気候ネットワークは、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が行った「容量市場 長期脱炭素電源オークション募集要綱(応札年度:2026年度)及び長期脱炭素電源オークション 容量確保契約約款についての意見募集」に対して、募集要綱に関する以下の意見を提出いたしました。
第3章募集概要について
(1) 募集量
ア 本オークションにおける脱炭素電源(以下「脱炭素電源」という。)の募集量は 500 万キロワット(kW)になります。
※脱炭素火力(新設・リプレースのうち 水素専焼、水素混焼若しくはアンモニア専焼又は既設火力の改修のうち水素専焼、水素混焼、アンモニア専焼、アンモニア混焼若しくは CCS 付火力)は 50 万 kW(※1)
※1:新設・リプレースの脱炭素部分の容量と既設火力の改修の脱炭素部分の容量の累計
脱炭素火力50万kWの募集上限について、既設火力の改修を対象から除外すべきである。
募集要綱案では、脱炭素電源500万kWのうち、脱炭素火力の募集上限を50万kWとし、その対象に、水素・アンモニアの混焼やCCSの導入による既設火力の改修を含めている。募集要綱案では、既設火力の改修について、水素は10%以上の混焼、アンモニアは20%以上の混焼、既設石炭火力および既設LNG火力へのCCS導入は20%以上のCO2回収を対象としている。このため、50万kWの募集枠によって維持され得る既設火力の設備容量は、アンモニア20%混焼またはCCSのCO2回収率20%の場合には最大250万kW、水素10%混焼の場合には最大500万kWに達する。
「脱炭素火力50万kW」という表記から受ける印象とは異なり、実際にはその数倍から10倍もの既設火力設備に対して、長期的な収入を保証し、運転継続を支援することになり得る。このような募集量の設定は、既設火力の退出を促すどころか、大規模な延命を可能にするものであり、気候変動対策の観点から到底容認できない。
とりわけ石炭火力へのアンモニア20%混焼の場合、残る熱量の約80%は引き続き石炭によって賄われる。アンモニアを一部混焼したとしても、石炭の燃焼とそれに伴う多量のCO₂排出が続くことに変わりはない。さらに、燃料アンモニアの製造段階で化石燃料が使用され、十分な排出削減措置が講じられなければ、ライフサイクル全体での削減効果は一層限定的になる。
CCSについても、CO₂の回収がわずか20%以上にとどまる改修を「脱炭素電源」と位置付けることは不適切である。仮に回収率が20%にとどまれば、残る約80%のCO₂はそのまま大気中に排出される。設備の一部分に混焼や回収設備を導入しただけで、発電設備全体を脱炭素化したかのように扱うべきではない。
G7気候・エネルギー・環境大臣会合では、排出削減対策の講じられていない既存石炭火力を2030年代前半、または1.5℃目標と整合する時間軸で廃止することが合意されている。また、その廃止までの間も、石炭火力の利用を1.5℃目標と整合する水準まで可能な限り削減することが確認されている。
20%程度の混焼やCO₂回収を理由として石炭火力を長期脱炭素電源オークションの対象とし、長期間にわたる容量収入を保証することは、このG7合意に反する方向で既設石炭火力を維持することにつながる。2030年代前半に廃止すべき設備に対して、長期的な投資回収を保障する制度設計には明らかな矛盾がある。
また、水素・アンモニア混焼率やCCSのCO2回収率について、制度参加時の最低水準が10%または20%にすぎない一方、制度適用期間を通じた実際のCO₂排出量や、脱炭素化が実現する時期が十分に担保されていない。将来的に混焼率や回収率を引き上げる計画を提出させるだけでは、石炭やLNGの消費とCO₂排出の固定化を防ぐことはできない。
第3章募集概要について
(1) 募集量
イ LNG 専焼火力の募集量は 600 万 kW になります。
<意見>
LNG専焼火力の募集量600万kWは、過大であり、撤回すべきである。
LNG専焼火力については、制度創設時には、2023年度から2025年度までの3年間を通じた募集量を合計600万kWとする設計であった。ところが、第1回オークションだけで575.6万kWが落札され、当初想定した3年間の募集枠をほぼ使い切った。これは、600万kWという募集量自体が電力需給や脱炭素化との整合性を十分に検証した上で設定されたものではなく、事業者の建設計画を広く受け入れる仕組みとして機能したことを示している。
それにもかかわらず、その後は当初の「3年間で600万kW」という上限を維持するのではなく、2024年度、2025年度にそれぞれ200万kWの募集枠が追加され、さらに今回、新たに600万kWを募集しようとしている。今回分まで含めれば、制度開始以降に設定されたLNG専焼火力の募集枠は累計1,600万kWに達する。当初の上限が事実上意味を失い、十分な政策評価や排出削減との整合性の検証もないまま、募集枠がなし崩し的に拡大されていることは極めて問題である。
世界の平均気温上昇を1.5℃に抑える目標の達成が極めて危ぶまれる中、新たなLNG火力の大量建設を促進する政策は、温室効果ガスの迅速な削減という要請に明確に逆行する。LNG火力は石炭火力より燃焼時のCO₂排出量が少ないとしても、化石燃料を燃焼する以上、発電時に多量のCO₂を排出する。また、天然ガスの採掘、液化、輸送、再ガス化の過程では、強力な温室効果ガスであるメタンの漏出や、多量のエネルギー消費に伴う排出も発生する。
本オークションで落札された電源には原則20年間、LNG専焼火力については希望により最長30年間にわたって容量収入を得られる仕組みが設けられている。今回募集される設備が2030年代に運転を開始すれば、2050年前後まで制度的な支援を受けながら稼働する可能性がある。 これは、今後数年間で大幅な排出削減を実現しなければならない時期に、CO₂排出を長期にわたって固定化する、いわゆるカーボン・ロックインを招くものである。
将来、水素、アンモニア、合成メタン、CCSなどによって脱炭素化するロードマップを提出させるとしても、それらの燃料・技術の供給量、コスト、削減効果、実現時期は確実ではない。将来の技術転換の可能性を前提として、現時点で大量のLNG専焼火力を建設することは、排出削減策として合理的とはいえない。脱炭素化が実現しなければ、設備の早期廃止による座礁資産化、または高コストな燃料転換やCCS導入の費用が、将来の電力消費者に転嫁されるおそれがある。
したがって、LNG専焼火力600万kWの募集は中止すべきである。少なくとも、新たな募集を行う前に、これまでに落札されたLNG火力の想定設備利用率、年間および制度適用期間全体のCO₂排出量、燃料調達リスク、脱炭素化の実現可能性、電力需要家の負担、再生可能エネルギー・蓄電池・需要側資源による代替可能性を総合的に検証し、その結果を公開する必要がある。
第3章募集概要について
(1) 募集量
ア 本オークションにおける脱炭素電源(以下「脱炭素電源」という。)の募集量は 500 万キロワット(kW)になります。
※蓄電池(リチウムイオン蓄電池に限る。)は 40 万 kW、蓄電池 (リチウムイオン蓄電池以外の蓄電池に限る。)は 40 万 kW(※2)
本来、本制度において優先的に支援すべきなのは、既設火力を延命するための水素・アンモニア混焼や部分的なCCSではなく、再生可能エネルギーの大量導入を可能にする蓄電池、揚水発電、長期エネルギー貯蔵システムなどの調整力である。
今回の募集要綱案では、リチウムイオン蓄電池40万kW、リチウムイオン以外の蓄電池40万kW、揚水式水力・長期エネルギー貯蔵システム40万kWとされており、これらを合計しても120万kWにとどまる。一方で、LNG専焼火力には600万kW、既設火力の延命につながり得る脱炭素火力には50万kWの枠が設けられている。この配分は、再生可能エネルギーを主力電源化し、化石燃料から脱却するという政策の方向性と逆行している。
太陽光や風力の導入拡大に伴って必要となるのは、火力発電所を長期間維持することではなく、余剰電力を蓄え、需要が高い時間帯に供給できる蓄電設備や、需要側の調整力、地域間連系線などの柔軟性を高めることである。すでに蓄電池と太陽光発電または風力発電の組み合わせが火力のコストを下回ることが国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によって報告されており、蓄電池等の導入を拡大すれば、再生可能エネルギーの出力抑制を減らし、化石燃料火力への依存を低下させるとともに、燃料価格の変動や海外からの燃料調達に伴うリスクの軽減にもつながる。
したがって、既設火力の水素・アンモニア混焼や部分的なCCSへの募集枠は撤廃または大幅に縮小し、その分を蓄電池、揚水発電、長期エネルギー貯蔵システムなどの募集量の大幅な拡大に振り向けるべきである。長期脱炭素電源オークションは、化石燃料を使用する設備を長期にわたって維持する制度ではなく、再生可能エネルギーを加速度的に拡大できる電力システムへの転換を支える制度として再設計すべきである。
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