2026年6月26日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵
6月24日、日本最大の発電会社である株式会社JERAが、中東情勢緊迫化に伴う電力価格高騰を理由に、法人向け石炭火力電力の販売(PPA契約)再開を検討していることが明らかになった。また、これに先立ち政府が2026年度において非効率な石炭火力の稼働制限を解除することを決定している。
エネルギー危機や地政学リスクへの対応を口実に、CO2を最も多く排出する石炭火力発電へ回帰するこれらの一連の動きは、世界の気候変動対策に完全に逆行するものであり、深刻な危機感をもって断固として抗議する。
本方針が抱える重大な問題点は以下の3点である。
1. 気候危機の加速と国際合意の軽視
世界中で気候変動の影響とみられる異常気象による被害が激甚化する中、1.5℃目標の達成に向けた石炭火力の段階的廃止は国際的な最優先課題である。日本政府が掲げていた「2030年までの非効率石炭火力の休廃止方針」は、2050年カーボンニュートラル実現に向けた事実上の国際公約であったはずである。それにもかかわらず、有事を理由に安易にその方針を翻し、石炭火力への依存度を再び高めることは、温室効果ガス排出削減の決定的な足踏みを意味する。これは国際社会に対する日本の信頼を致命的に失墜させる暴挙である。
2. 再生可能エネルギーシフトへの深刻なブレーキ
安価な石炭火力の電力を市場や法人向けに再提供することは、本来進めるべき再生可能エネルギーの導入促進や、省エネ・蓄電池等のイノベーションに対する投資インセンティブを根底から損なう。化石燃料への依存を温存する構造は、抜本的なエネルギー転換への最大の障壁となる。
3. 「地政学リスクへの強さ」という欺瞞
JERAは「石炭は地政学リスクに強い」と主張するが、石炭もまたほぼ全量を海外からの輸入に依存している化石燃料に過ぎない。真のエネルギー安全保障は、燃料調達リスクのない国内の再生可能エネルギーの主軸化によってのみ達成される。目先のコスト削減のために再び化石燃料に依存することは、将来的な座礁資産リスクを抱え込み、企業の脱炭素経営をも危うくする。さらに見過ごせないのは、JERAが今回の販売再開検討に合わせ、これまで掲げていた「2030年までの非効率石炭火力発電所の休廃止方針」をも撤回・見直す意向を表明した点である。2050年カーボンニュートラルロードマップに整合するこの方針は、国際社会や顧客企業、市民に対する極めて重い約束であり、いわば「国際公約」である。地政学リスクや価格高騰を免罪符にして、自ら定めた脱炭素への道筋を容易に覆すJERAの不誠実な姿勢は、企業の社会的責任を放棄したものとして、強く非難されるべきである。
私たちは、目先の危機を口実にした気候変動対策の後退を断じて容認しない。そのうえで、以下のことを求める。
株式会社JERAは、 石炭火力電力の法人向け販売再開およびフル活用方針を即時に撤回し、再エネ・蓄電池の拡充に経営資源を集中させること。
日本政府は、非効率石炭火力の稼働制限解除という目先の「危機回避」を止め、脱炭素とエネルギー自給率向上を両立する再エネ最優先の緊急支援策へ舵を切ること。
持続可能でクリーンな社会の実現に向け、本方針の撤回を強く求める。
以上
参考
JERAの2026年度上期 定例記者会見(2026年6月25日)

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