今国会での地球温暖化対策推進法の改正について
~実質的な温暖化対策推進計画策定・対策強化の基礎とするために~

2013年3月7日?
特定非営利活動法人気候ネットワーク

1.「基本法(案)」から「温対法改正(案)」への変更の問題

環境省提出法案は、2009年より議論されてきた地球温暖化対策基本法案から、温暖化対策推進法(温対法)の改正案へと変更された。これにより、基本法案の基礎にあった、長期的に温暖化を防ぐ視点で着実に取り組みを進める視点はなくなり、京都議定書第1約束期間終了に続く“次の計画”を定めるだけのものへと大きく後退することになった。中期目標もまだ決定されず、つなぎに終始している現在の日本の温暖化政策対応は、全く不十分であると言わざるを得ない。以上の認識に立ち、温対法改正に際しては、以下の視点に基づき、実効的な計画策定、対策推進が可能となるものとするべきである。

2.温対法の改正における課題

(1)長期的な目標の視点を盛り込むこと
温対法はもともと、長期的な温暖化対策を実施するための法律として作られていない。長期的視点を持つ必要性から、目的に、政府合意に基づく「2℃未満の達成」「2050年80%以上の削減」などを盛り込むべきである。

 

(2)中期目標の水準を議論し、引き下げないこと
 現行の温対法は、京都議定書の6%削減目標を達成する計画の策定を定め、計画で、目標達成のためのガスごとの目標や政策措置に関する基本的事項を定めることとしている。政府は、25%削減目標をゼロベースで見直し、引き下げる方向であるが、これに対し、今回の法改正では、削減目標を定めず、後で計画の中で決められることになっており、法改正の際に目標水準は議論・担保されない。目標水準は、計画策定時に一任するのではなく、法改正の際に国会で担保されるべきである。またその水準は、先進国の削減水準として国際的に25~40%削減に引き上げることが要請されていることとの整合性を図り、25%削減を維持するべきである。
 さらに、再生可能エネルギーの着実な促進のために、温室効果ガス削減目標とともに、「再生可能エネルギー」の導入目標を別途設定するべきである。

 

(3)計画の時間軸(期間)と見直しを明確に規定すること
 現行の温対法に基づく京都議定書目標達成計画は、2012年度末までとなっており、目標や施策については、途中で検討し、変更する規定がある。
 今回の改正でも、計画がいつからいつまでの間なのかの期間を明確にし(国際制度に合わせるなら2013~2020年度までと想定される)、その途中段階では、目標達成のための施策は十分か等について検討・見直しをする規定を盛り込むことが重要である。とりわけ、2013~2014年に公表されるIPCC第5次評価報告書などの最新の科学的知見を踏まえて、目標・政策を見直すプロセスが必要である。

 

(4)計画に掲げる基本的事項の修正が必要
 温対法では、計画に掲げる基本的事項が列記されている。基本的事項は、今日のエネルギー情勢の変化などを踏まえた修正が必要である。また、キャップ&トレード排出量取引制度に関して、少なくとも今後の検討が可能となるよう、基本的事項に盛り込むべきである。たとえば、以下のような記述を盛り込むべきである。
「温室効果ガス総排出量が相当程度多い事業者について、経済的手法を含む効果的な政策措置の導入の検討に関する基本的事項」
「再生可能エネルギーの推進にかかる政策措置に関する基本的事項」

 

(5)将来の計画への道筋
 今回の法改正で次の計画が定められたとしても、その後に続く計画について方向性が決まらなければ、将来の展望が見えない。まさに今直面しているように、計画終了時に次の計画が決まっていないという事態を繰り返さないためにも、計画策定のステップが規定され、長期目標に向けた更なる排出削減への道筋が明確になっている必要がある。よって、「〇〇年度以降の計画については、○○年度より検討を始める」などの規定の追加が必要である。

 

(6)地域・全国地球温暖化防止活動推進センターの活動範囲の見直し
 現行の温対法では、地域・全国地球温暖化防止活動推進センターは、「日常生活における」温室効果ガス排出削減に関連する事業を行うものと限定されている。しかし、国民への普及啓発は、幅広く、地球温暖化対策に関して必要な幅広い情報(例えば、再生可能エネルギーや原子力等のエネルギーに関する情報など)も含まれるべきである。事業を「日常生活」に限定しないようにするべきである。

3.早期の法案提出、計画策定の必要性

 今国会で予定通り改正が成立しても、策定される計画は最短で2013年10月頃になり、2013年4月からは約7カ月の計画不在の空白期間となってしまう。この間、各主体は、温暖化対策の基本的な指針とするものを何も持たないことになる。10月の計画策定でも、すでに極めて遅いタイミングであることを認識し、早期に計画策定できるよう、今国会で法改正を必ず実現するべきである。

4.市民参加・参画の道

 温対法では、政策形成における市民・NGOの参加に関しての規定はない。日常生活の温暖化対策の実施のみならず、政策形成における市民・NGOの役割が認識され、参加が確保されることが重要である。

 

プレスリリース本文

「今国会での地球温暖化対策推進法の改正について~実質的な温暖化対策推進計画策定・対策強化の基礎とするために~」
(2013年3月7日、PDF)

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