【プレスリリース】
2020年度温室効果ガス排出量(確報値)の公表にあたって
1.5℃目標達成に向け、2030年50%以上の削減のための政策導入を
2022年4月19日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵
4月14日、環境省と国立環境研究所が「2020年度の温室効果ガス排出量(確報値)」を公表した。2020年度の温室効果ガスの総排出量は11億5,000万トン-CO2で、「総排出量」から「吸収量」として算定された4,450万トンを引くと、11億600万トンになると報告した。これは1990年度以降、前年度に続き最少の排出量となった。前年度から6,000万トンの減少にあたり、2013年度総排出量比21.5%(3億360万トン)減少となったと算定された。日本は、2020年度の温室効果ガスの削減目標として、「2005年度比 3.8%減以上」を条約事務局に提示していたが、2005年比でも約20%減(1990年比約20%減)となった。この2020年度目標は、2013年10月に25%削減(1990年度比)から大きく後退させたものであるが、オランダ最高裁がオランダ政府に国際的コンセンサスの最下限として2020年までに1990年比20%減から25%減に引き上げを命じたことに照らしても、本来、低きに過ぎたものである。
しかも、環境省などは、減少要因として、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に起因する製造業の生産量の減少、旅客及び貨物輸送量の減少等に伴うエネルギー消費量の減少等を挙げており、今回の減少も太陽光の一定の増加を除けば気候変動対策の効果とは言えない。電気・熱配分前のCO2部門別の排出量を見ると、エネルギー転換部門(製油所・発電所等)の排出量は全体の40.4%と相変わらず高い割合を維持しており、続いて産業部門24.3%、運輸部門17.0%と続く。火力発電所では、発電電力量がこの10年で石炭、LNGがほぼ横ばいで、電源構成の割合でみるとそれぞれ2020年に天然ガス39%、石炭31%となっており、排出量を押し上げる原因となっている。ハイドロフルオロカーボン類は相変わらず増え続け、2013年度比61.0%増加と著しい伸びとなっている。
政府は、2020年以降にグリーンイノベーション戦略として水素・アンモニア、CCUSなどを重点対策に掲げており、それで2030年46%減、2050年カーボンニュートラルが実現できるかのような机上の空論を展開している。しかし、実際にはアンモニア混焼20%程度では実質的な削減は4%程度にしかならず、CCSも技術的にもコスト的にも現実性がなく、石炭火力の延命策に過ぎない。このままでは新型コロナウィルス(COVID-19)の収束後には排出増加に転じかねない。
1.5℃目標に整合する道筋を描くために、2030年目標を引き上げ、電力分野では火力から大幅に再エネに転換し、建築物の断熱規制を速やかに導入して高排出構造のロックインを防ぎ、今あるコスト効果の高い対策の最大限導入や、そのためにもキャップ&トレード型排出量取引制度などカーボンプライシングの導入など政策導入に踏み切り、1.5℃に向けて直ちに、確実な排出削減の実現を目指すべきである。
プレスリリース本文
2020年度温室効果ガス排出量(確報値)の公表にあたって 1.5℃目標達成に向け、2030年50%以上の削減のための政策導入を
参考ページ
2020年度(令和2年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について
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