2002年8月30日

中央環境審議会総合政策・地球環境合同部会
地球温暖化対策税制専門委員会中間報告への意見

 

気候ネットワーク 代表 浅岡 美恵

政府の審議会が時期を明記して温暖化対策税導入の方向性を提言したことは、前向きに評価したい。しかし私たちは、炭素税は「必要とされた場合に導入する政策」ではなく、CO2削減に「必要不可欠な政策」と考える。
 なぜなら、温暖化防止の取り組みを進めるには、努力した企業や個人が得をし、そうでない企業や個人はそれ相応の負担をする形に経済の仕組みを変えることが必須である。すなわち、炭素税が、削減コストを内部化し価格インセンティブ効果によって削減を促す政策手法であり、あらゆる分野をカバーできすべての温暖化政策のベースとなるものだからである。
 また「早くて2005年」という導入時期は不十分である。京都議定書の第1約束期間の目標達成(6%削減)を進めるためにはもちろん、経済へ急激な影響を与えないためにも、可能な限り早期に導入することが必要である。

中間報告では、道路特定財源の使途のグリーン化を求め、来春の暫定税率期限切れに際して、これらの税が持つCO2排出を抑制する価格インセンティブ効果を評価し、税率水準を維持すべきとしている。この主張は極めて妥当であり、前向きに評価する。さらに、石油税・電源開発促進税などエネルギー関係の目的税についても使途のグリーン化に言及している点も評価できる。

中間報告には、使途を温暖化対策に充てることを想起させる「温暖化対策税」という名称を始め、上述の既存諸税の使途のグリーン化など、税収の使途に関する記述が多い。温暖化対策税/炭素税は本来価格インセンティブによる削減効果を主な狙いとするものであり、いかに効果的に価格インセンティブによってCO2削減を促す制度設計とするか、例えば税率設定や減免措置などを含め、さらにご検討頂きたい。

一方で温暖化対策税/炭素税の税収の使途そのものに関する検討は乏しい。炭素税は本来価格インセンティブによる削減効果を主な狙いとするものであるが、税収使途をどうするかは各方面の関心も高く制度設計上は極めて重要な部分である。早急に具体的な検討を行い選択肢を提示し議論を喚起して頂きたい。

課税対象として原子力・水力発電を除くとしているのは、これらを相対的に有利にしてしまうものであり、私たちは反対する。地球温暖化防止のために他の環境負荷を増やすことは容認できない。原子力・水力発電についても火力発電と同等の負担になるように課税を行うべきである。

今回の中間報告では温暖化対策税の制度設計案は部分的にしか示されていない。中環審専門委員会には、検討のスピードを上げ、早急に具体的・包括的な制度設計案を提示し、各方面に広く議論を喚起することを望みたい。

 

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