IPCC第五次評価報告書
危機を回避するために日本でも叡智ある選択と行動を
2013年9月27日
認定NPO法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵
本日27日、スウェーデンのストックホルムにおいて、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書第一作業部会による最新報告書が発表された。新しい報告書では、気候変動が人間の温室効果ガスの排出によって起きていることが、これまで以上に確実であると示された。今まさに地球の気温が上昇し、北極海氷や氷河が溶け、海面上昇が加速化しており、日本国内でも洪水や各地最高気温の記録更新など異常気象が多発している事態の深刻とともに深く受け止めなければならない。加速的に進行する気候変動の脅威を防ぐために残された時間はなく、温室効果ガス排出削減対策の先送りは決して許されない。
今、日本政府の地球温暖化対策は、気候変動の深刻な影響や緊急性に対する認識が極めて希薄だと指摘せざるを得ない。2009年9月に国連で鳩山首相(当時)が2020年に1990年比25%削減を表明したが、その後、実効ある対策には踏み切らず、キャップ&トレード型排出量取引など包括的な対策を実施するための地球温暖化対策基本法の制定にも至らなかった。2013年からはじまった京都議定書第二約束期間の下で排出削減義務を負わず、自民党に政権が交代してからは、2020年の中期目標もゼロから見直すと安倍首相が公言し、未だに中期目標すら示せていない。そして、石炭火力発電所の稼働を増やし、2009年度にリーマンショックの影響下で一時的に減ったCO2排出量は翌年から増加に転じ、2011年度には90年比3.7%の増加となった。2011年の東日本大震災以降、原発の停止は火力発電所の稼働につながり排出増の一部要因にはなっているものの、グリーン経済を成長させ大幅削減に向けるための抜本的対策を先送りしてきたことが、排出増の最大の要因である。
日本は、原発問題や温暖化対策の課題が山積する中で、2020年に東京にオリンピックを招致することになった。まず、節目となる2020年の削減目標を国際社会にしっかりと示し、2050年80%以上削減するという長期目標に向けた道筋を描いていくことが必要だ。
そして今、私たちに求められているのは、IPCCの新しい報告書で示された気候変動の深刻な状況を受け止め、持続可能な社会に向けた未来に向けた選択をし、エネルギー多消費型の重厚長大な産業構造から大きく社会の舵をきる覚悟をし、行動をとっていくことである。日本政府が、これまでのように原子力や化石燃料に依存するのではなく、再生可能エネルギーと省エネルギーを温暖化対策の柱に位置づけ、大胆なエネルギー・環境政策の転換に向けてイニシアティブをとることに期待したい。
以上
プレスリリース本文
プレスリリース「IPCC第五次評価報告書 危機を回避するために日本でも叡智ある選択と行動を」(2013年9月27日、PDF)
*このファイルより、国際的なNGOのネットワーク・気候行動ネットワーク(Climate Action Network;CAN)のニュースリリースもご覧いただけます。
参考ウェブページ
●気候変動に関する政府間パネル(IPCC)ウェブサイト
IPCCについてはこちらをご覧ください。英語です。
●気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第五次評価報告書ウェブサイト
こちらより、IPCC第5次評価報告書第1作業部会(自然科学的根拠)政策決定者向け要約(Summary for Policymakers)を閲覧・ダウンロードいただけます。英語です。
●IPCCによるプレスリリース「『人間の気候への影響は明らか』IPCC報告」(原文"Human influence on climate clear, IPCC report says" 27 September 2013)
IPCC第5次評価報告書について、IPCCが2013年9月27日に発表したプレスリリース(英語)です。クリックをすると原文のPDFファイルがそのまま開きます。
●気候行動ネットワークによるニュースリリース(原文"Government action: all that’s missing as new report confirms climate crisis" 27 September 2013)
IPCC第5次評価報告書について、気候行動ネットワークが9月27日に発表したニュースリリースです。「気候行動ネットワーク(Climate Action Network;CAN)は、気候変動問題に取り組む、世界の850のNGOの国際的なネットワークです。
●環境省 IPCC第4次評価報告書について
環境省によるウェブページ。2007年に発表された第4次評価報告書(日本語訳)や、IPCCの原則と手続などに関する「IPCC声明」の環境省仮訳が掲載されています。日本語です。
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