2月13日、気候ネットワークは、中部電力株式会社が計画している「武豊火力発電所リプレース計画 環境影響評価準備書」に対する意見書を提出しました。

武豊火力発電所リプレース計画 環境影響評価準備書に対する意見書

意見1:石炭を燃料とする問題
燃料を石炭にすることは、周辺への大気汚染に加え、CO2の大量排出によって気候変動に甚大な影響を及ぼし、施設の稼働そのものが著しく環境を破壊するものである。また、石炭火力発電は今後、気候変動対策の強化や市場動向の変化、再生可能エネルギーなどの他の電源との競争によって採算が取れなくなり、座礁資産となる可能性が指摘されている。最近では、関西電力が気候変動対策等を理由に兵庫県赤穂市の火力発電所の燃料を石炭に転換する計画を断念したことを受け、環境大臣がその決定を歓迎し、「石炭火力は将来性に乏しい」として他事業者にも石炭火力発電所建設の再考を促している。
また本計画は、平成28年まで稼働していた3機(2~4号機)、合計112.5万kWの発電所を107万kWのもの(5号機)にリプレースする計画である。本準備書によれば、5号機では年間設備利用率80%、年間発電電力量は約75億kWhの想定となっているが、現状として比較されている2~4号機では、3機とも年間設備利用率45%、年間発電電力量が合計で年間約45億kWhと5号機の想定よりも大幅に少なく、新たに107万kWもの大規模な発電所を建設する必要性がない。仮に本計画を実施することに伴って、他の発電所の廃止を行う、または電力需要の大幅な増加を見込んでいるなどの背景があるのであればその根拠や詳細を示すべきである。
こうした状況からも、時代錯誤な石炭を燃料とする大規模な火力発電所を新たに建設することは認められない。本計画では運転開始時期を2022年としているが、2050年を超えてCO2排出を固定化させかねない本計画は撤回し、再生可能エネルギーへのシフトを求める。

意見2:LNG火力及び低炭素社会実行計画における目標値の約2倍にのぼる排出源単位
気候変動対策の観点から見れば、今後建設される発電所は、少なくともLNG火力は達成している約0.35kg-CO2/kWhの水準を満たすべきである。本計画では、USCを採用することによってCO2の排出源単位を低減するとしているが、予測される原単位は0.758kg-CO2/kWhとLNGの約2倍にのぼる。ましてやこの数値は、既存設備のCO2排出源単位(2号機0.63kg-CO2/kWh、3号機0.632kg-CO2/kWh、4号機0.63kg-CO2/kWh)と比べても約20%も悪化するものである。さらに「低炭素社会実行計画」で示された「2030年度に排出係数0.37kg-CO2」とする目標に対しても約2倍と大きく上回り、目標の達成を困難にするものである。また、バイオマス混焼を計画するとされているが、燃料や量は未決定であり、CO2削減効果は明らかではない。
このように本計画における排出原単位は非常に大きく、本計画が稼働すれば、年間約569万tものCO2が30~40年にわたって排出されると見られ、このように大量のCO2排出を固定化する事業は実施するべきではない。

意見3:「パリ協定」及び「日本の長期目標」との整合について
2016年11月、地球の気温上昇を1.5~2℃未満にすることを目標とし、今世紀後半にはCO2排出を実質ゼロにすることとしたパリ協定が発効した。本計画では、施設の稼働による温室効果ガス等(二酸化炭素)への環境影響を低減するために環境保全措置を講じるとあるが、研究機関Climate Analyticsによるレポートでは、パリ協定の達成のためには、日本は2030年までに石炭火力発電所を無くする必要があるとされている。
また日本政府は、第四次環境基本計画(2012年4月27日閣議決定)において、2050年に温室効果ガス排出量を80%削減させる目標を掲げている。しかし、本計画が実行されれば、排出は減らず、むしろ増えることになる。
新たな発電所が少なくとも30年~40年程度稼働することを考えると、「パリ協定」の合意に反し、国の目標とも整合しないため、本事業の正当性は認められない。

意見4:低炭素社会実行計画について
電気事業連合会加盟10社、電源開発株式会社、日本原子力発電株式会社及び一部の新電力で構成される電気事業低炭素社会連合会に参加し、低炭素社会実行計画の目標達成を目指すとしているが、事業者ごとに排出原単位目標をどのように達成するべきかを説明するべきであり、本計画で少なくとも天然ガス火力発電の排出源単位から超過する二酸化炭素排出分にどう対応するのか明確に示すべきである。

意見5 :情報公開について
環境アセスメントにおいて公開されている準備書は、縦覧期間が終了しても閲覧できるようにするべきである。縦覧期間後に非開示とする理由を企業の著作権保護のためというのは理由にならず、一般的な書物で著作権があるからといって開示すらしないなどという書籍はありえない。そもそも環境アセスメントは住民とのコミュニケーションツールであり、できるかぎり住民に開かれたものであるべきである。縦覧期間後の閲覧を可能にするほか、縦覧期間中もコピーや印刷を可能にするなど利便性を高めるよう求める。

以 上

意見書

武豊火力発電所リプレース計画 環境影響評価準備書に対する意見書

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