【プレスリリース】

大手生保・資産運用会社5社が三菱商事にエンゲージメントを実施と回答
ベトナム新規石炭火力事業からの撤退に向け更なる取り組みの強化を

国際環境NGO FoE Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
メコン・ウォッチ
国際環境NGO 350.org Japan

国内の5つの環境団体は三菱商事株式会社の主要株主98社[1]に対し、ベトナムでの新規石炭火力発電事業を続ける三菱商事にエンゲージメント、および必要に応じて投資撤退(ダイベストメント)を行うことを求める要請書を2020年12月に送付した[2]。1月28日までに、受領確認のみも含め15社から返答があり、大手生命保険会社・資産運用会社5社が三菱商事へのエンゲージメントを行っていると回答した。三菱商事の株主に対し、環境団体からダイベストメントを求める要請書を送るのは2020年3月に続き2度目となる[3]

三菱商事は、ベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業(以下、ブンアン2)を推進しており、この事業をめぐっては国内外の市民団体や若者グループだけでなく、機関投資家等からも中止を求める声が上がっていた[4]

NGOから機関投資家に送付した要請書は、株主の立場から三菱商事に対してブンアン2から撤退するよう求めること、特に株主総会にて、同事業からの撤退を求める株主提案を行うこと、さらにエンゲージメントを行っても、三菱商事が石炭火力発電事業から撤退しない場合は、三菱商事からのダイベストメントを行うことを求めたものだった。

寄せられた回答の中にはダイベストメントを行っている、もしくはダイベストメントを検討するとしたものはなかったが、三菱商事に対しエンゲージメントを行っていると回答したものが5件あった。

ある国内機関投資家は、「石炭火力事業に関し、環境への甚大な影響を鑑み厳しいESG評価をしており、企業との面談で長期的な企業価値を損ねる既存事業及び事業計画に関して縮小及び見直しをエンゲージメントを行い、さらにエンゲージ内容が長期に渡り受け入れられない企業に関しては、議決権行使を含む株主としてのアクティブ・オーナーシップを執行し圧力を継続している」と回答し、一歩踏み込んだ取り組みも窺えた。

他方、国内外からの反対や懸念の声が依然強いにもかかわらず、12月末に銀行団がブンアン2に係る融資契約の締結に踏み切ったことで、三菱商事にとっては弾みがついたと同時に、同社のブンアン2を継続する姿勢はより鮮明になった形となっている。機関投資家のエンゲージメントの内容についてNGOが得られた情報は限られているが、要請書を受け取った機関投資家のなかには脱石炭方針を持つ機関もある。今後、要請書で求めた株主総会での行動も含め、機関投資家は、環境汚染防止・気候変動対策を実効性のあるものとするためにも未着工であるブンアン2から即時撤退するよう三菱商事に対しエンゲージメントや働きかけを強めるべきである。そして、三菱商事は、投資家や市民の声を聞き、撤退という英断を下すべきである。

以上

【回答概要】

回答総数:15
・うち国内機関投資家:11
・うち海外機関投資家:4

脚注
  1. 同じグループに属する複数の企業含む
  2. 「国内環境団体、石炭火力発電事業を続ける三菱商事の主要株主98機関にダイベストメントを求める要請書を送付」(Link)  2020年12月23日
  3. 1度目のレターに寄せられた回答の中身の多くは受領連絡と要請事項への回答を差し控えるというものであったが、今回は気候変動対策の必要性への認識が読み取れ、投資先企業に係る戦略について投資家が積極的に意思表示を始めている傾向が見られた。(Link)
  4. 例えば北欧最大の機関投資家Nordea Asset Managementは、アムンディ、AP7、アリアンツ等、他の機関投資家と連名で、同事業に関与している(もしくは関与するとされる)公的金融機関や企業に対して2020年10月に書簡を送ったことを明らかにしている。

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