2004年6月9日

交通政策審議会報告
「交通政策審議会環境部会中間とりまとめ案」への意見

 

気候ネットワーク 代表 浅岡 美恵

[意見提出様式]

  • 住所:京都市中京区高倉通四条上ル高倉ビル305号
  • 氏名(団体の場合は団体名及び代表者氏名):気候ネットワーク(代表・浅岡美恵)
  • 連絡先(電話番号等):TEL・075-254-1011 E-mail・kyoto@kikonet.org

1.全体について

  • 運輸部門の排出量は90年以降大幅増加が続いており、自動車輸送量の拡大、走行量の拡大を放置して対症療法を図る従来の政策が行き詰まりを見せていることを真剣に受け止め、京都議定書の目標達成、またその先の更なるCO2排出削減への重大な責任を有していることを再認識し、強力な政策を進める必要がある。
  • 中間とりまとめ案でも「自動車の走行量を抑制することが必要」と認識している通り、今後は自動車走行量を増やさない等の強い政策を効率化とモーダルシフトを組み合わせてスマートに実現するべきである。
  • 交通政策を講じる傍らで、道路容量を無限に拡大していく政策を取っていることは逆モーダルシフトをもたらす逆行する政策の典型である。交通政策審議会として社会資本整備審議会に具体的な注文をつけていくべきである。また、道路容量拡大を支える道路特定財源のグリーン化や縮小も強力に推し進めるべきである。

2.「第3章 運輸部門における現行の地球温暖化対策の暫定評価」について

  • 対策の多くで根拠をそれなりに示していることは評価できる反面、BAUの想定などで不明な点も多い。情報を十分に公開して第三者が検証できることが必要である。
  • トラックの輸送の効率化として、トラックの大型化による削減効果が示されているが、大型化が進んだだけで、それに伴い減少するはずの中型トラックが減少していない可能性がある。図2-12のグラフでも、営業用トラックへの転換は着実に進んだ反面、営業用トラックの積載効率が95年以降低下している。これは大型トラックが増えただけで中型トラックは減らず、全体として積載率低下、走行距離増加をもたらしている可能性を示唆していないか。
  • 公共交通機関の利用促進等の鉄道・新交通新線整備に対して、自動車の台kmが一律にシフトするとした根拠が不明であり、過大見積りがあるのではないか。

3.「第4章 2010年における運輸部門からの二酸化炭素排出量予測」について

  • 2010年の排出量を予測する際に、現実の経済動向等の変化を踏まえて試算することは必要だが、大綱策定時に対策毎の排出削減見込み量をどのように想定し、今回それをどのように変更したのかの比較を示すことが必要である。これらの情報が公開されなければ、大綱策定時の前提の妥当性とその評価・見直しを適切に行うことができず、今回の自然体ケースの試算の前提となる根拠に関する情報が不十分である。このように、情報を十分開示することなく、見直しの度に自然体ケースを塗り替えることを繰り返すのでは、適切な評価見直しはできない。各対策の大綱策定時と今回の試算の前提を全て公開すべきである。
  • 燃費については、実燃費が悪化しているのを無視して自然体ケースに達成を前提に盛り込むのはおかしいのではないか。
  • 各現行対策による削減見込み量は、最大見積もりと最小見積もりとが示されており、最小見積もりはある程度現実に合わせた固めの見積もりになっているが、最大見積もりは、これまで通り、政策的裏付けのないまま削減に期待するものであり、実現可能性が極めて低いと考えられる。削減見積もりは、確実に担保されるもの、もしくはトレンドから実現可能なもののみを手堅く見積もり、今後の追加対策を検討すべきであり、ここで示される単なる期待値に近い最大見積もりを、法的拘束力のある京都議定書の達成のために見込むのは危険である。削除すべきではないか。
  • 対策量を積み重ねても目標に達しないため対策強化が必要、との論旨自体は正しい方向である。ただし、従来の経験は、政策措置で対策の達成を法的に担保しなければ進まないことを示している。対策強化は政策措置で担保されなければならない。

4.「第5章 運輸部門における温暖化対策の見直しの視点」について

  • 全体として方向性のみで漠然としている。第2ステップで自動車の更なる燃費向上と走行量抑制の強力な政策が必要であることを明記すべきである。
  • 税制・補助・政策的融資制度などの支援措置等の経済的誘引の付与についての言及があるが、極めて重要な視点である。これを具体化して追加対策とする必要がある。具体的には、炭素税の導入の具体化が必要である。また、「自動車税制のグリーン化の更なる充実を図る必要がある」と記されているが、重量別を廃し全車を対象とする唯一の燃費基準を設定する方法で真のグリーン化を実現させるべきである。
  • 交通問題は地域特性が大きいため、都道府県・基礎自治体が主体的に、区域の特性に応じた総合的な交通環境ビジョンなどを策定するよう義務付けるなどして、その下で公共交通機関の利用促進・モーダルシフトのための措置、自動車利用を抑制する措置、自動車依存を加速するスプロール化に歯止めをかける措置等を講じる政策的対応が必要である。
  • 公共交通を進めたるめの運行への支援を含む具体的な財政措置・財源について検討すべきである。
  • 産業との連携では、営業用の業務用自家用車の削減、通勤対策などの計画策定などを求めるべきである。
  • NPOとの協力は、政策評価も含めて実施すべきである。

【旅客】

  • 旅客では、モーダルシフトの徹底と自動車の徹底した効率化が必要である。モード燃費は既に達成されているので前倒し強化すべきである。また、メーカー毎の平均燃費規制や低公害車割合規制なども導入検討が必要である。また乗車率が低下しているので、小型化を進めるために自動車税制グリーン化の強化(前述)が必要である。
  • 特に、政策によって自動車交通と公共交通の間でシフトが起こりうる、一定程度の中規模都市における公共交通への支援を強化すべきである。

【貨物】

  • 貨物は短距離では自動車以外の利用が難しいため、徹底した効率向上が必要である。
  • 在庫を持たない営業形態の転換を求める政策や、都市の貨物輸送は共同輸送を原則導入することも必要である。
  • 一方、長距離輸送は適切な政策によって鉄道・海運へのモーダルシフトが期待できる分野である。都市内トラックとの結節点の整備などの推進策とともに、トラックによる長距離輸送にディスインセンティブを与える政策(炭素税、一定距離以上のトラック輸送への何らかの経済的負担策、等)を行うべきである。

以上

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