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気候変動問題に取り組む国内の5つの環境NGOは、新規の石炭火力発電の建設を推進し続けている三菱商事からのダイベストメント(投融資引き揚げ)を検討してもらうため、情報提供および検討要請として、「三菱商事株式会社からのダイベストメントを求める要請書」とともに、三菱商事の石炭火力発電事業の概要を示したサマリーシートを、3月上旬に大株主及び主要融資銀行等 51社(うち国内26、別部署への送付も含めると計59)に対して送付しました。
三菱商事は、日本国内で2件(福島県の勿来および広野発電所)、ベトナムで2件(ブンアン2石炭火力発電所、ビンタン3石炭火力発電所)の石炭火力発電所の新規建設計画を推進しており(これら4件の総発電容量は4,266メガワット、うち三菱商事の持分総発電容量は1,302メガワット)、日本の商社の中では最も多くの新規の案件を有しています。三菱商事は、機関投資家が投資判断の参照としているドイツの国際環境NGO Urgewaldが公表している世界の石炭関連企業データベース「Global Coal Exit List [1]」に主要な石炭火力発電所事業者として社名が掲載されています。
世界ではパリ協定が本格始動し、温室効果ガス削減に向けた取り組みが進んでいます。石炭関連事業からの投資撤退を進める金融機関・保険会社がますます増加する中、三菱商事が石炭火力発電所の計画を継続推進するのであれば、財務面および企業評価の面でより大きなリスクに直面していくことになります。既に、三菱商事が関与しているベトナムのブンアン2事業では、三菱商事と合弁を組んでいた香港企業CLPホールディングスが2019年12月17日に脱石炭方針を発表し、同事業から撤退しています 。また、融資団に参加していた英スタンダード・チャータード銀行 、シンガポールOCBC 、DBS銀行は相次いで撤退しており、現在(2020年2月時点)融資を検討しているのは日本の公的及び民間銀行だけとなっています。
新規に石炭火力発電所を建設することは、パリ協定のもとで定められた世界全体の気温上昇を2℃よりはるかに下回る水準に抑え、1.5℃に抑える努力を追求するとした気候変動目標に反するものです。三菱商事は2℃シナリオを想定した分析を行っているとしていますが、世界全体の気温上昇を2℃よりはるかに下回る水準に抑えるシナリオには、新たな二酸化炭素排出源となる新規の石炭火力発電所を建設する余地はありません。
2020年1月には、米大手運用会社のブラックロック(BlackRock)が持続可能性を重視した投資方針に基づく運用方針への転換を表明し[2] 、同社の運用資産から石炭関連株を放出すると発表しました。今後はさらに石炭火力発電事業に関与している企業へのダイベストメントが広がるとみられています。日本の商社は石炭火力発電事業への関与を大幅に見直すべきであり、私たちはその後押しとして、三菱商事からのダイベストメント検討を求めています。
脚注
[1] Urgewald: https://coalexit.org/database
[2] BlackRock 金融の根本的な見直し: https://www.blackrock.com/jp/individual/ja/larry-fink-ceo-letter
提出文書
連絡先
国際環境NGO FoE Japan
気候変動・エネルギー担当 深草亜悠美 fukakusa@foejapan.org
気候ネットワーク
理事 平田仁子 khirata@kikonet.org
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
プログラムディレクター 田辺有輝 tanabe@jacses.org
国際環境NGO 350.org Japan
日本支部代表 横山隆美 taka.yokoyama@350.org