米国、パリ協定に正式復帰。気候外交の新展開へ
~日本政府は脱炭素への外交戦略・国内政策を打ち立てるべき~
2021年2月19日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵
19日、米国政府は再び正式に気候変動に関するパリ協定の締約国となった。米国オバマ政権はパリ協定の採択に貢献し、2016年9月3日にパリ協定を受諾して、その早期発効を導いた。その後のトランプ政権はパリ協定からの離脱を表明し、2020年11月4日に法的にその効力が生じていたが、バイデン=ハリス政権は就任直後の今年1月20日に再参加を通知し、本日19日、正式に復帰した。国際社会は今、1.5℃目標とそのための2050年カーボンニュートラル実現の正念場を迎えている。米国バイデン=ハリス政権のパリ協定への復帰を歓迎し、国の内外でその責任を果たしていくことを期待している。
既にバイデン大統領は気候変動を米国外交のあらゆる側面及びすべての国内政策で考慮する方針を明らかにし、閣僚に指示をしている。4月22日には各国政府の首脳を招いて気候サミットを開催し、気候変動対策の野心向上を促す予定だ。気候変動担当の大統領特使に任命されたジョン・ケリー氏は今年11月にグラスゴーで開催予定のCOP26を「これまでで最も重要な会議」と位置づけ、「2030年に向けて石炭フェーズアウトをこれまでの5倍のスピードで進めなければならない。再エネの拡大をこれまでの6倍のスピードで進めなければならない」と檄を飛ばしている。気候変動をめぐる国際政治・国内政策は新次元に移行しつつある。
日本もそのうねりのなかにいる。だが、昨年10月、ようやく菅首相が2050年カーボン・ニュートラルを宣言したものの、その「グリーン」を冠した「グリーン成長戦略」の中身は、旧態依然とした気候・エネルギー政策から脱しようとするものとなっていない。再エネを軽視し、2050年でも現実性のない技術頼みの原子力と火力に30~40%も委ねたもので、原子力・石炭推進等のこれまでの延長上にある。喫緊の2030年削減目標の引き上げの動きはさらに乏しい。カーボン・ニュートラル宣言前からエネルギー基本計画改定に向けた議論が始まっているが、まさに首相の宣言の真価が問われている。
日本においてもコロナ禍からのグリーン・リカバリーを果たすために、「2030年までに石炭火力の段階的廃止」「再生可能エネルギー100%への公正な移行(ジャスト・トランジション)」を明確に掲げ、COP26までに2030年削減目標を引き上げる意思を示さなければならない。バイデン大統領が主導する4月の気候サミットは、日本の脱炭素への外交戦略・国内政策の転換を世界に示す最後の機会である。
以上
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【プレスリリース】米国、パリ協定に正式復帰。気候外交の新展開へ ~日本政府は脱炭素への外交戦略・国内政策を打ち立てるべき~(2021年2月19日)