<プレスリリース>
環境アセスメント準備書で環境大臣が「再検討」を要請
~中国電力は三隅の石炭火力発電所計画を中止すべき~
2018年1月12日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵
本日1月12日、中国電力株式会社が島根県浜田市で計画している「三隅発電所2号機建設変更計画環境影響評価準備書」に対する環境大臣意見が公表された。これは中川雅治環境大臣が着任してから石炭火力発電計画に対して出した初めての意見であり、就任直後から明言していたように、前任の山本公一前環境大臣と同様に石炭火力発電に対して否定的な姿勢を打ち出している。今回の意見では、本事業により、追加的な年間CO2排出量が500万トン以上にも及ぶことから、環境保全面からの事業リスクが極めて高いとし、事業者に対しては、「地球温暖化対策が不十分な石炭火力発電は是認できなくなる恐れがある」として、事業実施の「再検討」を求めている。また、2030年のベンチマーク指標との関係について、本事業者が「当該目標達成の蓋然性が低い」ことを強調し、「具体的な道筋が示されないまま容認されるべきものではない」と指摘している。さらに、道筋の明確化のために「政府としても、明確化に向けた検討状況を適切にフォローアップ、評価していく必要がある」として、これまでよりも踏み込んだ表現をしている。
以下に、市民の立場から、本事業の問題を3点挙げる。
第一に、本計画は、1998年から稼働開始した1号機(出力100万kW)に加えて、石炭を燃料とする2号機を出力40万kWから100万kWに増設する計画である。準備書によれば、将来の中国地方の電力需要は低調な伸びであると見込んでおり、過去5カ年の販売電力量を見ても約600億kWh(2011年度)からには560億kWh(2015年度)に減少している。少なくとも同エリアには新規の石炭火力発電所は必要ない。また、既存の発電所の具体的な廃止計画を示しておらず、その点でも新規発電所の計画を進めるべきではない。
第二に、環境大臣意見でも指摘されているとおり、現状の石炭火力発電の発電電力量が2030年のエネルギーミックスで示された見通しよりも上回っている上に、全国で石炭火力発電所の新増設計画が急増していることを背景に、2030年度のCO2削減目標を約6600万トン超過すると試算されている。中国電力の温室効果ガス排出係数は0.691kg-CO2/kWh(2016年度実績/2017年12月22日環境省発表)と非常に高く、事業者目標の0.37kg-CO2/kWhに全く届いていない。この状況でさらに年間500万トン超ものCO2排出増加をもたらす石炭火力発電所を建設すれば、目標達成はさらに遠のく。これらの目標や、また省エネ法に基づくベンチマーク指標(火力発電効率 A 指標 及び B 指標)の達成方法すら示さないままに事業を進めるべきではない。
第三に、2016年、「パリ協定」が発効し、地球平均気温上昇を工業化前から1.5~2度未満に抑えるため、世界の温室効果ガス排出を今世紀後半に実質ゼロにすることになった。日本もパリ協定を締結済みである。脱炭素社会の構築に向けて世界で石炭火力発電を抑制していく潮流がある状況、更にはパリ協定に基づき世界全体でより一層の温室効果ガスの排出削減が求められる状況の下で、大臣意見では、地球温暖化対策が不十分な石炭火力発電は是認できなくなるおそれもあると指摘している。本事業は、2022年からの運転開始予定であり、2050年を超えて大量のCO2排出を固定化させかねない本計画は、パリ協定の要請と整合せず、その社会的説明責任も果たされていない。また、様々な金融機関や機関投資家等が化石燃料事業に対する投融資を引き揚げるダイベストメントの動きが広がっている。石炭火力発電所に対する投資のリスク、経済的リスクを考慮すれば、本事業は中止するしかない。
以上より、中国電力は、環境大臣の意見を真摯に受け止め、事業を再検討し、事業を中止すべきである。また、その他の石炭火力発電所新増設計画を進める事業者も、今回の環境大臣意見を踏まえ計画を見直し、中止することを求める。
以上
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【プレスリリース】環境アセスメント準備書で環境大臣が「再検討」を要請~中国電力は三隅の石炭火力発電所計画を中止すべき~(2018/1/12)
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