2003年10月26日

気候ネットワーク 代表 浅岡 美恵

[意見提出様式] 住所:京都市中京区高倉通四条上ル高倉ビル305号 氏名(団体の場合は団体名及び代表者氏名):気候ネットワーク(代表・浅岡美恵) 連絡先(電話番号等):TEL・075-254-1011 (※本件は団体としての意見提出です) (※(1)~(8)の項目文は、環境省発表の意見提出様式の記述のコピーです)

(1) 我が国としての温暖化防止のための取り組み方はどうあるべきかについて、ご意見をお寄せ下さい(主に本報告中、「報告の取りまとめに当たって」、「1 地球温暖化対策の現状についての認識、これに照らした温暖化対策税の特長」及び「6 温暖化対策上の効果 及び経済等への正負の影響」参照)。

[1]要旨  報告の記述に基本的に賛成です。政策の強化が必要不可欠です。

[2]意見  温暖化防止政策の強化が必要不可欠と考えます。その中でも、一定の規制と炭素税の導入は不可欠と考えます。本報告は、炭素税(温暖化対策税)導入に向けた一歩と前向きに評価します。むしろこのような報告が政府内から出されるのは遅かったと言えます。一刻も早い炭素税(温暖化対策税)の導入を求めます。

[3]理由  温暖化の進行は極めて深刻であり早急な対策が必要だからです。また残念ながら日本のCO2排出削減が進んでいない現状があり、それは現行の政策が不十分だからです。  私たち気候ネットワークは、2000年には炭素税導入を含む6%削減達成のための政策・措置を提案するなど、常々政策強化の必要性を訴えてきており、炭素税導入は当然であり不可欠と考えます。

(2) 温暖化防止のための施策として、温暖化対策税を活用することについて、御意見をお寄せ下さい(主に本報告中、「1 地球温暖化対策の現状についての認識、これに照らした温暖化対策税の特長」及び「6温暖化対策上の効果及び経済等への正負の影響」参照)。

[1]要旨  報告の記述に基本的に賛成です。炭素税(温暖化対策税)の早期導入を強く求めます。

[2]意見  炭素税(温暖化対策税)は温暖化防止の諸政策のベースとなる政策であり、必要不可欠な政策と考えます。CO2削減のための政策の強化は急務ですから、炭素税の早急な導入を強く求めます。

[3]理由  化石燃料起源のCO2はあらゆる所から排出されるので、全部門をカバーできる炭素税(温暖化対策税)が政策手法として効果的です。炭素税(温暖化対策税)によって経済にCO2削減コストを織り込んで、CO2排出削減に努力する個人・企業は得をし、そうでない個人・企業はそれ相応の負担をする経済社会にして行かなければなりません。炭素税(温暖化対策税)は、経済を温暖化防止型に変えるために必要不可欠な政策と言えます。  なお、2004年の地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しを、炭素税の早期導入やそのための検討をかえって遅らせる口実にしてはなりません。

(3) 温暖化対策税の課税の仕組みはどうあるべきかについて、御意見をお寄せ下さい(主に本報告中、「2 税の性格、課税要件」参照)。

[1]要旨  課税段階については最上流・上流課税が現実的とする趣旨におおむね賛成できますが、税率については税の価格インセンティブ効果で一定以上のCO2削減が達成できる税率とすべきです。

[2]意見  課税段階については、本報告で最上流・上流課税が現実的としているのは妥当と考えますが、それに加え下流課税についても検討すべきと考えます。  税率については「相対的に低い税率とし税収を温暖化対策に充てる」ことが指向されていますが、価格インセンティブ効果で一定以上のCO2削減を達成できる税率とすべきです。高税率も十分に検討に値しますので、一定以上の幅広い税率について早急に議論・検討を行うべきです。  なお本報告には「消費量「等」に応じて課税」(P.13)という表現がされていますが、どのような制度設計の場合でも、全ての化石燃料に炭素含有量当り同等に課税する大原則を明確にし、恣意性を排除すべきです。

[3]理由  課税段階として、行政コストなどから最上流・上流課税が現実的ですが、下流課税にも「見えやすい」などの利点があるのも確かですので、両方を検討する必要があります。ただ、早期導入が何よりも重要ですから、課税段階という技術的な問題で導入が遅れてはなりませんので、現実的な制度設計で早期導入をはかるべきです。  税率については明示せずに2004年の地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しを受けて決めるとしていますが、それからでは遅いので今から検討しておくべきです。「低税率で税収を温暖化対策に充てる」のも一つの選択肢ですが、炭素税(温暖化対策税)は本来その価格インセンティブ効果でCO2削減を進める政策手法ですから、その効果を発揮するにはより高い税率の方が望ましいのは明らかです。中程度の税率を含め幅広い検討が必要と考えます。

(4) 温暖化対策税の減免・還付をはじめとする負担軽減はどうあるべきかについて、御意見をお寄せ下さい(主に本報告中、「3 税負担軽減についての考え方」参照)。

[1]要旨  あいまいで適切でない記述が見られますので、産業への税負担を軽減する必要がある場合は明確な基準に基づく条件付きの措置とする趣旨で明確化することを求めます。

[2]意見  (3)でも述べた通り、全ての化石燃料に炭素含有量当り同等に課税する原則を確認し、恣意性を排除すべきです。  その上で、産業への税負担軽減措置を導入する必要がある場合は、必ず一定のCO2削減を実行するという条件付きでなければならず、軽減の基準などを明確にした制度とすべきです。

[3]理由  いわゆる「声の大きな」大企業が合理的でない理由によって軽減されることがあれば、CO2削減効果は失われ市民の支持も得られず、炭素税(温暖化対策税)とは呼べないものになってしまいます。このような事態は絶対に避けなければなりません。本報告には「「成果を上げている」、又は、「今後成果を上げることが期待できる」と言えるもの」(P.16)などといったあいまいな表現が見られますが、このような考え方は適切とは言えません。一定以上の税率の場合、国際競争力への配慮などからエネルギー集約型産業などに対して何らかの軽減措置を導入する必要性は認めますが、その際は客観的な基準に基づくCO2削減目標の設定とその達成を条件とすることが必要不可欠です。  炭素税はCO2削減のための政策ですから、それを軽減する以上は一定のCO2削減を約束・実行するのは必要不可欠なことです。

(5) 温暖化対策税の税収の使途はどうあるべきかについて、御意見をお寄せ下さい(主に本報告中、「4 税収の使途についての考え方」参照)。 [1]要旨  本報告では使途を温暖化対策に充てる場合を中心に記述されていますが、他の税の減税に充てたり、温暖化対策と減税を組み合わせるなど多様な選択肢が考えられますので、幅広く議論・検討を行うよう望みます。またいずれの選択肢の場合も、明確な基準のもとに使われる必要があります。 [2]意見  税収の使途については、(1)温暖化対策に充てる、(2)減税に充てる、(3)その両方を組み合わせる、など多様な選択肢を示し早急に議論・検討を行うべきです。  また税収の一部を地方自治体の財源とすることには賛成です。  なお報告で挙げられている「世の中の納得が得られる透明な使い方とすべき」「効率的で確実な削減につながる対策への支援を基本とすべき」「日本の経済活性化や国際競争力強化の同時達成にも寄与するものとすべき」という使途に関する3つの留意点は適切と考えますので、これらが確保される使途の決定過程となるよう制度化すべきです。  また温暖化対策に使う場合も、他の大きな環境負荷を引き起こす原子力発電、CO2削減どころか排出増を促す渋滞解消と称する道路建設、化石燃料からの排出削減にならない吸収源対策(ただし、化石燃料を代替するバイオマス燃料利用や鉄・プラスチック等を代替する木材製品利用は、排出削減になる適切な対策です)、化石燃料消費削減を緩めてしまい環境・エネルギー面で問題があるCO2固定化、国内での排出削減にならない京都メカニズムに使うことには反対です。 [3]理由  税収をどう使うかはさまざまな選択肢がありますから、十分に議論する必要があります。世論調査などでは温暖化対策に使うことに賛成する意見が多い一方、政府全体として増税となることへの批判もあります(温暖化対策に使えば減税できないのでその分は増税になります)。減税などによって低所得者への逆進性(低所得者の方が相対的に高所得者より炭素税の負担が重くなる点)に配慮する措置も必要と考えます。選択肢やその長短について広く一般に理解をはかった上で、温暖化対策にせよ減税にせよ、まさに上記の3つの留意点をクリアしたものとする必要があります。  なお温暖化防止を願う市民が求めている対策は、自然エネルギーの拡大、省エネの促進(各種のエネルギー効率向上)、公共交通の促進など、国内できちんとした排出削減になり環境的にも優れたものです。 (6) 既存エネルギー関係諸税との関係はどうあるべきかについて、御意見をお寄せ下さい(主に本報告中、「5 既存エネルギー関係諸税との関係についての考え方」参照)。 [1]要旨  炭素税(温暖化対策税)導入に際しての既存エネルギー諸税の「調整」については、その案を具体的に提示すべきです。仮に既存諸税を引き下げる場合は、その分も含めた十分な炭素税(温暖化対策税)率とする必要があります。 [2]意見  各化石燃料に現在課せられているエネルギー諸税の合計の税率は基本的に下げるべきではありません。  仮に炭素税(温暖化対策税)導入に際し既存エネルギー諸税の税率を引き下げる場合は、以下の基本的考え方を押さえておく必要があります。  例えば、炭素トン当たり10000円/t-Cの炭素税(温暖化対策税)導入し、その際に既存諸税の税率を3000円/t-C引き下げる場合は、新規に導入された(追加された)税率は7000円/t-Cということになり、削減効果はそこで評価する必要があります。もし削減のために10000円/t-Cの新規課税が必要な場合に、既存諸税の税率を3000円/t-C引き下げるなら、炭素税(温暖化対策税)は13000円/t-Cの税率とする必要があるということです。  なお使途については、既存エネルギー諸税は道路建設・石油開発・空港建設などCO2排出増を促す使途に多く使われており、抜本的な見直しが必要です。 [3]理由  本報告にもある通り、温暖化防止の観点からみて、既存諸税が発揮している燃料消費(CO2排出)抑制の価格インセンティブ効果を減ずるべきではなく、今後は化石燃料消費(CO2排出)を削減するために燃料価格を上げていく方向に進むべきだからです。  またCO2排出増を促す既存諸税の使途の見直しが必要なのは言うまでもありません。 (7) 本報告中の「代替案の検討」で示した(1)課税の仕組み及び(2)税率の水準についての御意見をお寄せ下さい。 [説明]  本項については、課税段階と税率については(3)で、税収使途については(5)で、それぞれ含めて述べていますので、そちらをご覧下さい。 (8) その他自由に本報告について御意見を記述してください。 [意見]市民参加と透明性について  炭素税(温暖化対策税)の導入及びその後の運用における、市民参加と透明性の確保を強く求めます。  政府の税金の集め方・使い方に対する市民の不信感は、根深いものがあります。公正・適切な炭素税(温暖化対策税)制度の構築・実現には、様々な意見をたたかわせた上で政策決定に至ることが重要であり、意思決定の中枢に市民が参画しその意思がしっかりと反映される仕組みとするよう強く求めます。  以上

発表資料

特定非営利活動法人 気候ネットワーク(東京事務所) 担当:平田
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