2011年6月6日
地球温暖化対策基本法案から中期目標25%削減を落とすな
気候ネットワーク代表 浅岡美恵
民主党政権が、地球温暖化対策として2020年までの中期目標を1990年比で25%削減することをかかげてきたことに対して、私たちはそれを大いに歓迎してきた。東日本大震災による福島第一原発の大事故を受け、菅首相は、原子力発電の拡大を柱とするエネルギー基本計画を白紙撤回した上で、6月1日午前の参議院本会議で、この「25%削減」という政府目標を維持する考えを表明した。そして、実現に向けた方策として「再生可能エネルギーと、省エネを新たなエネルギー政策の柱に加える。温暖化対策でもプラスになる」と強調したこともまた、大震災と福島第一原発事故を教訓として、日本の持続可能な社会へと転換していくことへの政府の決意を示したものと受け止め、歓迎してきた。
しかし、世界環境デーである6月5日、民主党の小沢鋭仁前環境大臣らが「地球温暖化対策基本法案」にかかげた温室効果ガス25%削減目標を削除した修正案をまとめ、自民党に提示していたことが共同通信で報じられ、目を疑った。前環境大臣であり、しかも現在も衆議院環境委員会の委員長が、首相の発言を覆し、地球温暖化対策の重要法案にかかげた目標を捨てる修正を模索し、国内排出量取引制度や地球温暖化対策税などの措置のスケジュールすら具体的な期限がすべて削除されている。これが本当ならば、原子力への依存から脱却し、地球温暖化にも前向きに取り組もうとしている国民の意欲をそぎ、民主党政権に対するわずかな期待すら大きく裏切ることになる。
日本は、これまで原発と石炭火力発電を二本柱に据えてきたエネルギー政策から、再生可能エネルギーと省エネを柱に据えた政策に転換し、その移行期のつなぎとして天然ガスの高効率発電設備を強化し、すべての国民が新しい未来をつくっていく重大な岐路にある。気候ネットワークが既に提言しているように、原子力の危険性と温暖化の被害をともに回避することは可能である。震災からの復興と真に持続可能な社会の構築のために、中期目標と主要3施策をしっかりと掲げた地球温暖化対策基本法案を成立させる政治決断こそが、今求められている。東日本大震災を言い訳に地球温暖化対策を後退させるならば、震災復興の方向性を見失い、世界の潮流からも取り残され、国際社会からの信頼も失うことになりかねない。中期目標25%削減をしっかりと明示した法案が今国会で成立することを、強く望む。