IPCC第五次評価報告書統合報告書発表にあたって

気候変動の危機回避に向け残された時間はごく僅か
日本も脱化石燃料で再エネ100%に向けた舵切りを

認定NPO法人気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵

 

 10月27日から31日、デンマーク・コペンハーゲンでIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第40回総会が開催され、第五次評価報告書統合報告書が11月2日に発表された。報告書はこれまでの世界中の科学者による包括的な知見が集約され、第1~第3作業部会の報告書を総括する形でまとめられた。そして、気温上昇、海面上昇、海氷の減少、海洋の酸性化などの影響が予想以上に早く起きており、世界中の陸域・海洋に影響を及ぼしていることが示された。

 また、気候変動へ適応することが極めて重要になってくるが、適応策だけでは不十分であり、気候変化の影響を回避するためには急速に温室効果ガスの排出量を削減することが不可欠であることを結論づけている。そして、地球の平均気温の上昇を2℃未満に抑えるためには、二酸化炭素の排出量を40~70%削減すること、2100年には排出をゼロもしくはそれ以下にする必要があるとされた。

 今年9月23日に各国首脳陣を招待して「気候サミット」を開催した潘基文国連事務総長は、11月2日のIPCCの記者会見に参加し、「世界のリーダーが行動しなければならない。これは時間との戦いだ」と政治家たちに気候変動に対する政策決定の意志を示すよう求めた。

 

 しかし、昨年9月からIPCCの報告書の改定作業が行なわれてきた間、日本政府の対応は非常に後ろ向きな対応であったと言わざるを得ない。2020年までに1990年比で25%削減するという気候変動目標を大幅に下げた「2020年に2005年比3.8%削減(90年比3.1%増加)」という暫定目標を示し、環境アセスメントを簡素化して国内の石炭火力発電所の建設計画を推進し、さらに海外にまで石炭火力発電所を輸出するために財政投融資を支援する施策を打出してきた。その上、再生可能エネルギーは買取制度の導入後、電力会社数社の買取拒否に繋がりかねない事態が起き、再エネの導入計画が止まっている地域がある。

 今回のIPCC第五次評価報告書統合報告書の発表を受け、日本政府に対しては原発依存・化石燃料依存の気候変動・エネルギー政策を根本から見直し、再生可能エネルギーの大幅な導入と大胆な省エネの推進政策に転換して実行すること、そして2℃未満の目標を達成するための2020年以降の国際枠組合意に貢献すること、野心的な対策へと舵切りする意志決定をすることを強く求めたい。

 

参考リンク

IPCC第5次評価報告書 統合報告書の記者会見資料

IPCC第5次評価報告書関連の参考リンク(第1作業部会、第2作業部会、第3作業部会、統合報告書)

 

声明:ダウンロード用PDF

声明「IPCC第五次評価報告書統合報告書発表にあたって 気候変動の危機回避に向け残された時間はごく僅か 日本も脱化石燃料で再エネ100%に向けた舵切りを」(PDF版)

 

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