2010年10月25日

民主党公約に反した「ボトムアップ方式」提案の撤回を
経産省 産業構造審議会ワーキンググループへのコメント

浅岡美恵 気候ネットワーク代表

今年6月より開催されている、経済産業省の産業構造審議会環境部会地球環境小委員会政策手法ワーキンググループ(WG)は、地球温暖化対策の政策手法を検討する場として設置されたものである。そもそもWGは、3月の地球温暖化対策基本法案の閣議決定を受け、地球温暖化対策の具体的なあり方について本格的な議論に入るのを踏まえ、「基本法の施行後一年以内に成案を得ることとしている国内排出量取引制度の具体化に向け、論点を抽出の上、制度設計上のオプションを提示することを目的として開催される」と説明されている。
 しかし、その後の基本法案の廃案などを受け、現在では、これまで実施してきている自主的な制度や支援措置なども含め、あらゆる政策手法の特性を整理しており、9月29日の中間整理では、「トップダウン方式排出量取引制度(キャップ&トレード型)」は経済に悪影響があるとして「×」を並べ、その政策効果を過小評価する一方で、「自主的目標設定+評価・検証」など、これまで経団連自主行動計画で進めてきたしくみを高く評価している(図1 PDFデータ参考)。この時点で既に、民主党政権の方針を大きく逸脱している。

10月8日には、キャップ&トレードの排出量取引制度の導入を掲げた、地球温暖化対策基本法案が再閣議決定されたにもかかわらず、本日10月25日に開催された第7回WGでは、その議論の方向を変えることなく、「ボトムアップ方式に関する基本的な考え方について」を発表した。その内容は、目標水準として「各産業・企業における技術導入可能性を積み上げた排出削減を目標」とし、その指標として「総量、原単位、いずれの指標も選択可能」、「技術導入可能性に基づく削減量に着目した目標設定等も可能」と方向付けている。また目標設定の方法については、「事業者自らが技術導入可能性に基づく排出削減目標を策定」としている。

これは明らかに、これまでに続けてきた自主的な取り組みを延長する考え方に立ったものであり、閣議決定された基本法案に掲げられる、キャップ&トレード型の排出量取引制度とは全く異なるものであり、それを否定するものだ。
 民主党政権は、これまでの政策のままでは十分な削減が進まないという認識に立ち、25%削減とともに新たな政策を提案してきたはずだ。しかしここにきて、経済産業官僚と、その意を受けた委員は、民主党政権の方針を無視して、旧政権下から変わらない考え方を堅持しようと完全に暴走している。このような制度を仮にも排出量取引制度と呼ぶなら、世界にも恥じるべきこととなる。

旧政権下さながらの審議会政治が復活し、そこで現政権の方針から逸脱する流れを作ろうとされ、公約違反がこのような形で進められていくことは見過ごせる問題ではない。
 民主党政権は、基本法案の考えに立って、改めてキャップ&トレード型の排出量取引制度の制度設計を検討し直すよう舵を切るべきである。また、今後の審議は、各省の審議会任せではなく、内閣府の下で、政治の意を受けて公正に審議が可能なメンバーシップによって進めていくべきである。
 我々は経済産業省の本WGの動向を大きく問題視し、政治にこの軌道修正求めたい。

以上

発表資料

参考資料

産業構造審議会環境部会地球環境小委員会政策手法ワーキンググループのサイト

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