【NGO共同声明】

石炭火力発電のバイオマス混焼および専焼化はグリーンウォッシュ

気候変動を加速させ、森林生態系を破壊する

現在、石炭火力発電でのバイオマス混焼およびバイオマス専焼転換が急速に進められている。既に大手電力の石炭火力の約半数にあたる31基が混焼を実施している。また、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が認定するバイオマス発電設備のうち少なくとも40件が石炭火力のバイオマス混焼設備であり、うち35件は非効率石炭(亜臨界圧(Sub-C)もしくは超臨界圧(SC))であることが分かっている。また、グリーン・トランスフォーメーション(GX)実現の政策として、石炭火力自家発電所等の燃料転換においてバイオマス混焼が含まれている

木質ペレットは、石炭火力のバイオマス混焼で利用される主な燃料の一つである。FIT制度によるバイオマス発電の普及により、木質ペレットの輸入量は過去10年で61倍に増え、2022年には約441万トンに達した。石炭火力発電の設備容量は一般的なバイオマス発電よりも桁違いに大きいため、石炭火力による混焼の促進に伴い、木質ペレット輸入量のさらなる増加が予想される。木質ペレット需要の増加は、直接的・間接的に関わらず、森林へのさらなる負荷となる。

私たち気候変動および森林問題に取り組む環境NGOは、以下の理由で、石炭火力発電のバイオマス混焼及びバイオマス専焼への転換に反対する。

1.気候変動を加速させる

1)バイオマスを燃焼するとCO2が排出される

バイオマス発電は火力発電であり、バイオマス燃料の燃焼により大量のCO2が大気中に排出される。木材の炭素排出係数は石炭よりも大きいにも関わらず、日本政府は「カーボンニュートラル」とみなしており、燃焼時のCO2排出量は計上されていない。また、バイオマス燃料を生産するために森林が伐採された場合、森林が長期にわたって樹木や土壌などに蓄えてきた炭素が大気中に放出される。伐採された森林が元の状態に回復する保証はなく、回復したとしても、大気中に放出されたCO2を回収し終えるまでには、数十年から数百年の長い年月を要する。これに加えて、伐採・加工・輸送の各段階において、化石燃料由来のCO2が発生する。日本は木質ペレットの多くを輸入に依存しており、輸送においても大量のGHGを排出する。これらライフサイクル全体におけるCO2排出と森林の回復に要する年月および森林が回復しない可能性を度外視し、バイオマス発電を「カーボンニュートラル」とみなすことは、気候変動を加速させる大きなリスクである。

2)石炭火力発電所を延命させる

パリ協定の1.5度目標を達成するためには、OECD諸国は2030年までに石炭火力を廃止する必要がある。しかし、経済産業省は、石炭火力の発電効率の算出にあたり、石炭投入量からバイオマス混焼分を控除する計算式を用いることで、見せかけの高効率化による非効率石炭の延命を行っている。専門家の試算では、バイオマスを混焼しない石炭火力発電所のCO2排出係数は0.84kg-CO2/kWhであるのに対し、発電効率38%の石炭火力発電所がバイオマスを5%混焼する場合には0.85kg-CO2/kWhへと増えることが明らかになっている。さらに、石炭火力のバイオマス専焼への転換および改修の促進も検討されているが、その場合のCO2排出係数は1.03kg-CO2/kWhとなる。

2.森林生態系を破壊する

大規模バイオマス発電や石炭火力のバイオマス混焼に使われる木質バイオマス燃料は、大部分が東南アジアや北米から輸入されている。今後、大量のバイオマス燃料を供給しようとすれば、森林伐採の圧力が高まる。バイオマス燃料生産による森林減少・劣化や生物多様性喪失などの生態系への影響は計り知れない。木質バイオマス燃料を生産するために北米の天然林が皆伐される事例が報告されている。破壊された森林生態系がその機能を回復することは容易ではなく、質的に再び同じ生態系に回復することは不可能である。FIT制度の事業計画策定ガイドラインは、木質バイオマス燃料の持続可能性に関する明確な基準がなく、FIT以外のバイオマス発電には適用されない。生態系や生物多様性を脅かすバイオマス発電は、環境への負荷低減を掲げる再生可能エネルギーの根幹を揺るがすものだ。

よって、私たちは日本政府に以下を求める

  • バイオマス混焼の有無に関わらず、一刻も早く脱石炭を達成すること
  • バイオマス混焼・専焼に対する支援を行わないこと
  • 廃棄物以外の燃料を使うバイオマス発電を再生可能エネルギーの対象から外し、補助金等による支援を行わないこと
  • バイオマスの燃焼段階のCO2排出を発電所ごとに計上するよう義務づけること
  • バイオマス燃焼のCO2排出を消費国がカウントし、自国の炭素勘定に含めること

以上

連名団体 (90団体)

国際環境NGO FoE Japan

日本

国際環境NGO グリーンピース・ジャパン

日本

ウータン・森と生活を考える会

日本

気候ネットワーク

日本

地球・環境人間フォーラム

日本

熱帯林行動ネットワーク

日本

特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所

日本

「環境・持続社会」研究センター

日本

Climate Action Network Japan(CAN-Japan)

日本

特定非営利活動法人 地球環境市民会議(CASA)

日本

国際青年環境NGO A SEED JAPAN

日本

国際環境NGO 350.org Japan

日本

Fridays For Future Sendai

日本

Forests, Climate and Biomass Working Group

- Environmental Paper Network

インターナショナル

Mighty Earth

アメリカ

350 Eugene

アメリカ

350 Triangle

アメリカ

AbibiNsroma Foundation

ガーナ

Australian Forests and Climate Alliance

オーストラリア

Biofuelwatch

イギリス/アメリカ

Blue Dalian

中国

Castlemaine Residents Against Biomass

オーストラリア

Center for Biological Diversity

アメリカ

Central California Environmental Justice Network

アメリカ

Coast Range Association

アメリカ

Coastal Plain Conservation Group

アメリカ

Comite Schone Lucht | Clean Air Committee NL

オランダ

Community Partners Across the South

アメリカ

Conservation North

カナダ

Consumers' Association of Penang

マレーシア

De Bomenbond

オランダ

De Klimaatcoalitie

オランダ

Doctors and Scientists Against Wood Smoke Pollution (DSAWSP)

アメリカ

Dogwood Alliance

アメリカ

Earth Action, Inc.

アメリカ

Earth Neighborhood Productions

アメリカ

EARTHDAY.ORG

アメリカ

EDSP ECO

オランダ

Endangered Species Coalition

アメリカ

Environment East Gippsland inc

オーストラリア

EPIC- Environmental Protection Information Center

アメリカ

Federatie tegen Biomassacentrales

オランダ

Fern

EU

FIAN Sri Lanka

スリランカ

Forest Watch Indonesia

インドネシア

Forum Ökologie & Papier

ドイツ

Friends of the Clearwater

アメリカ

Friends of the Earth US

アメリカ

Gippsland Environment Group

オーストラリア

Global Justice Ecology Project

アメリカ

Great Old Broads for Wilderness, Cascade-Volcanoes Chapter

アメリカ

Green Cove Defense Committee

アメリカ

Green Longjiang

中国

Green Snohomish

アメリカ

Himalaya Niti Abhiyan

インド

Hunter Knitting Nannas

オーストラリア

Independent Forestry Monitoring Network (JPIK)

インドネシア

John Muir Project

アメリカ

Kaoem Telapak

インドネシア

Kitsap Environmental Coalition

アメリカ

Landelijk Netwerk Bossen- en Bomenbescherming

オランダ

Leefmilieu

オランダ

Maíra Institute

ブラジル

Natural Resources Defense Council

アメリカ

Nature Nova Scotia

カナダ

NC Climate Solutions Coalition

アメリカ

No Electricity from Forests

オーストラリア

Ole Siosiomaga Society Incorporated (OLSSI)

サモア

Pakaid

パキスタン

Partnership for Policy Integrity

アメリカ

Pivot Point

アメリカ

Profundo

オランダ

River coalition

チェコ

Sahabat Alam Malaysia (Friends of the Earth)

マレーシア

Save Estonia's Forests (Päästame Eesti Metsad)

エストニア

Scholar Tree Alliance

中国

Snow Alliance

中国

Solutions for Our Climate

韓国

South East Region Conservation Alliance (SERCA)

オーストラリア

Southern Environmental Law Center

アメリカ

Spruill Farm Conservation Project

アメリカ

Southern Forests Conservation Coalition

アメリカ

Stand.earth

カナダ

Standing Trees

アメリカ

Sunflower Alliance

アメリカ

The Corner House

イギリス

Thurston Climate Action Team

アメリカ

Trend Asia

インドネシア

Utah Physicians for a Healthy Environment

アメリカ

Wild Nature Institute

アメリカ

WOLF Forest protection movement

スロバキア

付録資料

別添資料

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お問い合わせ先

特定非営利活動法人FoE Japan(https://foejapan.org/
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9 

TEL: 03-6909-5983、FAX:03-6909-5986 

特定非営利活動法人 気候ネットワーク(https://www.kikonet.org
【京都事務所】〒604-8124 京都府京都市中京区帯屋町574番地高倉ビル305
TEL: 075-254-1011、FAX:075-254-1012、E-mail:kyoto@kikonet.org