4月10日、気候ネットワークは、住友商事株式会社ならびに四国電力株式会社が計画している「(仮称)仙台高松発電所建設計画に係る環境影響評価方法書」に対する意見書を提出しました。

「(仮称)仙台高松発電所建設計画に係る環境影響評価方法書」に対する意見書

<意見1: 石炭を燃料とする問題>
意見:大気汚染物質を排出し、CO2を大量に排出する石炭を燃料とする火力発電所の建設には反対である。

理由:燃料を石炭にすることは、周辺への大気汚染に加え、CO2の大量排出によって気候変動に甚大な影響を及ぼし、施設の稼働そのものが著しく環境を破壊するものである。また、石炭火力発電は今後、気候変動対策の強化や市場動向の変化、再生可能エネルギーなどの他の電源との競争によって採算が取れなくなり、座礁資産となる可能性が指摘されている。最近では、関西電力が気候変動対策等を理由に兵庫県赤穂市の火力発電所の燃料を石炭に転換する計画を断念したことを受け、環境大臣がその決定を歓迎し、「石炭火力は将来性に乏しい」として他事業者にも石炭火力発電所建設の再考を促している。
方法書では木質バイオマスを混焼することから「再生可能エネルギーの普及」や「消費者に対する選択肢の提供」などのエネルギー需給課題への対応を図ると記載されているが、本計画は実質的に石炭火力発電所であり、これは詭弁である。さらに、小規模な発電所とすることで地産地消型とするとしているが、東北電力への売電はFIT分の3割程度で残りは首都圏への売電が計画され、地産地消とはかけ離れたものである。電力輸送ロスの低減によるエネルギー効率の向上を目指すとする主張とも矛盾する。
こうした状況からも、時代錯誤な石炭を燃料とする火力発電所を新たに建設することは 認められない。本計画では運転開始時期を 2021年としているが、2050年を超えてCO2 排出を固定化させかねない本計画は撤回し、再生可能エネルギーへのシフトを求める。

<意見2: 低炭素社会実行計画における目標値を大幅に超過する排出源単位>
意見:バイオマスを混焼してもCO2排出原単位が0.6 kg-CO2/kWhと大きく、大量の
CO2を固定化するため、事業は実施するべきではない。

理由:気候変動対策の観点から見れば、今後建設される発電所は、少なくともLNG火力が達成している約0.35kg-CO2/kWhの水準を満たすべきである。本計画では、木質バイオマスとの混焼によってCO2の排出源単位を低減するとしているが、予測される原単位は0.60kg-CO2/kWhとLNGの約1.7倍にのぼる。さらに「低炭素社会実行計画」で示された「2030 年度に排出係数 0.37kg-CO2」とする目標に対しても約1.6 倍と大きく上回り、目標の達成を困難にするものである。このように本計画における排出原単位は非常に大きく、大量の CO2 排出を固定化する事業は実施するべきではない。
しかも、0.6 kg-CO2/kWhを小さく見せるために、説明会では磯子石炭火力発電所の0.81 kg-CO2/kWhをあげて、この排出係数を下回ると紹介されていた。このように数字を小さく見せるような数字のマジックを使うべきではなく、業界の目標値に比べていかに大きい値なのかを示すべきである。

<意見3: 「パリ協定」及び「日本の長期目標」との整合について>
意見:本事業の「パリ協定」や国の長期目標2050年80%との整合を示すべきである。

理由:2016 年 11 月、地球の気温上昇を 1.5~2℃未満にすることを目標とし、今世紀後半には CO2 排出を実質ゼロにすることとしたパリ協定が発効した。本計画では、同規模の発電所では最高の発電効率を達成する技術を採用するとされているが、研究機関 Climate Analytics によるレポートでは、パリ協定の達成のためには、日本は2030 年までに石炭火力発電所を無くする必要があるとされている。
また日本政府は、第四次環境基本計画(2012年4 月27日閣議決定)において、2050年に温室効果ガス排出量を80%削減させる目標を掲げている。しかし、本計画が実行されれば、排出は減らず、むしろ増えることになる。
新たな発電所が少なくとも30年~40年程度稼働することを考えると、「パリ協定」の合意に反し、国の目標とも整合しないため、本事業の正当性は認められない。

<意見4: 温室効果ガス等に係る予測の手法について>
意見:二酸化炭素の排出について、「実行可能な範囲」で環境負荷が「回避また又は低減」されているかの具体的判断基準を示すべきである。

理由:評価の手法として、「二酸化炭素の排出の削減に対して保全対策等の配慮が適正になされ」、「実行可能な範囲で回避又は低減されているか否かを検討する」とされている。CO2を大量に排出する石炭火力を選択すること自体が、環境負荷を回避・低減できていないといわざるを得ないが、「実行可能な範囲」で環境負荷が「回避また又は低減」されているかをどのように判断するのか、基準を示すべきである。また同様に、東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議取りまとめとの整合性についても、判断基準を示すべきである。
予測の手法としては、発電所の稼働に伴うCO2年間排出量と原単位を算出するとしている。準備書においては、使用する石炭種別や設備利用率など、算出の前提とする条件を明らかにすることを求める。また、予測対象時期とされている、発電所の稼働が「定常状態となる時期」とは、具体的にどのような時期を想定しているのか明示するべきである。さらに予測には、設備利用率の低下や石炭種の変更、経年変化による原単位の悪化についても明らかに することを求める。また、CO2に関連するこれらの情報について事後調査を実施し、実測値を公表することを求める。

<意見5: バイオマス利用について>
意見:輸入木材によるバイオマス利用は①海外の森林破壊に繋がりかねないこと、②調達輸送段階でもCO2を出すこと、③本来広げるべき再エネ導入を抑制しかねないこと、から反対である。

理由:石炭の使用量を少なくするためにバイオマスを混焼することは一見環境に配慮しているように見えるが、本件は決して持続可能な事業とは言えない。バイオマスの活用を、東北地方の間伐材など地元の森林保全に還元できるような形で調達するのであれば持続可能と言えるが、本事業は輸入木材を利用するということで森林破壊や輸送時CO2排出などの面からも問題がある。
また、燃料の3割がバイオマス利用で、その分は再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)を活用して東北電力に売電するとしているが、その分は賦課金として東北電力利用者に上乗せされることになるが、こうした「再エネ」は市民が純粋に望む再エネ普及の姿ではなく、再エネ賦課金として上乗せすることにも反対である。
そもそも石炭バイオマス混焼のバイオマスをFITの対象としている制度そのものが、今回のように石炭火力を推奨することにもつながり問題である。現状の制度下で、バイオマス混焼のバイオマス分を東北電力に売ることは、本来広げるべき風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーの抑止にもつながりかねず非常に問題である。

<意見6: 大気汚染の影響>
意見:大気環境への影響について、水銀、PM2.5、光化学オキシダントを含めた影響予測を行い、とりわけ近隣の学校や病院福祉施設への影響、蒲生干潟など自然環境への影響を評価するべきである。

理由:本計画の計画地を中心とした約10km四方の範囲には、幼稚園・小中高校・大学が合計51ヶ所、病院6ヶ所、保育園・こども園が合計20ヶ所、福祉施設が82ヶ所存在すると言われる。石炭火力発電所の稼働は、大気汚染を原因とする健康被害を引き起こしうることから、大気環境への影響は慎重に考慮しなければならない。方法書によれば、二酸化窒素(施設の稼働に関して)、硫黄酸化物、浮遊粒子状物質、有害物質、微小粒子状物質に関しては、計画地内の一地点を調査し、予測にあたっては予測地点を設定せず、計画地から半径10kmの範囲内とするのみであるが、本計画による大気汚染の危険性を鑑みれば詳細な調査や予測が必要である。
また、計画地の約2.5kmに近接する蒲生干潟をはじめ、周辺約10km四方の範囲には、県立自然公園松島や、県自然環境保全地域、国や県の天然記念物指定を受けている樹木などが存在し、これらへの影響も懸念される。
仙台パワーステーションが計画されていることを踏まえ、個別の事業における排出量や影響のみではなく、他事業を含めた累積的な影響を鑑みたうえで長期的な健康影響を評価するべきであり、事業の見直しをすることが妥当である。

<意見7: 環境基本計画等との整合性>
意見:「ひとが輝く杜の都仙台総合計画2020」では、宮城野区における主な施策の基本方向の一つに「豊かな水辺環境の創出」を図ることがあるが、本計画は蒲生干潟などへの影響が懸念され、現在の環境を損なう恐れがあることから、計画との整合性を持たない。

<意見8: 住民の反対>
意見:本計画の近接区域で計画されている石炭火力発電所「仙台パワーステーション」に対しては、気候変動や健康影響の懸念から住民の強い反対があり、本計画に対しても同様の反対が起こることは想像に難くない。事業者はこうした声に真摯に耳を傾け、事業を再考するべきである。

<意見9: 情報公開について>
意見:環境アセスメントにおいて公開される方法書等は、縦覧期間が終了してもインターネット上で閲覧できるようにするべきである。

以上

意見書

「(仮称)仙台高松発電所建設計画に係る環境影響評価方法書」に対する意見書

関連図書

「(仮称)仙台高松発電所建設計画に係る環境影響評価方法書」