<プレスリリース>

神戸製鋼・石炭火力発電所増設計画
環境大臣 「容認されるべきものではない」と再検討を要請
~神戸製鋼、関西電力は、石炭火力発電増設事業を中止すべき~

2018年3月26日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵

3月23日、株式会社神戸製鋼所が神戸市灘区にて計画している「神戸製鉄所火力発電所(仮称)設置計画環境影響評価準備書」について、環境大臣は、「石炭火力発電からの二酸化炭素排出削減は喫緊の課題である」と指摘した上で、「二酸化炭素排出削減の取組への対応の道筋が描けない場合には事業実施を再検討することを含めた検討」が重要とした。

また、電力広域的運営推進機関が取りまとめた「平成29年度供給計画の取りまとめ」における電源構成推移の見通しでは、「国全体で2030年度の削減目標の達成に向けた道筋が明確化できているとは言い難い」状況にあることも指摘している。まさにそのとおりの状況にある。

あわせて、環境大臣意見では、本事業について、神戸製鋼に、総論・各論にわたる多々の措置を求めているが、追加的なCO2排出量が年間692万トンにも及ぶ本事業の実施を前提とする措置は、国全体で二酸化炭素排出削減の道筋を明確にした後に、より厳格な措置が検討されるべきものである。

また、本件立地が人口密集地であり、既存発電所が存在することから、「地域住民等の関係者の理解・納得が得られる」ことを求めているが、提出された1,173件にも及ぶ意見の大多数は、反対の意見であった。さらに、事業者による製品データの改ざん問題は、信頼のもとで成り立つ環境影響評価制度の存立を揺らがすものであって、到底、理解・納得が得られる状況にないことは明らかである。

環境大臣意見において強調されている地球温暖化対策における石炭火力発電を巡る国内外の極めて厳しい状況下において、事業者はもとより、経済産業省及び環境省は、「環境負荷を増大させる事業」に対して、異議を唱え続けている住民の声に真摯に向き合い、極めて問題の大きい本計画を中止すべきである。

本事業の問題点を3点挙げる。

第一に、温暖化対策の説明が非常に勝手な解釈である点だ。この事業は、関西電力と電力受給契約を締結し、2020年から30年間にわたって稼働することが予定されている。年間692万トンに及ぶ莫大なCO2は、事業者による温暖化対策に関する説明では、関西電力が保有する石油・LNG火力の稼働の抑制や他の再生可能エネルギーによる削減効果を充当し、削減努力を相殺することを説明しているだけである。全く温暖化対策には当たらず、早期の脱炭素を目指すパリ協定に逆行し、温室効果ガスの排出を2050年80%削減する国の目標達成を危うくする。

第二に、石炭火力の立地は次の理由により認められない。環境大臣意見においても指摘されているが、事業区域の周辺は、過去に深刻な大気汚染による公害が発生した地域であり、回復の途上にある。人口密集地で、既存の製鉄所及び発電所(140万kW)が存在するところ、環境負荷が増大する事業である。現在、地域住民からは兵庫県公害審査会へ、公害調停が申し立てられている。

第三に、事業者はデータ改ざん問題があり、住民の不信感を全く払拭しておらず、むしろ疑念は深まるばかりである点だ。兵庫県及び神戸市が連携して検証が行われた結果、不適切な処理はなかったとされた。しかし、住民に縦覧された準備書からの修正は、数百カ所に及び、つぎはぎとなった準備書は信頼性が極めて低いものと言わざるを得ない。

事業者は即刻この事業の中止を決断すべきである。

プレスリリース(本文)

神戸製鋼・石炭火力発電所増設計画 環境大臣 「容認されるべきものではない」と再検討を要請~神戸製鋼、関西電力は、石炭火力発電増設事業を中止すべき~

参考

神戸製鉄所火力発電所(仮称)設置計画に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見の提出について(環境省)

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