COP19 2015年合意に向けて一歩を踏み出す
日本に問われる中長期削減目標と政策

2013年11月23日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 ワルシャワ会議(COP19)では、2015年合意に向けた準備の進展をみた。合意パッケージとして、2020年までの目標の引き上げとその実施、及び全ての国の新たな国際枠組み合意を2015年に得るための作業、森林減少を防止するための「REDD+」について資金を含む仕組み(REDD+のためのワルシャワ枠組み)、脆弱な途上国にかかる「損失と損害(loss and damage)」に対応する「ワルシャワ・メカニズムの立ち上げ」、長期資金の作業計画等が採択された。

 「損失と損害」問題については、アメリカなどに抵抗が強かったが、その要求を無視し得なかったのは、貧しい途上国は既に、回復しがたい気候変動による「損害と被害」に直面しているからだ。それは「2℃目標」の重要性と、そのための地球規模での大幅な排出削減の必要性を示すものでもある。今回の合意では各国は、2015年の新枠組合意への準備と、2020年までの国内削減目標・政策の引き上げ、政策対応などの宿題を負うことになった。

 会期直前、フィリピンは未曽有の巨大台風・高潮被害に襲われ、甚大な被害を受けた。今回の会議の主要課題のひとつは、2℃目標達成に不可欠の各国の削減目標の引き上げであったが、各国からその必要性が強調されるものの、自らの関わる論点では削減困難な国内事情を掲げて議論を先送りしようとする姿勢が顕著であった。危機感に欠けていたことは否めず、途中で国際NGOなどが自主的に退場して抗議するという事態ともなった。

 こうした今回の会議の混迷に、日本の責任は決して小さくない。  日本はCOP19で途上国への資金援助は表明したものの、2009年に表明した90年比25%削減の約束を撤回し、あろうことか、政府内で秘密裡に定めた90年比3.1%という増加目標に取り換え、京都議定書以前に後戻りさせた。石原大臣は、原発停止のみを理由にこの増加目標を「野心的」と述べたが、世界の理解を得られなかったことはいうまでもない。2020年以降の目標についても2015年末まで表明を先送りすることを明らかにし、かつ「主要排出国の新枠組み参加への同意を前提」と述べ、日本のあからさまな削減への消極的態度を露呈した。国際社会の日本への不信を強め、COP交渉での各国の後ろ向きの対応を誘導してしまったといって過言でない。

 福島第一原子力発電所事故以来、市民は、原子力に依存した温暖化対策はありえず、かつ、原子力に依存しないエネルギー需給が可能であることを学んできた。今後日本は、2020年目標はもとより、2030年など中長期的削減目標の設定と実現のための政策措置が不可欠である。福島事故前の原発依存のエネルギー政策から脱却し、持続可能な低炭素経済社会の構築に向けて国民的議論を尽くし、2015年合意に向けた国内課題の宿題に直ちに取り組むべきである。

 

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