一般財団法人地球・人間環境フォーラム、NPO法人バイオマス産業社会ネットワークの呼びかけに応じ、気候ネットワークは、10月19日、長期脱炭素電源オークションにおいて、大規模バイオマス発電を対象外とすることを求める共同声明を発表しました。
本声明では、経済産業省が昨年度、長期脱炭素電源オークションの対象から外した大型バイオマス発電を、再び対象にする方向で施策を進めていることに対し、対象外とすることを要請しています。
長期脱炭素電源オークションは電力の脱炭素化を目指す制度で、2025年度のオークションではLNG専焼火力、蓄電池、原子力など730万kWが約定し、約定総額は4,230億円です(*1)。その原資は小売り電気事業者などが支払う容量拠出金であり、最終的には電力利用者が負担します。
大型バイオマス発電は、FIT/FIP制度において、発電コストの高止まりや持続可能性に関する批判などから、2026年度より新規認定の対象外となっています。
気候変動対策効果に疑問があり(*2)、FIT/FIP制度から外され、長期脱炭素電源オークションからもいったん対象外となった大型バイオマスを再び、電力利用者の負担で支援することは避けることを要請しています。
【共同声明】大規模バイオマス発電は長期脱炭素電源オークション制度の対象外に
~再び対象とすることは避けるべき~
大規模バイオマス発電は、温室効果ガス(GHG)排出量が石炭火力以上となる可能性があり、世界的にも再生可能エネルギーとしての支援対象から外されつつある。我々、バイオマスの持続可能な利用に関心をもつ環境団体は、大規模バイオマス発電を長期脱炭素電源オークションの対象に戻すべきではないと考える。
長期脱炭素電源オークションは、電力の脱炭素化を目指し、化石燃料を用いてつくられる電力を段階的に減らし、再生可能エネルギーなどGHGを排出しない「脱炭素電源」へ切り替えていくため、2023年度より開始された制度である。
2025年の経済産業省電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会において、2026 年度以降、FIT/FIP 制度の支援対象から大規模バイオマスが対象外となることを踏まえ、脱炭素電源オークション制度においても2026年度から、一般木質バイオマス・農産物の収穫に伴って生じるバイオマス固体燃料、バイオマス液体燃料は、対象となるバイオマス燃料から除外することが決定された[i]。
しかし、2026年6月の次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会電力安定供給ワーキンググループ(第3回)会合において事務局から、次回2027年1月の「第 4 回入札では、一般木質バイオマス・農産物の収穫に伴って生じるバイオマス固体燃料、バイオマス液体燃料は、引き続き対象とする」との提案があり[ⅱ]、「長期脱炭素電源オークションの第4回募集に向けて」においてもそのように記されている。[ⅲ]。
しかし以下の理由から、輸入バイオマスを燃料とする大規模バイオマス発電の新設、および既設発電所のバイオマス専焼への改修は、長期脱炭素電源オークションの対象とすべきではないと考えられる。
1.大規模バイオマス発電は、脱炭素社会における適切な電源ではない
1)バイオマス発電の燃焼によるGHG排出量は石炭より多い[ⅳ]
2)発電効率が低く、貴重な木材資源が燃焼による膨大な熱として廃棄される[ⅴ]
3)大規模バイオマス発電の燃料のほとんどが輸入され、生産地の森林生態系や地域の住民生
活に負の影響を与えている[ⅵ]
2.大規模バイオマス発電は、コストが高く、構造的に将来にわたって安価にならない
経済産業省発電コスト検証ワーキンググループにおいて、バイオマス(専焼)は、石油(専焼)に次いでコストの高い電源種として位置付けられている[ⅶ]ように、大規模バイオマス発電はコストが高い。かつ、日々燃料を燃焼させるが、バイオマスは脱炭素社会における貴重な資源であり、将来にわたって安価になることは想定しにくい。高コストかつ排出量の多い電源に長期的な補助・支援を行うことは、将来にわたって国民や事業者に過度な電気料金負担を強いる結果となる。
3.脱炭素社会におけるバイオマス利用
バイオマスは、マテリアル利用、気体、液体、固体と、化石燃料の代替となる貴重な資源だが、持続可能な利用ができる資源量には限りがある。一方、発電は太陽光、風力など、バイオマス発電よりもGHG排出が少なく、経済性にも優れる方法がある。一方、中高温の産業用熱利用や持続可能な航空燃料(SAF)のように、他の再生可能エネルギーでは当面の代替が困難なエネルギー需要があり、限られた量の持続可能なバイオマス資源は、今後、発電よりもそれらの分野に振り向けることが社会的経済的に合理的だと考えられる。
さらにバイオマス発電に対する支援は、EU、英国、韓国など国際的に終焉を迎えつつある[ⅷ]。
よって、気候や生産地の生物多様性・地域社会への悪影響を減らし、貴重なバイオマス資源をより合理的な利用に振り向けるためにも、大規模バイオマス発電を支援する制度を復活させることは避けるべきだと考えられる。
以上
署名団体
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
一般財団法人地球・人間環境フォーラム
ウータン・森と生活を考える会 (HUTAN Group)
熱帯林行動ネットワーク(JATAN)
マイティ・アース
Solutions For Our Climate (SFOC)
国際環境NGO FoE Japan
気候ネットワーク
原子力資料情報室
参考資料
・バイオマス産業社会ネットワーク第224回研究会 2024年9月18日
長期脱炭素電源オークションの現状と課題 講演者:松久保 肇(原子力資料情報室事務局長)
https://www.npobin.net/research/data/224thMatsukubo.pdf
・イーレックスとサムスンC&Tジャパン新潟を起点とした統合型脱炭素化プロジェクトの推進に合意
https://www.erex.co.jp/news/pressrelease/3585/
・「イーレックス新潟(仮称)」バイオマス発電所が長期脱炭素電源オークション落札 - 制度活用による安定的な脱炭素電源投資を実現 -
https://www.erex.co.jp/news/pressrelease/3173/
・気候ネットワーク【意見書】OCCTO 容量市場 長期脱炭素電源オークション募集要綱(応札年度:2026年度)に関する意見(2026年8月3日)
https://kikonet.org/content/39980
・気候ネットワーク 2026年8月10日(月)【パブコメ緊急ウェビナー】LNG拡大政策と長期脱炭素電源オークションの歪みを問うー日本のエネルギー政策はどこへ向かうのかー
https://kikonet.org/content/39959
・次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 電力安定供給ワーキンググループ 長期脱炭素電源オークションの第4回募集に向けて(案) 長期脱炭素電源オークションガイドライン(案)|e-Govパブリック・コメント(〆切済)
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620226020&Mode=0
・長期脱炭素電源オークションガイドライン(案)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/stable_power_supply_wg/pdf/006_s03_00.pdf
長期脱炭素電源オークション約定結果
第1回 2023年度
・エクイスバイオエネルギー・ジャパン株式会社 苫東バイオマスパワーステーション 100,000kW
・石狩湾新港バイオマス発電合同会社 石狩湾新港バイオマス発電所 99,258kW
https://www.occto.or.jp/assets/market-board/market/oshirase/2024/files/240426_longauction_youryouyakujokekka_kouhyou_besshi_ousatsu2023.pdf
第2回 2024年度 バイオマスなし
https://www.occto.or.jp/assets/market-board/market/oshirase/2025/files/250428_longauction_youryouyakujokekka_kouhyou_besshi_ousatsu2024.pdf
第3回 2025年度
・イーレックス株式会社 イーレックス新潟(仮称) 100,926kW
https://www.occto.or.jp/assets/various/capacity-market/jitsujukyukanren/2025_boshuyoukou_long/260513_longauction_youryouyakujokekka_kouhyou_besshi_ousatsu2025.pdf
第4回 2026年度 2027年1月(応札受付予定)
引用
[i] 経済産業省総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会
次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 制度検討作業部会 第二十二次中間とりまとめ(2025年8月) p42http
s://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/system_review/pdf/20250827_1.pdf
[ⅱ] 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 電力安定供給
ワーキンググループ(第3回)資料3 p7
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/stable_power_supply_wg/pdf/003_03
_00.pdf
需要増に対応して脱炭素電源を少しでも多く確保していく必要がある中で、バイオマスの一般木質等について、類型そのものを本制度の支援対象から除外するのではなく、他の脱炭素電源との価格競争に劣後しないのであれば支援対象としていくことが適切ではないか。このため、第4回入札では、一般木質バイオマス・農産物の収穫に伴って生じるバイオマス固体燃料、バイオマス液体燃料は、引き続き対象とすることとしてはどうか。」
[ⅲ]長期脱炭素電源オークションの第4回募集に向けて p8
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/stable_power_supply_wg/pdf/006_s0
2_00.pdf
[ⅳ]Chatham house:Woody Biomass for Power and Heat Impacts on the Global Climate.(2017) p15
https://www.chathamhouse.org/sites/default/files/publications/research/2017-02-23-woody-biomass-glob
al-climate-brack-final2.pdf
[ⅴ]大規模バイオマス発電では熱利用が困難であり、ほとんど行われていない。熱利用のないバイオマス発電の効率は30%台以下である。そのため温室効果ガス(GHG)排出量が他の再生可能エネルギー電力よりも著しく多い。
[ⅵ]大規模バイオマス発電では年間数十万tのバイオマス燃料を必要とするが、国内では大量の調達が困難であり輸入燃料に頼ることとなる。現在稼働している大規模バイオマス発電では、木質ペレットやPKSを燃料としているが、木質ペレットのなかには、炭素蓄積量の多い森林を皆伐して生産されたものが含まれる*。天然林原生林等を伐採皆伐した場合、その後植林が行われても元の森林の炭素蓄積への回復には長い年月を要し、ネットゼロと整合せず、海外からの長距離輸送・加工・集荷プロセスを含めたライフサイクルで石炭火力以上のGHG排出となる。こうした貴重な森林の伐採や炭素蓄積の問題は、森林認証によって担保することが困難であることが指摘されている**。
泊みゆき+飯沼佐代子編著『私たちの電気代が支える偽りの気候変動解決策』築地書館 2026年
~森林減少ゼロに向けたサプライチェーンの未来~日・インドネシア森林保全シンポジウム2026 セッション
3「バイオマス」https://www.gef.or.jp/news/event/260722-23japan_indonesia_forest_symposium/
[ⅶ]令和7年2月6日発電コスト検証ワーキンググループ 発電コスト検証に関するとりまとめ p4
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/cost_wg/pdf/cost_w
g_20250206_01.pdf
[ⅷ]EUでは、2023年に発効したREDⅢにおいて森林由来のバイオマス発電への支援は原則行わない方向性を示したこととなった。カスケード利用の義務化や、発電のみ行う発電所(バイオマス専焼および混焼の両方)の支援停止、また、生物多様性の高い土地(一次林や老齢林など)や炭素貯蔵量の多い土地(湿地や泥炭地など)に由来する燃料を支援しないことなどが盛り込まれた。
北米から大量の木質ペレットを輸入してきた英国においても、政府が、2027年度以降2031年度までのバイオマス発電量を大幅に制限する方針を決定した。その結果、通年の発電量は従来の約半分程度に減ると見込まれているバイオマス発電への補助金を段階的に削減している。英国では、電力需要は風力と太陽光で十分賄うことが可能で、燃料代が高く、膨大な補助金を受けてきた輸入バイオマス発電は不要である、との認識が広がっている。
日本と同じく輸入バイオマスによる大型バイオマス発電を推進していた韓国では、2024年12月に「再生可能エネルギー証書」(REC)として知られる間接的な補助金を、ほとんどの輸入バイオマス発電のカテゴリーで段階的に即時に廃止または段階的に縮小すると発表した。
これらの決定は、輸入バイオマス発電が燃料生産地の生態系・地域社会に及ぼす悪影響、木質バイオマスの燃焼が石炭以上のGHGを生ずること等に対する批判の高まりを受けて、森林由来のバイオマスを燃料とする発電が、気候変動対策として有効でないという理由からおこなわれている。
*Wiser with Wood 賢い木材の使い方 森林、気候、公衆衛生および他の木材利用産業をより適切に保護するためのEU再生可能エネルギー指令改定版(RED III)国内法化ガイドhttps://foejapan.org/issue/20240517/17596/
**UK biomass phase-out is now in sight | Ember https://www.gef.or.jp/news/event/250120southkoreabiomass/
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バイオマス産業社会ネットワーク 泊 みゆき
Email:mail[@]npobin.net
地球・人間環境フォーラム 飯沼佐代子、鈴嶋克太
Email:event[@]gef.or.jp
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