COP22 歩みを始めたパリ協定

急がれる日本の中長期ビジョン、目標引き上げ

2016年11月18日 モロッコ・マラケシュ
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 

COP22とともに、発効したパリ協定のもとでその第1回締約国会議(CMA1)がモロッコ・マラケシュで開催され、その詳細運用ルール策定に着手した。パリ協定と一体となる運用ルールは、パリ協定を実効性あらしめるために、目標引き上げを促すための仕組みづくりや途上国の対策や適応のための資金を確かにする重要な鍵となる。今回、詳細ルールを2018年(COP24)で決定することとし、それまでの作業工程に合意した。目標引き上げの鍵となる2018年の促進的対話も位置付けられ、準備が始まる。ここマラケシュで、世界の気候変動対策をパリ協定のもとに集約していく道筋がつけられたことになる。COP22期間中には、米国、カナダ、メキシコ、ドイツの脱炭素に向かう2050年ビジョンや、気候脆弱国連合の再生可能エネルギー100%目標の発表があった。パリ協定は、先導する意欲的な国々の力を借りながら、その実施に向けた歩みを始めたことになる。

歴史的なパリ協定が、その採択から1年を待たずに発効し、今回CMA1を迎えたことも、まさに歴史的な出来事である。さらに、COP22の開会直後に、米国の次期政権が、中国とともにパリ協定の採択を主導的にけん引してきたオバマ氏から、気候変動そのものに懐疑的といわれてきたトランプ氏に移行することが決まった。2001年のブッシュ政権の京都議定書離脱宣言とその後の議定書発効までの道のりを思い起こさせるに足る出来事ではあった。

しかし、それから15年も経過し、京都議定書は発効し、低炭素経済への道を開き、再生可能エネルギーの飛躍的拡大とコスト低減をもたらし、多くの国で先駆的炭素の価格付け政策がとられ、ビジネスの競争環境に脱炭素への道が組み込まれつつある。既に産業革命前からの気温上昇は1℃を超え、気候変動の被害はますます深刻化している。会議場で、私たちが立ち向かうべき道を逡巡し、道を見誤る動きはない。このような、国際社会の流れのなかに、これまでのトランプ氏の居場所はない。これこそがトランプ次期政権への強いメッセージである。

日本は、COP22で私たちが目にしたすべての動きに後れをとっている。気候変動政策はこの間一歩も前に進めていない。脱炭素経済を見通した時代認識を持ち、原子力と石炭火力をベースとしたエネルギー政策から脱却し、途上国経済の持続可能な発展に資する支援に転換するタイミングは、今もおいてない。日本は、2018年までの交渉の進展に向けて貢献するとともに、長期戦略の策定と国内の2030年目標の引き上げに向けて、パリ協定とともに歩み出す時だ。

以上

 

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【プレスリリース】COP22 歩みを始めたパリ協定 急がれる日本の中長期ビジョン、目標引き上げ(2016/11/18)

 

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