2017年10月5日、気候ネットワークは「トクヤマ第3号機発電設備」に対し、以下のとおり抗議いたします。

丸紅・トクヤマの石炭火力発電所建設断行に対する抗議声明
~2006年の保留計画を復活させるのは時代錯誤だ~

2017年10月5日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美惠

 去る9月29日、丸紅株式会社(以下「丸紅」)と株式会社トクヤマ(以下「トクヤマ」)は、山口県周南市にある徳山製造所敷地内において、石炭火力発電所の建設に今月から着手し、2022年の商業運転開始を目指すと発表した。これにより2012年以降に明らかとなった石炭火力発電所の計画は、中止や稼働を含め、50基となった。新たな石炭火力発電所をこれ以上稼働することは、昨年発効したパリ協定の「1.5~2℃目標」の達成を極めて危うくさせるものであり、到底認めることはできない。また環境アセス上に示された条件とも異なる形での不当な事業であり、速やかな中止を求め、厳重に抗議する。

 この計画は、2006年、「徳山製造所東発電所第3号発電設備計画(出力30万kW)」として環境アセスメントの方法書が公表された。以降、2008年には準備書、2009年には評価書が公告・縦覧され、環境アセスメントの手続きを終えている。当時の環境アセスメントにおける環境大臣の意見書では、「将来的な二酸化炭素の排出増加については、「低炭素社会づくり行動計画」の長期目標に鑑みて、長期的に影響を及ぼす新たな石炭火力発電設備の増設となることから、慎重に考える必要がある」と指摘されたものの、「自社の生産に不可欠な電力及び蒸気を得るための施設であって、売電を通じた他の一般需要家の二酸化炭素排出をもたらさない」との「特有の事情」が考慮され、認められる形であった。

 しかし、今回、約10年前の環境アセスをもとに、計画を復活させて突然事業化に踏み切った。丸紅の発表によれば、「(丸紅が)100%を出資する丸紅新電力株式会社が行う電力小売り事業において、競争力ある電源として新たに活用していく方針」が示されており、「一般需要家の二酸化炭素排出をもたらす電源」に該当することが明らかであり、環境アセスメントで示された条件とは異なり不当なものだ。また、丸紅新電力はスタジオ・ジブリと提携して環境配慮を前面に打ち出し、本計画でもバイオマス混焼発電設備であることを謳っているが、混焼比率からして実態は石炭火力である。石炭で燃料価格を安く調達し、他方ではバイオマス混焼分について電力需要家から高く買い取られるという問題のあるしくみを悪用するものである。
 また、アセス終了から相当期間が経過しており、事業者のアセス資料が得られないが、『徳山製造所東発電所第3号発電設備計画に係る環境影響評価準備書 審査書』(平成21年2月 経済産業省)に記載されているボイラー蒸気圧力(16.98MPa)並びに蒸気温度(569℃)から推察すると、最新型のものとは言えない。

 以上のように、パリ協定の発効を受けて事業環境が大きく変化しているだけでなく、国の2030年目標との整合性も確保されておらず、当初の使用目的も使用燃料も変更していることから、本事業は建設工事の準備を即刻中止し、環境アセスメントをやり直すよう、強く求める。

本文

丸紅・トクヤマの石炭火力発電所建設断行に対する抗議声明

関連リンク

環境省「徳山製造所東発電所第3号発電設備計画に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見

経済産業省環境アセスメント情報サービス「徳山製造所東発電所第3号発電設備計画 株式会社トクヤマ