【共同声明】NZIA脱退した大手3損保は中期目標を期限内に公表せず
~早急に保険引受ポートフォリオ排出量の中期目標の設定を!~
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
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日本の大手損害保険会社3社(東京海上ホールディングス株式会社、SOMPOホールディングス株式会社、MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社)は、5月に相次いで国連主導のNet-Zero Insurance Alliance(以下、NZIA)から脱退したが、NZIA加盟中に求められていた中期目標の公表期限(7月末)を踏襲していないことが明らかとなった。2050年にネットゼロを目指すとした3社の気候コミットメントに疑義を持たざる得ない事態となっており、早急に適切な中期目標を発表するべきである。
保険業界における2050年までの温室効果ガス排出ネットゼロを目指す国連主導の国際イニシアチブであるNZIAは、加盟保険会社に対して保険・再保険引受ポートフォリオの排出量ネットゼロ達成に向けた中期目標を設定することを促す目標設定プロトコルのバージョン1.0(NZIA Target-Setting Protocol Version 1.0(1))を、2023年1月に公表した。NZIAの加盟企業は、2023年7月末日までに中間目標の設定と開示することを求められていた。
しかし、保険業界間の連携が保険料の上昇を招いていると主張する米国の保守派議員によって、今年春に米国で反ESG運動が加速し、5月に米23州の司法長官らがNZIAが独占禁止法に抵触する可能性があると警告する内容の文書を保険会社に送付したことを受け、NZIAの議長であったアクサやアリアンツを含む加盟企業が相次いで脱退し、5月下旬には日本の大手損害保険会社3社も脱退した。東京海上及びMS&ADは脱退に際してリリースを発表しており、NZIA脱退後も2050年ネットゼロの実現に向けて取り組むと述べている(2)。SOMPOホールディングスはニュースリリース等ではNZIA離脱を公表していないが、メディア取材に対して脱退を認めている。
日本の大手損保3社は、気候変動対策に真摯に取り組むのであれば、NZIA脱退後も引き続きNZIAの目標設定プロトコルを踏襲して、早急に中期目標を設定するべきである。なお、仏保険大手のアクサは5月にNZIAを脱退したが、その後、2030年を目途とした保険引受ポートフォリオの中期目標を発表している(3)。
また、中核となる企業が脱退したことでNZIAが事実上崩壊している今、NZIAに代わり、保険会社に移行計画の策定を促す国際的枠組みが必要である。今後は世界の国・地域の保険監督当局から構成される保険監督者国際機構(International Association of Insurance Supervisors、以下IAIS)が移行計画策定の枠組みを促進することが期待される。IAISは今年11月に東京で金融庁がホストとなって年次総会を開催する予定である(4)。金融庁は、IAISにおいて保険会社の移行計画策定を促す枠組みが作られるよう、リーダーシップを持って取り組むべきである。
注釈
- https://www.unepfi.org/wordpress/wp-content/uploads/2023/01/NZIA-Target-Setting-Protocol-Version-1.0.pdf
- 東京海上のリリース:https://www.tokiomarinehd.com/release_topics/topics/2023/l6guv3000000h4qa-att/20230529_NZIA_j.pdf
MS&ADのリリース:https://www.ms-ad-hd.com/ja/news/irnews/irnews-20230529/main/00/link/20230529_Net-Zero%20Insurance%20Alliance.pdf - https://www-axa-com.cdn.axa-contento-118412.eu/www-axa-com/6caad3e0-bf63-48b5-a3c4-78c904b26fbb_axa_climate_and_biodiversity_report_2023_va.pdf
- https://www.iaisweb.org/news-and-events/2023tokyo/
本件に関する問い合わせ
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)田辺有輝/喜多毬香
tanabe@jacses.org / kita@jacses.org