「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例に基づく
気候変動対策に係る主な制度の2020年からの取組」に関する意見

特定非営利活動法人 気候ネットワーク

第1_総量削減義務と排出量取引制度について

意見1.削減義務率について

政府が未だキャップ&トレード制度の導入に至らない中、国に先んじて取り組みを行い、継続することは、歓迎すべきことである。制度の前提として、都は、2020年を「2030年目標の達成」とその先の「脱炭素社会」を見据えた「新たなステージ」と位置付け、パリ協定を軸とした世界の変化を踏まえて「ゼロエミッション東京の実現」に取り組むとしている。脱炭素を基礎に置くのであれば、「ゼロエミッション東京」の目標達成年度を2050年と明確に示すことがそもそも必要である。そして、「2030年に2000年比30%削減」という現在の都の温室効果ガス排出削減目標がパリ協定に沿わないことを踏まえ、目標を引き上げる必要がある。これまで国内で先陣を切ってきた東京都だからこそ、パリ協定に整合的な目標を掲げ他を牽引すべきであり、逆に東京都ができなければ、他もできず、国内での大幅削減は進まないと考えるべきである。

意見2.削減義務率について

東京都は世界に先駆けて都市型キャップ&トレード制度を導入し、同制度では第2期においてすでに26%の削減に成功している。上記に記した通り、都の温室効果ガス排出削減目標自体が引き上げられる必要があることを踏まえ、キャップ&トレード制度の削減義務率の前提となる2030年度目標は固定ではなく、今後の検討・見直しで引き上げべきことを念頭に、義務率も引き上げられる可能性を折り込んでおくべきである。またそのために、2030年目標及び義務率の妥当性を検討する機会を設けることを求める。また、その際には第2期の実績を踏まえて義務率は十分に高いものにし、都の温室効果ガス排出削減を加速させるべきである。

意見3.新たに削減義務の対象となる事業所の取扱い

新たに削減義務の対象となる事業所は、現状のまま新たに対象となる事業所の扱いを決めるのみならず、新たに対象を拡大することも検討するべきである。大規模事業所を対象とした都のキャップ&トレード制度は、制度開始以来継続的に大幅削減を実現している。これに対して中小企業を対象とした地球温暖化対策報告書制度では総量で約2%の削減にとどまり、対象事業者の約半数が削減できていない。都の業務・産業部門のCO2排出のうち、中小規模事業者によるものは約6割を占め、この分野の大幅排出削減は重要である。本制度開始からこれまで8年間の知見とキャップ&トレード制度の実績を踏まえ、対象を中小事業者に順次拡大して削減の深掘りを進めるべきである。

意見4.低炭素電力の選択の仕組み等

低炭素電力の選択を促す仕組みだけでなく、高炭素電力の選択を回避させる仕組みもあわせて必要である。目下、多数の石炭火力発電所の建設が進み、このままでは、全体としてのCO2排出係数が悪化しかねない状況にある。低炭素電力の仕組みだけでは、パリ協定と完全に逆行する石炭火力の開発と利用を抑制するため、高炭素電力の利用によるペナルティを導入することが必要である。なお高炭素電力とは、0.71t-CO2/千kWhと定められているとのことだが、全電源でこのような高炭素の事業者は実際にはほとんどなく、石炭火力を選択しないという判断にはつながらない。これを0.6t-CO2/千kWh程度に見直して、ペナルティ導入などを検討するべきではないか。

意見5.低炭素電力の選択の仕組み等

低炭素電力の要件として「0.4」t-CO2/千kWh」としているが、電気事業低炭素社会協議会が自らの目標として、2030年に「0.37t-CO2/千kWh」を目指すとしているところから、特にインセンティブ付与として削減量の追加が可能となっているのであるのだから、2030年に向かっての低炭素電力の仕組みはこれにそろえるべきではないか。

第2_地球温暖化対策報告書制度

意見6.評価方法

意見①に記した通り、2030年目標の検証と再検討を行う必要がある。それに伴って取り組み実績が優良な事業者の評価基準も再検討するべきである。 

参考

「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例に基づく気候変動対策に係る主な制度の2020年からの取組」に関する意見募集(パブリックコメント)について

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