2025年11月6日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵

2025年11月10日~21日にかけて、ブラジル・ベレンにて国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)が開催される。
2025年は「京都議定書」の発効から20年、「パリ協定」の採択から10年という節目の年であり、COP26決定(2021年、英国・グラスゴー)が2020年代を気候変動対策にとって「決定的に重要な10年」と位置づけた中間年を迎えるが、私たちの世界は温暖化が進み、世界各地で気候災害の被害が顕在化している。さらにアメリカのトランプ政権がパリ協定からの脱退を表明し、気候変動問題に立ち向かう国際協調体制が揺らいでいる。一方で、パリ協定の目指す1.5℃目標に少しでも近づけるよう、さまざまなアクターによる努力も続けられている。COP30ではこうした動きを集め、エネルギー転換と気候正義の実現に向けた国際協調への決意を示し、具体的な行動を促す合意形成をおこなうことが求められる。

1.5℃目標に整合した、より野心的な2035年目標の提出を促す

COP30に先立ち、10月28日にUNFCCC事務局が「NDC統合報告書」を公表した。各国の次期NDC(2035年排出削減目標)を取りまとめ、1.5℃の道筋にどれだけ近づいたかを評価することが期待されていたが、報告書に取りまとめられたのは9月末時点で提出されていた64ヵ国のNDCに留まった(2019年の世界全体の温室効果ガス排出量の30%をカバーする範囲)。さらなる評価には、それ以外の国々の正式な提出が待たれる。NDCはパリ協定における野心強化の仕組み(ラチェットアップ・メカニズム)を支える柱の一つである。COP30において、1.5℃目標に整合する水準に少しでも近づけるために、各国が野心的な排出削減目標を掲げるよう促し、気候変動対策を強化する機運を再び高められるかが焦点となる。また、すでに提出をしている国々に対しても、NDCの見直し・強化を促すメッセージを発信することが望ましい。

世界全体で気候変動問題に取り組むため、人権を核とした国際協調を再構築する

第2次トランプ政権誕生後、気候変動・エネルギー分野においてもアメリカの動向が注目を集めてきた。気候変動の国際交渉においてもアメリカをはじめとした自国第一主義が台頭するなか、議長国ブラジルは、「Global Mutirão(グローバル・ムチラオン:世界中のあらゆるアクターの行動を集約し、共同で気候変動に立ち向かうという意味合いで使われる)」をCOP30のスローガンに掲げている。たとえアメリカ不在のCOPであったとしても、気候変動の脅威に対し世界中で人々が協力し合い、この課題に取り組んでいくことが今こそ求められる。
2025年7月23日には、国際司法裁判所(ICJ)が「気候変動に関する国の義務」に関する勧告的意見を発表し、国の「法的責任」を明示した。気候変動問題の解決には、各国の協力と、個人、社会、政治の各レベルでの人間の意思と叡智が必要とも述べている。
気候変動による被害を最小化し、誰もが安定した気候のもとで暮らすためには、パリ協定のもとで野心を高め、脱化石燃料時代への転換を喫緊に進めなければならない。気候変動対策の実施に必要な支援を進めるための「気候資金」の動員、誰も取り残さない持続可能な社会への「公正な移行」の実現に向け、実効的な仕組みづくりの議論が進められることも期待したい。

先進国であり歴史的な温室効果ガス排出責任を負う日本政府は、その責任に応じた公平な削減負担が求められてきた。日本が新たな政府のもとでパリ協定1.5℃目標と整合する気候変動対策を打ち出し、世界全体の野心の引き上げと行動の加速に貢献することが求められる。その第一歩として、COPでの強力な政治的メッセージ発信に貢献することが不可欠である。

Mutirão=ブラジルの先住民の伝統に根差した共同作業や相互の助け合いの仕組みを指す言葉

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