの推進とCO2 排出の多い石炭やコークスなどから天然ガスへの燃料転換を推進するために、本件定期報告にかかる燃料別の消費量データは極めて重要な基礎的情報である。しかしながら、本訴において開示を求めている情報は審議会での審議で全く活用されておらず、業界の自主行動目標設定及び検証における透明性を欠いている。国は、本判決に従って開示し、国内排出量取引制度の導入など実効性ある温暖化対策の策定・実施を加速すべきである。
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