2025年5月8日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵

 気候ネットワークは資源エネルギー庁が実施している電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会第二十次中間とりまとめ(案)等に対する意見募集(2025年5月8日〆切)に対し、以下の意見を提出しました。

意見内容

1.容量市場の抜本的課題について

 容量市場は、メインオークションを通じて4年後の供給力を確保するしくみだが、事実上既存の原子力、火力、水力発電所を維持するものだ。これが、気候変動対策に逆行することは2020年の導入当初から指摘されてきた。気候変動対策の国際ルールであるパリ協定が2020年からスタートしたタイミングと同時にスタートしているが、実際、それから4年が経過し、本来は市場から早期退出させなければならない石炭火力や原子力が維持される基盤となっており、可及的速やかに増やすべき太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入は頭打ちとなっている。容量市場がもたらした負の側面を客観的に評価することが不可欠であるが、今回のとりまとめには、根本的な容量市場の欠点について何ら触れられていない。

 見直しの議論においては、抜本的なゼロベースの見直しを含めて検討すべきである。

2.容量市場における今後の論点(P4)

(1)必要供給力について

 容量市場は、最大電力需要に合わせて厳気象対応や稀頻度リスクが考慮され、過剰に「供給力」が確保されるしくみとなっている。必要供給力として調達目標が大きくなれば、約定価格・約定総額ともに大きくなり社会的コスト増加につながる。電力需給システムの在り方を根本的に見直し、容量不足に備えて追加的な容量を確保する戦略的予備力を採用する方法などを検討すべきである。

 2025年の容量市場において確保されている供給力は約18,418万kW(P9)である。しかし、2020~2024年度における全国最大需要実績の推移<電力需給検証報告書2024年10月、P6>をみると、2020年は16,639 万kW、2021年は16,451 万kW、2022年は16,630万kW、2023年は16,089万kW、2024年は16,095 万kWとなっている。いずれも7月下旬から8月上旬にかけて出現したものであり、最大需要も下がる傾向にあるにもかかわらず、18,000万kW超の目標調達量を毎年設定し、既存電源が維持され続けては、健全なエネルギー転換を促すことができない。

(2)脱炭素の視点について(P5)

 脱炭素の観点から検討すべきこととして、「非効率石炭火力に対しての稼働抑制誘導措置」しか触れていないが、CO2を排出する電源については、以下のような検討を項目に加えるべきである。

・石炭火力全体の稼働抑制から廃止までの段階的削減(容量市場の対象外とすることを含む)

・石炭火力の混焼(アンモニアやバイオマス)による電源の段階的廃止(容量市場の対象外とすることを含む)

・石油・LNG火力の使用抑制(容量市場の対象外とすることを含む)

(3)非効率石炭火力について

「非効率石炭火力に対しての稼働抑制誘導措置」として設備利用率50%を超えた場合に減額するとあるが、設備利用率50%でも排出量は非常に多く、厳気象対応や緊急時以外は稼働を止めることを条件とすべきである。

(4)競争上の観点からの論点

 容量市場は、大手電力会社にとっては、発電事業者として受け取る容量確保契約金と小売り事業者として支払う容量拠出金を相殺できるのに対して、発電設備を持たない小売り事業者にとっては多額の容量拠出金を支出しなければならず、公平公正な市場が確保されているとは言えない。この点を論点として加え、改善策を考慮するべきである。

(5)価格水準、コスト低減の視点について

 現在、約定方式としてシングルプライスオークションが採用されている。マルチプライスオークションの場合、価格のつり上げが起きることがデメリットにあげられ、結果的にシングルプライスオークションが採用されたが、現状では約定価格が上限価格に張り付く傾向にあること、大手電力会社が価格操作できる優位性をもっていることなどから、結果的には、総額はマルチプライスオークションで想定される金額より、シングルプライスオークションの方が高くなっているのではないかと懸念される。コスト総額を低減する視点を追加すべきである。

3.石炭混焼バイオマスの市場退出ペナルティ(P7)

 石炭混焼バイオマス電源が容量市場のオークションで落札された場合、FIT/FIP 制度による支援の対象外となり、市場退出を行わなければ 2024 年度以降に FIT 制度の支援を受けられない。これは当然そうすべきであるし、むしろ石炭混焼バイオマスは大量のCO2を排出することから容量市場の対象からはずすべきである。しかし今回、石炭混焼バイオマスの 市場退出については、市場退出ペナルティを低減するなどとしている。 

 石炭混焼バイオマスはFITの対象になっていたことも問題であり、さらに容量市場からも撤退すべき発電所である。対象になっていること自体が問題だが、対象とし続けるのであれば、市場退出のペナルティを緩める方向には反対である。

参考

電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会第二十次中間とりまとめ(案)等に対する意見募集について

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