米国主催気候変動サミットにおける
日本の2030年削減目標強化は50%以上に引き上げるべき
2021年4月22日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵
アメリカ主催のオンラインでの気候変動サミットが22日・23日に開催され、主要国の首脳や地方自治体、企業らも参加する。本サミットは、地球の平均気温上昇を1.5℃に止めるために、気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)に向けて主要国の対策強化を図ることを目指したものであるが、政権交代によってアメリカがパリ協定に復帰し、前政権からの方針転換を世界に発信し、世界の気候変動への取り組みを加速させることを意図したものでもある。
世界2番目の排出国であるアメリカが、トランプ政権下において世界と協調的にグローバルな気候変動問題への取り組みから完全に背を向けてきた過去4年に決別し、再び積極姿勢に転じたことで、COP26に向けた行動強化の国際的機運がさらに高まることを期待したい。
これに先立ち、菅義偉首相が現行の2030年26%削減(2013年比)目標を46%へと引き上げることを表明した。これまで2013年比26%削減に固執してきたことに照らせば、この表明は、危険な気候危機を回避するために、他の主要先進国とともに2030年までの行動強化を通じて責任ある行動をとろうとするものと言える。しかしながら、パリ協定の1.5℃の気温上昇に抑制するためには、この目標では十分ではない。Climate Action Trackerの指摘する、1.5℃目標に整合させるためには62%(2013年比)の削減が必要との知見を踏まえ、気候ネットワークでは、60%以上の削減を求めてきた。
イギリスは、5年前に58%としていた削減目標を昨年68%に引き上げ、さらに、今回、2035年までに78%(いずれも1990年比)に引き上げることを表明した。EU全体としても40%削減から55%削減(1990年比)に引き上げている。本日、主催国のアメリカは、2030年までに2005年比50~52%削減を発表し、雇用を創出し、クリーンエネルギーを主導することを目指すとしている。これらの国は目指す脱炭素経済の姿も示している。しかしながら、日本の削減目標は半減に届かず、その実現の道筋の議論は従来型で、1.5℃目標との整合性に欠けるものである。COP26に向け、もう一段の2030年目標引き上げと、脱炭素・再エネ主力電源化の道筋を築く必要がある。
今回の目標表明を受け、政府には、以下を要請する。
- G7主要国首脳国会議までにさらなる目標引き上げを行い、60%削減目標を含むNDCを提出するよう国内議論を進めること。
- エネルギーミックスの見直しにおいて、石炭火力・原発の2030年全廃にコミットし、再生可能エネルギーを50%以上に増やすことにより、より大きな削減の深掘りを図ること
- エネルギー分野及びその他の各分野(非エネルギー起源、CO2以外のガス)の削減の深掘りも図ること
- カーボンプライシング等の削減を裏付ける政策措置の強化を図ること
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